― 大臣折衝事項と検討チーム資料から全体像を整理 ―
令和8年度に向けて、
障害福祉サービス等報酬について臨時報酬改定と応急的な見直しの概要が示されました。
今回の見直しは、
令和9年度の本改定を待たずに行われる期中改定であり、
予算上の確定事項として「大臣折衝事項」が示されています。
本ページでは、厚生労働省の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で公表された資料を基に
- 予算上の結論を示す 大臣折衝事項
- その背景や考え方を補足する 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料
の2つをもとに、
今回の臨時改定の全体像を整理します。
【令和8年2月公表資料を反映しました(追記)】
その後、令和8年2月18日に上記報酬改定検討チームからの公表資料により、
- 処遇改善加算の具体的加算率
- 就労継続支援B型の報酬区分見直し
- 新規事業所特例の詳細
- 施行時期の整理
が示されました。
本ページ下部に、追加事項を追記しています。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
1.今回の見直しの位置づけ
今回示された障害福祉サービス等報酬の見直しは、
「強い経済」を実現する総合経済対策を踏まえ、
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定を待たずに実施される期中改定です。
物価や賃金の上昇、
人材確保が一層厳しくなっている状況を踏まえ、
障害福祉分野においても、
職員の処遇改善と事業運営への配慮を目的とした措置が講じられます。
2.大臣折衝事項に示された臨時改定の内容(概要)
大臣折衝事項では、
今回の臨時改定について、次のように整理されています。
改定の基本方針
- 障害福祉サービス等報酬について、期中改定を実施
- 改定率:+1.84%
- 国費:+313億円(令和8年度予算への影響額)
本改定は、
介護分野の処遇改善の対応状況や、
障害福祉分野における賃上げ状況、
総費用額の伸び等を勘案した上で行われます。
3.職員の処遇改善の内容
(1)賃上げ水準の整理
今回の臨時改定では、
障害福祉従事者を対象に、幅広く賃上げを実現する措置が講じられます。
具体的には、
- 月額 1.0万円(3.3%) 相当の賃上げ
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者については、
月額 0.3万円(1.0%) の上乗せ
とされています。
定期昇給分(0.6万円)を含めると、
最大で月額1.9万円(6.3%) の賃上げが実現する措置となります。
(2)処遇改善加算の対象拡大
今回の改定では、
処遇改善加算の対象が、
- 従来:福祉・介護職員のみ
- 今回:障害福祉従事者へ拡大
されます。
あわせて、
これまで処遇改善加算の対象外であった以下のサービスについて、
新たに処遇改善加算が設けられることとされています。
- 計画相談支援
- 障害児相談支援
- 地域相談支援
(3)その他の措置
上記の措置を実施するため、
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せ加算の創設
- ベースアップによるさらなる賃上げや、生産性向上の取組を後押しするための措置
が講じられるとされています。
また、
訪問系サービスに係る国庫負担基準についても、
改定内容を踏まえた所要の措置が実施されます。
4.検討チーム資料に見る「臨時応急的見直し」の背景
障害福祉サービス等報酬改定検討チームの資料では、
今回の見直しが臨時応急的な対応である理由として、
次のような点が示されています。
- 障害福祉サービス等の総費用額が急激に伸びていること
- 営利法人を中心とする新規参入の増加
- 人材確保が一層厳しくなっている状況
こうした状況を踏まえつつ、
利用者に提供されるサービスの質を確保・向上させながら、
制度の持続可能性を確保する観点から、
緊急的な所要の見直しが行われるものとされています。
見直し項目
見直しその他の主な項目は下になります。詳しくは厚生労働省の資料をご覧ください。
- 就労移行支援体制加算の見直し
- 就労継続支援B 型の基本報酬区分の基準の見直し
- 応急的な報酬単価の特例
- 報酬上の一定の評価について(加算)
- 報酬上の一定の評価について(基本報酬・加算)
