マツオカ会計事務所

勘定科目の解説 支出(資金収支計算書)と費用(事業活動計算書)の比較 社会福祉法人会計

「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。

資金収支計算書と事業活動計算書

社会福祉法人では、3つの計算書類を作成していきます。

このうち、資金収支計算書と事業活動計算書では、類似している科目名が多く用いられています。

理由とともに内容を確認をしていきましょう。

様式名計算書類名
第一号 第一様式〜第四様式資金収支計算書
第ニ号 第一様式〜第四様式事業活動計算書
第三号 第一様式〜第四様式貸借対照表

支出と費用の違いについて

資金収支計算書と事業活動計算書

まず、収入と収益、支出と費用の違いについて、説明をしていきます。
資金収支計算書では、「収入」と「支出」という表現を使い、事業活動計算書では、「収益」と「費用」という表現を使っています。

計算書類名プラスの科目マイナスの科目
資金収支計算書収入支出
事業活動計算書収益費用

計算する対象の違い

資金収支計算書と事業活動計算書では計算の対象が異なるため、「収入、支出」と「収益、費用」のように表現が異なっています。

計算書類名計算の対象計算の目的
資金収支計算書(支払)資金法人のお金が 増えたor減った を計算する
事業活動計算書増減差額法人の純然たる財産が 増えたor減った を計算する

社会福祉法人の計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)の関係を簡単に表すと下のようになります。

ポイント 計算する対象の違い

資金収支計算書は、貸借対照表の緑色の部分、支払資金(流動資産ー流動資産)の1年間の増減を計算します。

事業活動計算書は、貸借対照表の青色の部分、純資産の1年間の増減を計算します。

類似の科目名が使われる場合 資金収支計算書と事業活動計算書

法人のお金が増えることは、法人の純然たる財産が増えることと、ほとんど同じと想像することができるように、
資金収支計算書と事業活動計算書では、同じような科目名(○○費支出、○○費)が用いられています。

(科目名の類似の例)

計算書類名大区分中区分小区分
資金収支計算書事業費支出給食費支出
事業活動計算書事業費給食費

支出と費用で考えますと

自分自身の財布の中のお金を使うこと(支払うこと)は、自分自身の純財産が減ると考えられます。

類似の科目名がない場合 資金収支計算書と事業活動計算書


借入金の返済ように、財布のお金は減るけれども、自分自身の純財産は減らない(手元のお金は減るけれども、借入残額も減るため)ということがあるように、
必ずしも、お金の増減と純資産の増減は一致(対応)しないことがあります。

資金収支計算書と事業活動計算書とを見比べると、分かってきますね。

(科目名の類似がない例)

計算書類名収 入支 出 
資金収支計算書設備資金借入金収入
長期運営資金借入金収入
固定資産売却収入

設備資金借入金元金償還支出
長期運営資金元金償還支出
固定資産取得支出
計算書類名収 益費 用
事業活動計算書固定資産売却益
減価償却費
国庫補助金等特別積立金取崩額(△)
固定資産売却損・処分損

発生主義と現金主義

一般的な「支出」と「費用」」の違い

企業会計などで、一般的に用いる

「支出」は、当年度に支出(支払)があったという考えに基づき計上していくため、

「当年度にお金を支払ったため、支出を計上した」というとらえ方ですね。

一方で、

「費用」は、当年度に役務の提供を受けたなどによって費用が生じたという考えに基づき計上していくため、

発生主義による考え方になります。

「当年度に、厨房業務の役務提供を受けたため、費用(業務委託費)を計上した」というとらえ方です。
(この場合に、当年度内での支払いの有無は関係してきません。)

現金主義とは:会計処理上の概念の一つ。ある取引による損益や費用を、現金の受け渡しがあった時点で計上すること

発生主義とは:会計処理の原則の一つ。現金の受け渡しや預金の増減とは関係なく、取引が発生した時点で、収益や費用を計上すること。

出典「デジタル大辞泉」(小学館より)

資金収支計算書の「支出」

資金収支計算書の「支出」では、

実際にお金を支払った時点(現金主義)で計上するのではなく、支払資金が減少した時に計上します。

支払資金は、上記の図にあるように、「流動資産ー流動負債」で計算されることから

社会福祉法人会計では、厨房業務の役務提供によって(流動負債の)事業未払金が計上された時点で

支払資金は減少し、支出が計上されることになります。

このように、資金収支計算書の「支出」は、

現金主義ではなく、役務提供を受ける等とともに発生主義的に計上されていくことになります。

このため、資金収支計算書と事業活動計算書で、ほぼ同じ科目名の勘定科目では、

(発生主義に基づく)「事業活動計算書」の費用の金額 = (発生主義的な)「資金収支計算書」の支出の金額

と両者が一致することが多くなります。


社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能をぜひご活用ください。本の内容を一部ご覧いただくことができます。

第1巻
資金収支計算書

63ページ
1870円

NO.タイトルページ価格
第1巻資金収支計算書 (第5版)581870円
第2巻事業活動計算書(第3版)731925円
第3巻貸借対照表 (第3版)811980円
第4巻経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について)571760円
第5巻随意契約 451650円
第6巻注記と附属明細書1091980円
第7巻社会福祉法人会計簿記の特徴
『大切なのは、1行増えること』
521870円
第8巻管理職のための
社会福祉法人会計基準の逐条解説
831980円
第9巻利益と増減差額
 ~その違いからわかること~
471815円
第10巻現金主義と発生主義、実現主義
 ~収益と費用を計上するタイミングはいつ?~
671980円
※ 第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

マツオカ会計事務所のストーリー

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

モバイルバージョンを終了