企業主導型保育事業を実施する法人は、毎年度「消費税仕入控除税額報告」を行う必要があります。
この記事では、公益財団法人児童育成協会の最新資料(令和7年度改訂版)をもとに、報告の目的・時期・手順をやさしく整理しました。
※「ホームページのご利用上の注意」をお読み下さり、ご了承の上、お読みください。また、報告手続きについては、顧問の税理士(または、税理士法人)にご相談の上で、手続きを進めてください。
はじめに:このページの要点(60秒で把握)
- 助成金は不課税取引のため、助成金で賄った経費を控除した場合は「負担していない消費税」を協会へ報告・返還。
- 報告は法人単位で実施。対象決算期は「補助対象期間の末日以前に到来する直前の決算期」。
- フローチャートにより「返還額0円」か「返還あり」かを判定し、積算内訳(PDF)と必要書類をピムスから提出。
1.なぜ「消費税仕入控除税額報告」が必要なのか
企業主導型保育事業の助成金は、消費税法上「不課税取引」に該当します。
したがって、助成金で購入した物品やサービスに含まれる消費税を、確定申告時に仕入税額控除してしまうと、
本来負担していない消費税分を「控除」していることになります。
このため、助成金を受けた法人は、確定申告後に「控除した分(=負担していない分)」を協会へ報告し返還しなければなりません。
協会はその返還額を国庫に納めます。
📘 ポイント
この報告は、助成金の交付要領に定められた「交付条件」です。
未報告や誤った報告は、助成決定取消しの対象となることがあります。
2.報告のタイミング
法人の消費税確定申告が終わり、仕入控除税額が確定した時点で速やかに報告します。
協会から個別に連絡があるわけではなく、各法人が自主的に提出する必要があります。
報告の有無は指導監査の際に確認されます。
3.報告は「法人単位」で行う
運営委託事業者や保育施設単体ではなく、助成決定事業者(=法人全体)として報告を行います。
また、報告対象となる「決算期」は、助成金が入金された期ではなく、
補助対象期間の末日以前に到来する直前の決算期です。
(例:令和6年度分なら、令和7年3月期決算が対象)
4.報告の種類と区分(フローチャート)
報告内容は、法人の課税区分や申告方法により異なります。
協会のフローチャートに基づくと、次の2つに大別されます。
| 区分 | 内容 | 必要書類の例 |
|---|---|---|
| 返還額0円の報告(ア〜オ) | 助成金の対象経費に係る消費税仕入控除がない場合 | 積算内訳(0円報告)+証明書類 |
| 返還あり報告(カ) | 課税事業者で控除を行っている場合 | 積算内訳(返還あり報告)+確定申告書・決算書など |
5.「返還額0円の報告」に該当するケース
次のいずれかに該当する場合は、「返還額0円の報告」となります。
| 区分 | 内容 | 主な報告方法と手続きの流れ |
|---|---|---|
| ア:免税事業者 | 報告対象となる決算期において、消費税の納税義務がない場合(免税事業者)の報告です。 | 【報告方法】 1. 「積算内訳 返還額0円報告」を作成し、概要理由で「ア」を選択する 。 2. ピムスにて、返還相当額に「0」を入力する 。 【必要書類】 1. 積算内訳 0円報告 2. 法人の決算書類(法人単位):貸借対照表、損益計算書など 3. 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書(※前期が課税事業者の場合のみ) |
| イ:初年度 | 報告対象となる決算期より後に保育施設が開園している場合(初年度のみ)の報告です。 | 【報告方法】 1. 「積算内訳 返還額0円報告」を作成し、概要理由で「イ」を選択する 。 2. ピムスにて、返還相当額に「0」を入力する 。 【必要書類】 1. 積算内訳 0円報告 2. 消費税確定申告書(第3-(1)号様式)の写し 3. 受信通知(電子申請の場合)など |
| ウ:簡易課税または2割特例 | 報告対象となる決算期において、消費税を簡易課税方式または2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)により申告している場合の報告です。 | 【報告方法】 1. 「積算内訳 返還額0円報告」を作成し、概要理由で「ウ」を選択する 。 2. ピムスにて、返還相当額に「0」を入力する 。 【必要書類】 1. 積算内訳 0円報告 2. 消費税確定申告書(第3-(1)号様式)の写し(簡易課税方式) 3. 消費税確定申告書(第3-(3)号様式)の写し(2割特例) 4. 受信通知(電子申請の場合)など |
