はじめに
社会福祉法人の運営では、理事会を適切に開催することが
法人運営の基本であり、指導監査でも必ず確認されるポイントです。
特に理事会の招集通知は、
- 通知期限
- 省略できる場合
- 全理事・全監事への通知記録
など、実務で見落としやすい点が多く、誤りがあると監査で必ず指摘されます。
本記事では、社会福祉法および一般法人法の規定に基づき、
理事会招集通知の要点と実務で押さえておくべき対応を整理します。
本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、厚生労働省の科目定義に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
社会福祉法人の理事会の招集通知
社会福祉法人の運営上の意思決定として、理事会を開催する機会が多くなります。
今回は、理事会の招集通知が適切に発せされているかを確認してみましょう。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
理事会の招集通知の基本
社会福祉法では、理事会の招集について次の3点が重要とされています。
| No. | 要点 |
|---|---|
| (1) | 理事会の1週間前までに、理事・監事へ招集通知を発すること |
| (2) | 定款に別の規定があれば、定款の期間が優先される |
| (3) | 全理事・全監事の同意があれば、招集通知を省略できる(例外規定) |
では実務でどう対応すべきか順に見ていきます。
① 招集通知を発する場合(期限・記録の整備)
● 通知期限
- 原則:理事会開催日の1週間前まで
- 例外:定款で期間を短縮できる場合あり(例:3日前)
● 事務局が残しておくべき記録
| No. | 内容 |
|---|---|
| ① | 招集通知(控え) |
| ② | 発出日を示す記録(期限内の発出がわかる証跡) |
| ③ | 全理事・全監事に通知した記録(漏れがない証明) |
※電子メールを使う場合も、発出日・送付先の証跡が必要です。
② 招集通知を省略する場合(例外規定)
招集通知の省略には、理事・監事の全員の同意が必要です。
● 残しておくべき書類
| No. | 内容 |
|---|---|
| ① | 全理事の同意書 |
| ② | 全監事の同意書 |
| ③ | 理事会議事録に「全員の同意により招集手続を省略した」旨の記載(望ましい) |
● 監査でよくある指摘
- 同意書が残っていない
- 監事の同意書だけ欠けている
- 同意日が理事会の日付と合わない
- 口頭で同意しただけで記録がない
「全員の同意」は証跡の有無が非常に重要です。
③ 全員同意の証跡をどう残すか(実務ポイント)
厚生労働省の指導監査ガイドラインでは、書面または電磁的方法で同意を確認できることが望ましい、と示されています。
● 実務で可能な方法
- 同意書を紙で回収
- メールで「同意します」と返信を得る
- Teams/LINE WORKS等のログをPDF保存
- 電子署名による同意書
「後から第三者が見て確認できる状態」をつくることが大切です。
指導監査ガイドライン:1 理事会は法令及び定款の定めに従って開催されているか。
○ 指導監査を行うに当たっては、理事会を招集した理事(法第45 条の14 第3項により招集した理事を含む。)が開催通知を期限までに発出しているか、招集通知を省略している場合には、理事及び監事の全員の同意があるかを確認する。
なお、理事会の招集通知を省略することについての理事及び監事の同意の取得・保存の方法について、法令上の制限はないが、法人において、理事及び監事の全員が同意書を提出することとする、又は理事会の議事録に当該同意があった旨を記載する等、書面若しくは電磁的記録による何らかの形で保存できるようにしておくことが望ましい。
出典:厚生労働省:指導監査ガイドライン「着眼点、指摘基準、確認書類」より
④ 理事会の招集権者
理事会を招集できるのは、社会福祉法により次のとおりです。
原則:各理事に招集権あり
例外:定款で招集理事を定めた場合、その者が招集する
(社会福祉法 第45条の14)
詳細はリンク先の記事で確認できます。
🔗 理事会の招集権者についてはこちら
https://office-matsuoka.net/2023/05/09/rijikai-shoshutetuduki/
⑤ 指導監査ではここを見る(重点ポイント)
- 通知期限どおりに招集通知を出しているか
- 全理事・全監事に漏れなく通知したか
- 省略時に「全員の同意」の証跡があるか
- 理事会議事録が法令に沿って作成されているか
監査では「手続」と「記録」の両方が整っているかが確認されます。
まんがでポイントを押さえよう
参考条文
理事会招集通知については、社会福祉法では「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を準用する形で定められています。
社会福祉法
社会福祉法
(理事会の運営)
第四十五条の十四 理事会は、各理事が招集する。ただし、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その理事が招集する。2~8 省略
出典:社会福祉法
9 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十四条の規定は理事会の招集について、同法第九十六条の規定は理事会の決議について、同法第九十八条の規定は理事会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(招集手続)
第九十四条 理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。2 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
出典:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
次回はこのテーマです。
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記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計)
