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予備費|社会福祉法人会計における位置づけと補正予算との関係


🎀 はじめに:予備費とは?

社会福祉法人の予算は、年度当初に理事会で承認された資金収支予算に基づいて執行されます。

しかし実務では、

  • 想定していなかった支出が発生した
  • 科目内で吸収できない不足が生じた
  • 軽微ではあるが当初予算にない支出が必要になった

という場面があります。

こうした 「予測しがたい支出の不足」に備えるための枠
予備費(よびひ) です。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


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1.予備費の根拠(モデル経理規程)

モデル経理規程では、次のように定められています。

第19条(予備費の計上)
予測しがたい支出予算の不足を補うため、理事会の承認を得て支出予算に相当額の予備費を計上することができる。

出典:モデル経理規程(経営協)より

ポイントは次のとおりです。

  • 「予測しがたい支出」に対応するため
  • あらかじめ予算に計上する
  • 理事会の承認が必要

つまり、予備費は
👉 後から作るものではなく、当初予算の中で準備しておくもの です。


2.予備費の使用手続き

予備費の使用については、モデル経理規程第20条に規定があります。

第20条(予備費の使用)
予備費を使用する場合は、予算管理責任者は事前に理事長にその理由と金額を記載した文書を提示し、承認を得なければならない。
2 予備費を使用した場合は、理事長はその理由と金額を理事会に報告しなければならない。

出典:モデル経理規程(経営協)より

したがって、

① 事前に理事長承認

② 使用後に理事会へ報告

が必要になります。

予算流用と似ていますが、
👉 理事会報告義務がある点が特徴 です。


3.予備費と補正予算の違い

予備費と補正予算は、役割が異なります。

内容予備費補正予算
目的想定外の小規模な不足対応予算全体の見直し
承認当初に理事会承認変更時に理事会承認
手続き理事長承認+理事会報告理事会議決
性質予算内対応予算変更

✔ 予備費は「予算の範囲内での対応」
✔ 補正予算は「予算そのものの変更」

という違いがあります。

(補正予算については、こちらの記事をご参照ください)
補正予算の手続きについて 補正予算


4.予備費と予算流用との関係

予算流用は、

同一拠点区分内における中区分の勘定科目相互間で行うもの

出典:モデル経理規程(経営協)より

と定められています。

そのため、

  • 科目の大区分が異なるため、流用できない
  • 補正予算にするほどでもない

という場合に、
👉 予備費の活用が検討される という位置づけになります。

(予算流用についてはこちら)
予算流用の手続きについて 予算流用


5.予備費と補正予算との関係(年度末実務のポイント)

実務上、補正予算は
2月~3月開催の理事会で審議されることが多い でしょう。

この理事会で当年度の補正を確定し、
その後は決算準備に入るのが一般的です。

しかし、

  • 理事会終了後
  • 3月末日までの間に
  • 予算に計上していない臨時的支出が必要となった
  • 年度内に再度理事会を開催することが物理的に困難

という場面が生じることがあります。

✔ この場合の実務対応

このようなケースでは、

👉 あらかじめ計上している予備費から支出する

という対応が実務上考えられます。

予備費は、

「予測しがたい支出予算の不足を補うため」に計上するもの

出典:モデル経理規程(経営協)より

であり、年度末の想定外支出に備える制度でもあります。


✔ 注意点

ただし、次の点は慎重に判断する必要があります。

  1. 本当に予測しがたい支出であること
  2. 恒常的な予算不足ではないこと
  3. 法人運営に重大な影響を与える規模ではないこと
  4. 理事長承認および理事会報告を適切に行うこと

予備費は
👉 補正予算を回避するための制度ではありません。

金額が大きい場合や、法人全体の収支見込みに影響を与える場合には、
たとえ年度末であっても補正予算の検討が必要です。


6.実務で大切なポイント

予備費は便利な制度ですが、運用を誤ると統制が弱くなります。

実務では次の点を意識しましょう。

  • 多額に計上しすぎない
  • 使用理由を明確に記録する
  • 理事会報告を確実に行う
  • 恒常的な不足を予備費で処理しない

監査では、

  • 予備費の計上額
  • 使用理由
  • 使用後の処理方法

が必ず確認されます。


7.まとめ

予備費は、

  • 予算流用で対応できない場合
  • 補正予算を編成するほどではない場合
  • 年度末など理事会開催が困難な状況

において、適切に活用できる制度です。

ただし、

✔ 補正予算の代替制度ではない
✔ 統制を緩めるための制度ではない

という理解のもと、
経理規程に沿った運用を行うことが重要です。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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