マツオカ会計事務所

理事会の議事録(記録)の確認 指導監査の準備 社会福祉法人会計・法人運営

理事会議事録

社会福祉法人の理事会の決議

社会福祉法人の運営上の意思決定として、理事会を開催する機会が多くなります。
今回は、理事会の議事録が適正に記録・保存されているかを確認してみましょう。

社会福祉法人の理事会の議事録

社会福祉法の規定

社会福祉法では、理事会の議事録について、下のように定めています。

社会福祉法の要点

No.要  点
(1)議事録を作成する
(2)主たる事務所(法人本部)に10年間、備え置く(原本)
(3)評議員は、業務時間内にいつでも理事会議事録の閲覧・謄写の請求ができる
(4)債権者は、裁判所の許可を得て、理事会議事録の閲覧・謄写の請求ができる
(5)(4)について、裁判所は、法人に著しい損害を及ぼす恐れのある時には、許可することができない。
ページの下部に条文を掲載しています。

以下、項目ごとに確認していきましょう。

議事録の記載事項 (1)

①社会福祉法施行規則が定める記載事項

社会福祉法施行規則には、理事会の議事録の具体的な記載事項が示されています。

社会福祉法施行規則の要点

No.要  点
書面または電磁的記録にて作成する
議事録の記載事項(理事会を開催した場合)
理事会の決議を省略した場合(理事会の決議があったとみなす場合)の記載事項
理事会の決議を省略した場合(理事会の報告があったとみなす場合)の記載事項
ページの下部に条文を掲載しています。

② 議事録の記載事項(理事会を開催した場合) ※重要

No.項   目要 点
日時と場所開催場所ではなく、オンライン等による出席者がある場合には、氏名と出席の方法を記載する
理事会の開催事由(該当する場合)定款で定める招集権者以外の理事・監事の請求によって理事会が開催される場合には、その旨を記載する
議事の経過の要領と結果決議の結果と、議案の内容の説明要旨、各理事・監事による意見・質疑応答等の審議の内容を記載する
特別利害関係者の氏名特別の利害関係を有する理事の有無の確認を行ったことも記録しておく
法の規定に基づき理事会において述べられた意見又は発言があるときは,その意見又は発言の内容の概要理事・監事その他に意見陳述権が認められる議案(理事の競業取引・理事の不正行為の報告)がある場合に注意する
理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称会計監査人設置会社法人の場合
議長の氏名理事会において、議長を選出した場合に、議長の氏名を記録する。

議事録の署名人

理事会の議事録の署名人については、定款で定められています。定款にしたがって署名を行います。

※議事録署名人を「出席した理事長及び監事」と定款に定めている法人において、
理事長が理事会を欠席した場合には、出席した理事及び監事の全員の署名が必要になるとされています。

議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

社会福祉法施行規則では、評議員会議事録に求められている「議事録作成者(作成責任者)」の氏名の記載は、理事会においては、必ずしも求められていません。

ただし、理事会の決議を省略した場合、理事会の報告を省略した場合の議事録には「議事録作成者(作成責任者)」の記載が必要になりますので注意しましょう。

③ 理事会の決議を省略した場合の議事録の記載事項

No.要  点
理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
①の事項の提案をした者の氏名
理事会の決議があったものとみなされた日
議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名

理事の同意を得たことの記録

理事会の決議を省略した場合には、全理事・全監事の同意書の入手や記録に注意しましょう

  • 全理事の同意書・全監事から確認書の入手(書面・または電磁的記録)
  • 全理事の同意書・全監事の確認書の備置き
  • 議事録に全理事からの同意・全監事から意義のないことの確認を得たことを記録する

※監事の確認書は「理事会決議の省略について意義のないことを確認する書類」になります。

④ 理事会の報告を省略した場合の議事録の記載事項

No.要  点
理事会への報告があったものとみなされた事項の内容
理事会への報告があったものとみなされた日
議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名

議事録の備置き (2)、(3)

議事録を、法人の事務所に法定の期間、備え置いているか

社会福祉法の規定により、社会福祉法人は理事会の議事録は法人の事務所に備え置く必要があります。

NO.場所備置きの期間
主たる事務所(法人本部のある施設、事業所)10年間

備え置くとは、
閲覧の求めがあった時に、速やかに見せることができる状態にしておくことです。
施設の見えるところに置いておく必要は、必ずしもありません。
保管場所を把握し、請求があれば、いつでも、すぐに出せる状態にしておくことが大切になります。

議事録の閲覧・謄写の請求 (4)

