マツオカ会計事務所

勘定科目の解説「徴収不能引当金」社会福祉法人会計

徴収不能

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厚生労働省の勘定科目の説明  徴収不能引当金

徴収不能引当金
未収金や受取手形について回収不能額を見積もったときの引当金をいう。

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

勘定科目説明の解説

社会福祉法人会計の引当金

社会福祉法人会計基準

社会福祉法人会計基準では、引当金の計上について、下のように示されています。

資産の部・引当金負債の部・引当金
徴収不能引当金(流動資産)賞与引当金(流動負債)
徴収不能引当金(固定資産)退職給付引当金(固定負債)
役員退職慰労引当金(固定負債)
資産の部・引当金は、資産科目の控除項目(マイナス)になります。

徴収不能引当金について

(資産の評価)
第四条 資産については、次項から第六項までの場合を除き、会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。ただし、受贈又は交換によって取得した資産については、その取得時における公正な評価額を付すものとする。
 省略
 省略
 受取手形、未収金、貸付金等の債権については、徴収不能のおそれがあるときは、会計年度の末日においてその時に徴収することができないと見込まれる額を控除しなければならない
 省略
 省略

社会福祉法人会計基準

賞与引当金・退職給与引当金・役員退職慰労引当金

(負債の評価)
第五条 負債については、次項の場合を除き、会計帳簿に債務額を付さなければならない。
 次に掲げるもののほか、引当金については、会計年度の末日において、将来の費用の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該会計年度の負担に属する金額を費用として繰り入れることにより計上した額を付さなければならない。
 賞与引当金
 退職給付引当金
 役員退職慰労引当金

社会福祉法人会計基準

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて

「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて」では、徴収不能引当金が明記されていますね。

18 引当金について(会計基準省令第5条第2項関係)
(1)将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当該会計年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合には、当該会計年度の負担に属する金額を当該会計年度の費用として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部に計上又は資産の部に控除項目として記載する。
(2)原則として、引当金のうち賞与引当金のように通常1年以内に使用される見込みのものは流動負債に計上し、退職給付引当金のように通常1年を超えて使用される見込みのものは固定負債に計上するものとする。
また、徴収不能引当金は、当該金銭債権から控除するものとする。

社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」では、具体的な会計処理の方法が書かれています。

18 引当金について
(1)徴収不能引当金について
ア  徴収不能引当金の計上は、原則として、毎会計年度末において徴収することが不可能な債権を個別に判断し、当該債権を徴収不能引当金に計上する。
イ  ア以外の債権(以下「一般債権」という。)については、過去の徴収不能額の発生割合に応じた金額を徴収不能引当金として計上する。

勘定科目説明のポイント

説明からのポイントは2つです。

NO.内   容
未収金や受取手形などの短期の債権について、回収不能額を
見積もる

①未収金や受取手形の回収(徴収)不能額について

徴収不能引当金は、回収ができない債権について、引当という処理を行います。

私たちの日常生活では、
・サービスを提供する(またはモノを売る)という取引と、
・代金を受け取るという取引は、

一つの取引という感覚になることが多いです。

買い物を例に取ってみましょう。

モノを買うという行為と、代金を支払うという行為を一体として捉えて、買い物に行くという感覚になります。

一方、会計的には

サービスを提供する(または、モノを売る)という取引と、代金を回収するという取引を分けて考えていきます。

全てが現金での取引であれば、サービスの提供が完了した時に代金を受け取りますので、サービスの提供と代金の提供を一体として考えることができますが、

多くの取引では、現金でのやり取りをせずに、請求払いなど支払代金を後日に受け取る取引がとても多いです。

私たちの日常でも、現金からキャッシュレスという流れで、モノを買うタイミングと、お金が動くタイミングが同時ではないことが多くなってきています。

社会福祉法人の場合、収入(入金)の多くは、国保連であったり、市町村であったりと、確実に入金される性質の債権になります。

そのため、回収不能に対する感覚というものは、あまり多くないかもしれません。

一般的には、サービスを行ってもその代金がきちんと入金されないと大変なことになります。

現金での取引だけですと、代金を受け取ることができないという可能性は低くなりますが、後日の振込みや、口座振替(口座引落し)を使う場合には、入金が滞ることがあります。

入金が滞る、回収不能が生じることが継続的に起きている場合に、徴収不能引当金を計上していくことになります。

②徴収不能が見込まれる金額を見積もる

徴収不能引当金は、回収不能になったことが確定した場合に計上するのではなく、回収不能の発生に備えて計上していくものです。

そのため、確定した金額で計上するのではなく、見積もり計算を行います。
回収不能の可能性のある金額を概算額で計上しておくイメージです。合理的に計算を行うといいます。

具体的な会計処理のポイント

会計基準と関係通知には、具体的な会計処理の方法が明記されています。こちらもポイントは2つです。
①債権の金額から控除する
②債権を2種類に分けて会計処理を行う

①債権の金額から控除する

徴収不能引当金は、貸借対照表には債権の金額から控除する形で表示されます。つまり資産の部にマイナスで計上されることになります。他の引当金が、負債の部に計上されることと異なります。

例えば、こんな感じです。

貸借対照表

令和〇年3月31日現在

資産の部金 額 負債の部金 額 
未収金100万円賞与引当金24万円
徴収不能引当金△5万円退職給付引当金32万円
役員退職慰労引当金15万円
徴収不能引当金以外の引当金について、参考に記載しています。

②債権を2種類に分けて会計処理を行う

徴収不能引当金は、債権を「個別債権」と「一般債権」に分けて会計処理を行います。

「個別債権」

個別債権は、個別評価金銭債権と呼ばれています。
債権ごとに、個別の事情から判断して、回収(入金)の可能額を算定し、回収できないであろう金額を引当金として計上していきます。

個別の事情とは、法律上の事情(更生経過の認可など)、実質的な事情(債務超過など)、形式的な事情(会社更生の申立て)などに応じて、判断して見積もっていきます。

一般債権

一般債権は、一括評価金銭債権とも呼ばれます。

一般債権の方は、債権を個々に判断するのではなく、過去(3年間程度)の回収不能実績額と、一般債権金額の合計額との割合(回収不能比率)などを用いて、年度末の一般債権に係る回収不能見積もり額を計算していきます。

重要性の原則

重要性の原則
会計基準には、「重要性の原則」というものがあります。

重要性の原則とは、
重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができること(社会福祉法人会計基準第2条第4項)」を言います。

徴収不能引当金についても、重要性が乏しい場合には、その計上を省略することができます。

簡単な説明です

マツオカ

徴収不能引当金
運営の中で、料金などの支払代金の回収が確実にできないケースが日常的に生じることがあります。このような場合に備えて、回収できない金額を見積もっておく必要があります。
日々の支払代金の管理と回収事務の大切さを感じます。


科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

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マツオカ会計事務所のストーリー

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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