重要性の原則を簡単に分かりやすく 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士
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「すべて厳密に処理しなければ…」と思っていませんか?―社会福祉法人会計における“重要性の原則”を解説します
社会福祉法人の会計実務では、「すべての取引を正確に処理しなければならない」と思い込んで、細かな事務作業に追われていませんか?
実は、社会福祉法人会計基準では「重要性の原則」が認められており、重要性が乏しい項目については、簡便な方法での処理が可能です。
重要性の原則とは?
社会福祉法人会計基準(第2条)では、次のように記載されています:
重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができる。
社会福祉法人会計基準より
つまり、「すべてを厳密に処理すること」よりも、計算書類の全体としての信頼性が保たれていれば、細かい項目に関しては実務的な簡便な処理も認められるという考え方です。
どんなケースで適用できるの?
運用上の具体例を紹介します。現場でもよくあるケースばかりです。
(1)消耗品・貯蔵品
コピー用紙や文房具などの少額の消耗品は、買ったときや使ったときに「費用」として処理してOK。棚卸して資産に計上する必要はありません。
(2)少額の前払金・未払金など
毎年出てくる少額の保険料や受取利息、賃貸料などについては、未払・前払の処理を省略して、支出ベースで費用として記帳しても構いません。
(3)引当金の未計上
引当金なども、金額が小さい場合は無理に計上しなくてOK。逆に、計上することで混乱する場合もあります。
(4)償却原価法の省略
満期保有目的の債券で取得価額と債券金額との差額が小さい場合、償却原価法を適用せずに処理できます。
(5)ファイナンス・リース取引
取得価額が少額のリース物件は、通常の賃貸借と同様に費用処理してOK。資産計上・リース負債計上を省略できます。
(6)税効果会計の適用除外
収益事業に係る課税所得がごくわずかである場合、繰延税金資産や負債を計上しなくても差し支えありません。
現場で迷ったら、「目的に立ち返る」
重要性の原則は「ズボラな会計をしていい」という意味ではありません。
本来の目的である財務諸表の適正な表示に影響を与えない範囲で、事務の効率化を図るためのルールです。
まとめ
会計実務は、「厳密さ」と「効率性」のバランスが大切です。
大事なのは、社会福祉法人として本当に注力すべき活動に、会計の力をどう活かすかです。
「これは重要か?」と一度問いかけてみましょう。
参考
1 重要性の原則の適用について(会計基準省令第2条第1項第4号関係)重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。
(1)消耗品、貯蔵品等のうち、重要性が乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。
(2)保険料、賃借料、受取利息配当金、借入金利息、法人税等にかかる前払金、未払金、未収金、前受金等のうち重要性の乏しいもの、または毎会計年度経常的に発生しその発生額が少額なものについては、前払金、未払金、未収金、前受金等を計上しないことができる。
(3)引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。
(4)取得価額と債券金額との差額について重要性が乏しい満期保有目的の債券については、償却原価法を適用しないことができる。
(5)ファイナンス・リース取引について、取得したリース物件の価額に重要性が乏しい場合、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。
(6)法人税法上の収益事業に係る課税所得の額に重要性が乏しい場合、税効果会計を適用しないで、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しないことができる。なお、財産目録の表示に関しても重要性の原則が適用される。
社会福祉法人会計基準の運用上の取り扱い(厚生労働省)
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