| エ:特定収入割合が5%超 | 公益法人等(社会福祉法人など)であり、報告対象となる決算期において特定収入割合が5%を超えている場合の報告です。 | 【報告方法】 1. 「積算内訳 返還額0円報告」を作成し、概要理由で「エ」を選択する 。 2. ピムスにて、返還相当額に「0」を入力する 。 【必要書類】 1. 積算内訳 0円報告 2. 消費税確定申告書(第3-(1)号様式)の写し 3. 付表2の写し(消費税確定申告書) 4. 特定収入割合の計算過程が分かる書類(任意様式) 5. 受信通知(電子申請の場合)など |
| オ:非課税・不課税対応 | 報告対象となる決算期において、助成金の対象経費(完了報告に計上された経費)を、**非課税仕入、不課税仕入、または個別対応方式の「非課税売上のみに要するもの」として申告している場合の報告です。 | 【報告方法】 1. 「積算内訳 返還額0円報告」を作成し、概要理由で「オ」を選択する 。 2. ピムスにて、返還相当額に「0」を入力する 。 【必要書類】 1. 積算内訳 0円報告 2. 消費税確定申告書(第3-(1)号様式)の写し 3. 付表2の写し(消費税確定申告書) 4. 助成金の対象経費の消費税税区分がわかる資料(任意様式) 5. 受信通知(電子申請の場合)など |
6.「返還あり報告」の場合
上記ア〜オのいずれにも該当しない課税事業者(本則(原則)課税)は、助成金で賄った経費の消費税額のうち、
控除した金額を計算して協会に返還します。
- 法人の決算期(3月決算/それ以外)に応じた「積算内訳(返還あり報告)」を作成
- ピムスで「要返還額」を入力
- 必要書類(積算内訳・確定申告書・付表・決算書など)を添付
- 協会の承認後、「返還額決定通知書」に基づき納付
| 区分 | 内容 | 主な報告方法と手続きの流れ |
|---|---|---|
| カ:返還あり報告 | 助成金の対象経費に係る仕入控除税額を算定し、協会に返還する場合の報告です。 | 【報告方法】 1. 法人の決算期(3月決算法人/それ以外)に応じた「積算内訳 返還あり報告」を作成し、助成金に係る返還相当額を計算する. (※3月決算法人はP28以降、それ以外はP41以降を参照) 2. ピムスにて、算定した「要返還額」を申請画面に入力する 。 【必要書類】 積算内訳、消費税確定申告書、付表、法人決算書など、返還相当額の根拠となる全ての書類をピムスに添付する 。 【返還手続】 報告が承認され、協会から「返還額決定通知書」を受領後、指定された期日までに返還金を協会に納付する 。 |
7.提出方法と操作の注意点
報告は、公金管理システム(ピムス)から行います。
操作マニュアルは、児童育成協会サイト内のピムスマニュアルをご確認ください。
- 積算内訳(PDF)を作成(0円/返還あり いずれかの様式に沿って)
- ピムス「申請情報」から要返還額など必要項目を入力
- 「添付書類」タブに積算内訳と必要書類一式をPDFで添付
- 添付書類は報告区分により異なる
- 審査で差戻しがあれば修正・再申請(ファイル差替え可)
- 承認後、通知に基づいて返還金を期日内納付
8.よくあるハマりどころ(実務メモ)
- 対象決算期の取り違え:「入金期」ではなく「補助対象期間末日以前に到来する直前の決算期」。
- 施設単体で判断:NG。必ず法人単位で課税/免税や申告方法を判定。
- 税区分資料の不足:0円報告(オ)の場合、対象経費の税区分(非課税/不課税 等)が分かる任意資料を忘れずに。
- 付表漏れ:特定収入割合5%超の判定では付表2や計算書の添付が必要。
まとめ:正しい報告が信頼につながる
「消費税仕入控除税額報告」は、単なる会計処理ではなく、
公的助成金を適正に扱うための信頼の証です。
報告を怠ると、助成金交付の取消や指導対象となる場合もあります。
確定申告後は速やかにピムスで報告し、適正な処理を心がけましょう。
参考資料
- 公益財団法人児童育成協会「企業主導型保育事業(運営費等)に係る消費税及び地方消費税仕入控除税額報告(令和7年度版)」
- 公金管理システム(ピムス)利用マニュアル
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※本ページは公益財団法人児童育成協会の公開資料(令和7年度版)等をもとに作成しています。
実務適用は各法人・事業者の申告内容・決算期・助成金の状況により異なります。詳しくはご相談ください。
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和5年度
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