はじめに
徴収不能引当金は、
社会福祉法人が保有する 未収金や受取手形などの金銭債権 について、
将来、回収できないと見込まれる金額を見積もって控除するための引当金 です。
社会福祉法人の収入は、
国保連や自治体からの給付費など、
比較的回収可能性の高い債権が多い一方で、
すべての債権が常に全額回収できるとは限りません。
そのため、
会計上は 回収不能の可能性を見積もり、資産を評価する仕組み
として、徴収不能引当金が設けられています。
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厚生労働省の勘定科目の説明
徴収不能引当金
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
未収金や受取手形について回収不能額を見積もったときの引当金をいう。
この定義から分かるとおり、
徴収不能引当金は 回収不能が確定した金額 ではなく、
回収不能となるおそれがある金額を見積もって計上するもの です。
社会福祉法人会計における引当金の位置づけ
社会福祉法人会計では、
引当金はその性質に応じて、
次のように整理されています。
- 将来の費用に備える引当金
→ 賞与引当金、退職給付引当金など(負債の部) - 資産の回収可能性を調整する引当金
→ 徴収不能引当金(資産の部の控除項目)
徴収不能引当金は、
資産の評価を調整するための引当金 であり、
負債として計上される他の引当金とは性質が異なります。
資産評価としての考え方
社会福祉法人会計基準では、
受取手形、未収金、貸付金などの債権について、
徴収不能のおそれがある場合には、回収できないと見込まれる額を控除する
ことが定められています。
これは、
帳簿上の債権額をそのまま表示するのではなく、
実際に回収できると見込まれる金額で資産を評価する
という考え方に基づくものです。
徴収不能引当金の計上方法
徴収不能引当金の計上は、
原則として 毎会計年度末 に行います。
計上にあたっては、
債権を次の2つに区分して考えます。
個別債権
個別債権とは、
特定の債権について、
- 法的整理が行われている
- 支払能力に重大な問題が生じている
- 回収不能となる事情が個別に把握できる
といった状況があるものを指します。
これらについては、
債権ごとに事情を判断し、
回収不能と見込まれる金額を個別に見積もって計上します。
一般債権
個別債権以外の債権は、
一般債権として整理されます。
一般債権については、
- 過去の徴収不能実績
- 債権残高に対する回収不能割合
などを用いて、
合理的な方法により回収不能見積額を算定します。
貸借対照表での表示
徴収不能引当金は、
貸借対照表において
対象となる債権から控除する形 で表示されます。
つまり、
- 事業未収金
- 未収金
- 受取手形
などの資産額を、
徴収不能引当金分だけ差し引いた金額が、
実際の資産として表示されます。
この点が、
負債の部に計上される賞与引当金などとの
大きな違いです。
重要性の原則との関係
社会福祉法人会計には、
重要性の原則 が定められています。
徴収不能引当金についても、
- 回収不能の可能性が極めて低い
- 金額が僅少である
といった場合には、
計上を省略することが認められています。
ただし、
省略できるかどうかは、
法人の規模や債権の性質を踏まえて判断する必要があります。
管理上の留意点
徴収不能引当金は、
単に会計処理の問題ではなく、
債権管理の状況を反映する科目 でもあります。
そのため、
- 未収金の発生状況
- 回収状況の把握
- 長期滞留債権の有無
などを、
定期的に確認しておくことが重要です。
まとめ
徴収不能引当金は、
- 事業未収金や未収金、受取手形などの回収不能見積額を調整する科目であること
- 資産の部で控除項目として表示されること
- 個別債権と一般債権に分けて見積もること
- 毎期、合理的な判断に基づいて計上すること
これらを整理して理解しておくことで、
決算や監査においても、
債権評価を落ち着いて説明しやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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