- 指定就労継続支援事業所に関する自治体向けガイドラインを作成
- 指定共同生活援助事業所の運営や支援に関するガイドラインを作成
5.令和9年度改定に向けた位置づけ
大臣折衝事項では、
今回の臨時改定は令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた通過点であることも明示されています。
今後に向けては、
- 障害福祉サービス等事業者の経営情報データベース
- 障害福祉サービス等経営実態調査
等を活用し、
- 令和6年度改定
- 令和7年度補正予算による措置
- 今回の令和8年度臨時改定
が、
事業者の経営状況や人材確保に与えた影響を把握した上で、
制度の持続可能性とサービスの質の確保・向上を図るための検討が進められるとされています。
6.まとめ
今回示された障害福祉サービス等報酬の見直しは、
令和9年度改定を見据えた臨時応急的な措置として、
- 障害福祉従事者の処遇改善
- 生産性向上・協働化の促進
- 制度の持続可能性への配慮
を目的に行われるものです。
今後、
具体的な算定要件や取扱いについては、
通知等により順次示されることが見込まれます。
【追記】令和8年2月公表資料で示された追加事項
令和8年2月18日に公表された資料「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について
」において、
1月の大臣折衝事項および臨時応急的見直しの方向性を踏まえ、
より具体的な算定構造や数値が示されました。
以下、主な追加・確定事項を整理します。
1.処遇改善加算の具体的加算率の提示
1月時点では、
月額1.0万円(3.3%)、
生産性向上に取り組む場合はさらに0.3万円(1.0%)の上乗せ
という方向性が示されていました。
2月資料では、これを踏まえ、
- サービス種別ごとの具体的な加算率
- 各区分の算定構造
が一覧で示されています。
また、これまで対象外であった
- 計画相談支援
- 障害児相談支援
- 地域相談支援
について、処遇改善加算(5.1%)の新設が明記されました。
これにより、処遇改善加算の拡充は、
方向性段階から実務上の算定構造が確定した段階へ進んだと整理できます。
2.就労継続支援B型の基本報酬区分の見直し
就労継続支援B型については、
1月時点では「基準を引き上げる」という方針が示されていましたが、
2月資料では具体的な数値と配慮措置が示されました。
(1)基本報酬区分の基準額の引上げ
- 全国平均工賃月額が約6,000円上昇
- これを踏まえ、基本報酬の境界線を3,000円引き上げ
することが示されています。
(2)配慮措置の具体化
区分が下がる可能性のある事業所に対し、
- 基本報酬の減少を概ね3%程度に抑制するための
中間的な区分(区分A・B・C)の新設 - 令和6年度改定で区分が上がらなかった事業所は、
今回の見直しの適用対象外
といった措置が示されています。
就労継続支援B型の見直しについては別ページで整理しています。
3.新規事業所に対する特例単価の具体化
事業所数が急増しているサービスについて、
新規事業所の報酬単価を一定程度引き下げる措置の詳細が明らかになりました。
(1)対象サービス
- 就労継続支援B型
- 共同生活援助
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
(2)引下げ水準
基本報酬単価を、
1%強〜3%弱程度引き下げた特例単価が適用されます。
(3)適用除外(配慮措置)
以下の場合は特例の対象外とされ、
従前の報酬単価が適用されます。
- 強度行動障害等の重度障害児者を受け入れる場合
- 医療的ケア児者を受け入れる場合
- 離島・中山間地域等
- 自治体が公募等により設置する事業所
4.施行時期の整理
施行時期についても、資料において整理されています。
- 就労移行支援体制加算の適正化
→ 令和8年4月施行 - 処遇改善加算の拡充
- 就労継続支援B型の報酬区分見直し
- 新規事業所特例→ 令和8年6月施行
追記の位置づけ
2月資料は、
1月の大臣折衝事項および臨時応急的見直しの方向性を踏まえ、
具体的な算定率・単価構造を確定させたものと位置づけられます。
今後、通知等により算定要件の詳細が示されることが見込まれます。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
出版中の書籍
よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。
