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質問の内容
社会福祉法人の予算流用の手続きについて教えてください。 |
経理規程の規定
社会福祉法人の経理規程の中には、予算流用についての条文があります。確認してみましょう。
モデル経理規程
モデル経理規程第18条に予算流用についての条文があります。
(勘定科目間の流用)
第18条 予算管理責任者は、予算の執行上必要があると認めた場合には、理事長の承認を得て、拠点区分内における中区分の勘定科目相互間において予算を流用することができる。(注16)(注16)
平成29年版 社会福祉法人モデル経理規程 全国社会福祉法人経営者協議会
勘定科目間の流用とは、ある勘定科目について当初与えられた予算枠を超えて事業を執行するときに、他の勘定科目から予算枠を充当することをいう。
勘定科目間流用を無制限に認めると、予算統制の意義が損なわれることになるため、本経理規程においては、同一拠点区分内における中区分の勘定科目相互間における流用を原則として定めている。
社会福祉法人の経理規程でも、モデル経理規程に準じて規定されていることが多いでしょう。
予算流用について
予算流用について、モデル経理規程の条文から検討していきます。
予算流用を行うとき
予算流用を行うのは、「予算管理者が、予算の執行上必要があると認めた場合」に行うことになります。
予算管理者とは
予算管理者については、法人の経理規程の予算流用の条文の前後に、規定していることが多いと思います。
また、会計責任者が、予算管理者を兼ねていることも多いでしょう。
(予算管理責任者)
第17条 予算の編成並びに予算の執行及び管理について理事長を補佐するため、理事長は、予算管理の単位ごとに予算管理責任者を任命する。(2は、会計責任者が予算管理者を兼ねている場合の例)
平成29年版 社会福祉法人モデル経理規程 全国社会福祉法人経営者協議会
2 当法人の予算管理責任者は会計責任者とする。
予算の執行上必要がある場合とは
予算の執行上必要がある場合とは、事業運営上、当初予算(及び補正予算)の金額を超過して、当該科目の執行をする必要がある場合です。
例えば、支出科目で、予算金額を超過して、なお、支出を行う必要がある場合が考えられます。
科目間の予算流用
同一拠点内
予算流用は、原則として、同一拠点内の予算について流用を行います。
社会福祉法人では、原則として、予算管理を拠点単位で行うため、同一拠点内において予算流用を行います。
なお、
法人の経理規程において、予算の管理単位をサービス区分と規定している場合には、同一サービス区分内において予算流用を行います。
NO. | 区分 | 予算流用を行う単位 |
---|---|---|
① | 原則 | 同一拠点区分 |
② | 例外 | 同一サービス区分 ※経理規程で、予算管理の単位をサービス区分と規定している場合 |
2 予算と経理
出典:厚生労働省通知「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」より
(1)法人は、事業計画をもとに資金収支予算書を作成するものとし、資金収支予算書は拠点区分ごとに収入支出予算を編成することとする。
また、資金収支予算書の勘定科目は、資金収支計算書の勘定科目に準拠することとする。
中区分の勘定科目相互間
予算流用は、資金収支計算書の勘定科目の中区分の科目間で行います。
上記のモデル経理規程の注書きにあるように、
「勘定科目間流用を無制限に認めると、予算統制の意義が損なわれることになるため」
中区分の勘定科目間での予算流用を行います。大区分をまたぐ予算流用を行うことはできないことになります。
(大区分の予算の金額を変更する場合には、補正予算を編成して理事会の承認が必要になります)
(予算流用の例)
NO. | 流用元の科目 | 流用先の科目 | 流用の可否 |
---|---|---|---|
① | 職員給料支出 | 給食費支出 | × |
② | 教養娯楽費支出 | 給食費支出 | ○ |
予算流用の承認手続き
理事長の承認
経理規程に基づき、理事長の承認を受けることになります。
稟議書等を用いて、理事長の決裁をもらう形ですね。
予算流用の承認を受ける場合の様式
予算流用の書類の様式は、法人の任意になります。
社会福祉法人では、予算書の様式は、法人の任意と示されています。
例えば、補正予算の様式に準じた様式で作成することも考えられます。
(問)予算書の様式を規定すべきではないか。
(回答)資金収支予算書は勘定科目が資金収支計算書の勘定科目に準拠していれば、様式は法人の任意といたします。
出典:「平成23年7月27日付 厚生労働省 社会福祉法人会計基準(案)に関する意見募集手続き(パブリックコメント)の結果について」より
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。