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厚生労働省の勘定科目の説明 消耗器具備品費
消耗器具備品費
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
利用者の処遇に直接使用する介護用品以外の消耗品、器具備品で、固定資産の購入に該当しない費用をいう。
勘定科目説明の解説
費用科目の解説について
事業活動計算書の費用科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。
消耗器具備品費
今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。
大区分 | 中区分 | 小区分 |
事業費 | 消耗器具備品費 | - |
大区分は、「事業費」です。
ご利用者の処遇に直接要する費用になります。
平成12年度に制定された(旧)社会福祉法人会計基準の科目説明には
大区分についても説明がありました。
事業費支出
平成12年 社会福祉法人会計基準 事業活動収支計算書勘定科目の説明より
利用者の処遇に直接要する費用をいう。
中区分は「消耗器具備品費」です。
ご利用者のために直接用いるもので、介護用品以外の消耗品や器具備品になります。
器具備品は、固定資産に計上するものを除きます。
「消耗品」や「器具備品」の意味を確認してみましょう。
消耗品とは、「使うにつれて減ったりなくなったりする品物。紙・石油など。」
出典:デジタル大辞泉 小学館より
器具とは、「簡単な器機や道具類」
出典:デジタル大辞泉 小学館より
備品とは、「官庁・会社・学校などで、業務に必要なものとして備えつけてある物品。」
出典:デジタル大辞泉 小学館より
固定資産の購入に該当しない費について
厚生労働省の勘定科目説明から、消耗器具備品費に計上するものは、
(利用者さんのために直接用いるもので)固定資産の購入に該当しない費用(消耗品費、器具備品費)になります。
器具備品の購入費用について、固定資産に該当するか、該当しないかを判断(確認)しておく必要があります。
固定資産の購入に該当しない費用の範囲
固定資産の購入に該当する範囲、該当しない範囲について、法人の経理規程に定めがあります。
一般的な経理規程から、固定資産の購入に該当しないものは、下の①、②のどちらかの要件を満たすものと考えることができます。
① | 取得後(購入後)の使用期間が1年以下のもの |
② | 1個または1組の購入金額が、10万円未満のもの |
社会福祉法人さんで、一般的に、経理規程では以下のように定められているでしょう。確認をしてみてください。
(固定資産の範囲)
第47条 この規程において、固定資産とは取得日後1年を超えて使用又は保有する有形固定資産及び無形固定資産(土地、建設仮勘定及び権利を含む。)並びに経常的な取引以外の取引によって発生した貸付金等の債権のうち回収期間が1年を超える債権、特定の目的のために積み立てた積立資産、長期保有を目的とする預貯金及び投資有価証券をいう。
2 前項の固定資産は、基本財産とその他の固定資産に分類するものとする。
(省略)経営協 モデル経理規程より引用
3 1年を超えて使用する有形固定資産又は無形固定資産であっても、1個もしくは1組の金額が10万円未満の資産は、第1項の規定にかかわらず、これを固定資産に含めないものとする。
消耗器具備品費と混同しやすい科目の分類
事業費の科目の中には、消耗器具備品費と混同しやすい科目があります。
科目ごとの内容を確認してみましょう。
科目名 | 勘定科目の説明 |
介護用品費 | 利用者の処遇に直接使用するおむつ、タオル等の介護用品の費用をいう。 |
被服費 | 利用者の衣類、寝具等(介護用品及び日用品を除く)の購入のための費用をいう。 |
日用品費 | 利用者に現物で給付する身のまわり品、化粧品などの日用品(介護用品を除く)の費用をいう 。 |
消耗器具備品費 | 利用者の処遇に直接使用する介護用品以外の消耗品、器具備品で、固定資産の購入に該当しない費用をいう。 |
科目の分類を整理していく順番
取引の内容ごとに、科目を決めていく場合に、下のような順番も考えられます。
- 「介護用品費」の内容を決める おむつ、タオルなどの介護用品
↓ - 「日用品費」の内容を決める 利用者の身のまわり品、化粧品などの日用品(介護用品費以外)
↓ - 「被服費」の内容を決める 利用者の衣類、寝具等(介護用品費・日用品費以外)
↓
- 「消耗器具備品費」の内容を決める 利用者の処遇に直接使用する消耗品、器具備品
(介護用品費、日用品費、被服費以外)
継続性の原則
各科目「介護用品費」、「日用品費」、「被服費」及び「消耗器具備品費」等に含めていく取引の内容を整理した後は、正当な理由がない限りみだりに変更せずに、同一の会計処理、手続きを継続して行うことは、会計報告や予算管理、期間比較のためにも大切になってきます。
社会福祉法人会計基準
社会福祉法人会計基準
(会計原則)
第二条
三 採用する会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法については、毎会計年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。
注意点 貯蔵品(貸借対照表・流動資産)の計上
消耗器具備品費の注意点としては、決算において、貸借対照表の科目「貯蔵品」の計上を検討する必要があることです。
消耗品・器具備品(固定資産以外)として購入したもののうち、決算日現在、未使用のものがあれば、棚卸しを行い、数量、金額を把握して、貸借対照表の科目「貯蔵品」に計上していきます。
決算日現在、されずに保管されている消耗品・器具備品は、棚卸資産として貸借対照表に計上しておき、使用した時点で、費用(消耗器具備品費)として計上するという考え方になります。
区 分 | 当年度内に費消分 (使用済み分) | 決算日現在、未使用分 |
ご利用者のために直接用いる消耗品・器具備品 | 消耗器具備品費 (事業活動計算書・事業費) | 貯蔵品 (貸借対照表・流動資産) |
貯蔵品の計上と重要性の原則
社会福祉法人会計基準には、「重要性の原則」という考え方があります。
重要性の原則では、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理を行わずに、簡便な方法を採用することができます。
消耗品・器具備品の金額や内容に、重要性が乏しい場合には、決算日現在の消耗品・器具備品の未使用分についても、貯蔵品(流動資産)として計上せずに、消耗器具備品費(費用)に計上する方法を採用することができると考えられます。
「消耗品・器具備品」の重要性の原則の適用について 厚生労働省の見解
消耗品・器具備品(固定資産以外)にも「重要性の原則」が適用されるどうかについて、厚生労働省の見解が平成23年のパブリックコメントの結果に記載されています。
(給食用材料についての回答になります)
ご意見 | 回答(考え方) |
給食用材料の計上について、現実的に給食用材料の棚卸は大変な手間を伴い困難ではないかと思う。また実際に多くはすぐに消費するものではないか。資産としての価値も低い。重要性に乏しく、計上しない選択もできるようにして欲しい。 | 重要性の原則は全ての取り引きに適用されますので、実態に即してご判断いただいて結構です。 |
社会福祉法人会計基準の重要性の原則の規定
社会福祉法人会計基準
(会計原則)
第二条
一~三 略四 重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができること。
社会福祉法人会計基準
簡単な説明です
消耗器具備品費
ご利用者さんのために用いる消耗品や器具備品(固定資産以外)の購入費用です。
固定資産に計上するものは、一般的には、使用期間が1年を超えて、購入金額が10万円以上のものになります。
科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。
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勘定科目の解説の一覧
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マツオカ会計事務所のストーリー
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。