評議員は、社会福祉法人の業務時間内は、いつでも、議事録の閲覧や謄写を請求をすることができます。

債権者は、裁判所の許可を得て、議事録の閲覧や謄写を請求をすることができます。
(ただし、裁判所は、法人に著しい損害を及ぼす恐れのある時には、許可することができないとされています。)

ポイント

議事録については,記載された全ての事項について,評議員や債権者等が,その関係書類と併せて内容の確認ができるよう明確に記載しておく必要があります。

参考条文

社会福祉法

社会福祉法

(議事録等)
第四十五条の十五 社会福祉法人は、理事会の日(前条第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十六条の規定により理事会の決議があつたものとみなされた日を含む。)から十年間、前条第六項の議事録又は同条第九項において準用する同法第九十六条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその主たる事務所に備え置かなければならない。

2 評議員は、社会福祉法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
 一 議事録等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
 二 議事録等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

3 債権者は、理事又は監事の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、議事録等について前項各号に掲げる請求をすることができる。

4 裁判所は、前項の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該社会福祉法人に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、同項の許可をすることができない。

5 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第二百八十七条第一項、第二百八十八条、第二百八十九条(第一号に係る部分に限る。)、第二百九十条本文、第二百九十一条(第二号に係る部分に限る。)、第二百九十二条本文、第二百九十四条及び第二百九十五条の規定は、第三項の許可について準用する。

出典 社会福祉法より

社会福祉法施行規則

社会福祉法施行規則

(理事会の議事録)
第二条の十七 法第四十五条の十四第六項の規定による理事会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。


2 理事会の議事録は、書面又は電磁的記録をもつて作成しなければならない。


3 理事会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
 一 理事会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席した場合における当該出席の方法を含む。)
 二 理事会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
  イ 法第四十五条の十四第二項の規定による理事の請求を受けて招集されたもの
  ロ 法第四十五条の十四第三項の規定により理事が招集したもの
  ハ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第二項の規定による監事の請求を受けて招集されたもの
  ニ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第三項の規定により監事が招集したもの
 三 理事会の議事の経過の要領及びその結果
 四 決議を要する事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、当該理事の氏名
 五 次に掲げる規定により理事会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
  イ 法第四十五条の十六第四項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十二条第二項
  ロ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百条
  ハ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第一項
  ニ 法第四十五条の二十二の二において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十八条の二第四項
 六 法第四十五条の十四第六項の定款の定めがあるときは、理事長以外の理事であつて、理事会に出席したものの氏名
 七 理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称
 八 理事会の議長が存するときは、議長の氏名


4 次の各号に掲げる場合には、理事会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
 一 法第四十五条の十四第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十六条の規定により理事会の決議があつたものとみなされた場合次に掲げる事項
  イ 理事会の決議があつたものとみなされた事項の内容
  ロ イの事項の提案をした理事の氏名
  ハ 理事会の決議があつたものとみなされた日
  ニ 議事録の作成に係る職務を行つた理事の氏名
 二 法第四十五条の十四第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十八条第一項の規定により理事会への報告を要しないものとされた場合次に掲げる事項
  イ 理事会への報告を要しないものとされた事項の内容
  ロ 理事会への報告を要しないものとされた日
  ハ 議事録の作成に係る職務を行つた理事の氏名

出典:社会福祉法施行規則

次回はこのテーマです。

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍

本の内容をブログ記事でご紹介しています

事務所スタッフによる本の感想です。(本のタイトルまたは画像をクリックして下さい)

(第4巻 経営組織は、法人の役員(理事、監事)や評議員について解説しています)

オンライン研修会「1から学べる社会福祉法人会計勉強会」のスタッフの感想は、こちら

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能をぜひご活用ください。本の内容を一部ご覧いただくことができます。

第1巻
資金収支計算書

63ページ
1870円

NO.タイトルページ価格
第1巻資金収支計算書 (第5版)581870円
第2巻事業活動計算書(第3版)731925円
第3巻貸借対照表 (第3版)811980円
第4巻経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について)571760円
第5巻随意契約 451650円
第6巻注記と附属明細書1091980円
第7巻社会福祉法人会計簿記の特徴
『大切なのは、1行増えること』
521870円
第8巻管理職のための
社会福祉法人会計基準の逐条解説
831980円
第9巻利益と増減差額
 ~その違いからわかること~
471815円
第10巻現金主義と発生主義、実現主義
 ~収益と費用を計上するタイミングはいつ?~
671980円

(第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています)

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。



代表挨拶へ

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計


モバイルバージョンを終了