社会福祉法人会計
社会福祉法人会計を分かりやすく
社会福祉法人会計とは?-はじめての方向け解説-
社会福祉法人は、特別養護老人ホームや保育所、障害者支援施設などを運営する非営利法人です。営利を目的とせず、地域福祉の充実を目指す法人であるため、会計のルールも一般企業とは異なります。ここでは、社会福祉法人会計の基本的な考え方や特徴をやさしく解説します。
■ 一般企業との違い
社会福祉法人は利益を株主に分配することができません。したがって、「利益=儲け」を追求するのではなく、事業を適正に運営し、得られた利益(増減差額)は福祉サービスの充実に再投資していくことが求められます。このため、会計制度も、営利企業とは異なる形になっています。
たとえば、企業では「損益計算書」を用いて収益と費用を確認しますが、社会福祉法人では「事業活動計算書」を使います。これは、法人がどのように収益を得て、どのように費用を計上し、増減差額を計算したかを表し、社会的な使命を果たしたかを明らかにするための報告書です。
■ 会計報告に関する書類の種類
社会福祉法人は以下の計算書類等を作成する義務があります。
- 資金収支計算書:支払資金の流れを明確にするための書類。資金の収入と支出を分類して示します。
- 事業活動計算書:企業でいう損益計算書にあたり、サービス提供による収益と費用を計上します。
- 貸借対照表:資産と負債、純資産の状況を示す書類。
- 注記:法人全体と拠点区分ごとに作成します。
- 財産目録:法人が保有するすべての財産を一覧にしたもの。
- 附属明細書:計算書類を補足するための詳細資料です。
■ 予算と決算
社会福祉法人では、毎年度、予算の作成と執行管理が非常に重要です。これは、公共的な資金(たとえば補助金や介護報酬など)を使うことが多いため、透明性と説明責任が求められるからです。決算では、当初の予算と実際の実績との差異を明らかにし、なぜその差が生じたかを説明する必要があります。
■ 会計監査と情報公開
一定規模以上の社会福祉法人は、公認会計士等による会計監査を受けなければなりません。また、作成した財務諸表はインターネットで公開する義務があり、誰でも確認できるようになっています。これは、社会的信頼を得るための大切な仕組みです。
社会福祉法人会計は、公益性と透明性を重視する独自の制度です。施設職員や関係者だけでなく、地域住民や利用者もこの会計の基本を理解しておくことで、より健全な福祉運営に参加できるようになります。