マツオカ会計事務所

現金|社会福祉法人会計でつまずかないための基本と実務ポイント

現金の基本と実務ポイント(社会福祉法人会計の勘定科目)

はじめに:現金は“最もシンプルで、最もズレが起きやすい資産”

社会福祉法人の会計で扱う「現金」は、紙幣や硬貨といった最も基本的な資産です。
しかし実務では、

など、トラブルが最も発生しやすい勘定科目です。

制度的にも内部統制的にも、
現金は「小さなズレを作らない」ことが最も重要なポイントになります。

※本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、現金の実務ポイントをわかりやすく解説しています。

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1. 厚生労働省の定義 現金

現金
硬貨、小切手、紙幣、郵便為替証書、郵便振替貯金払出証書、官公庁の支払通知書等

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

2. 現金とは何か(基本の確認)

現金とは、次のような“手元の資産”を指します。

入金して預金口座に振り込みを行った時点で、「預金」へ振り替えます。


3. 現金がつまずきやすい3つのポイント

① 小口現金と現金の区別が曖昧になる

「小口現金」「現金」「仮払金」が混在するケースが多く見られます。
特に、

👉 小口現金や現金は、常に残高と実在額が一致していることが必須です。

②小口現金と現金を区分して管理する


② 月末にまとめて処理してしまう

現金出納を“まとめて処理”すると、

が一気に発生します。

👉 現金は「1件ごとにその都度処理」が原則です。


③ 実査(カウント)をしない

帳簿と実際の現金が一致しているかを定期的に確認する「実査」は必須です。
しかし意外と実施されていないケースが多く、監査での指摘が見られます。

👉 月1回以上の実査を目安に、記録として残しておくことが内部統制になります。


4. 現金を安全に管理するための4つのポイント

① 1人に任せきりにしない(内部牽制)

記録担当と管理担当を分けることで、ミスや不正の防止につながります。


② 現金出納帳を“シンプルに整える”

書式が複雑である必要はありません。
最も大切なのは、
「残高」「日付」「摘要」「金額」が一目でわかること。


③ 小口現金の基準額を決めておく

小口現金の限度額は、経理規程で定めています。

限度額の範囲内で「3万円まで」「5万円まで」など、施設ごとに基準額を設定することで、過大保管を防げます。


④ 現金と小口現金とを混在させない

よくある誤りがこの2つ:

👉 日々の仕訳ごとに、どちらの性質かを意識して仕訳を行うことが重要です。


5. 実務で起こりやすいトラブル例

これらはすべて、
“日々の小さな習慣”で防げるトラブルです。


6. 監査でよく確認されるポイント

👉 現金は“制度の理解よりも、日々の誠実さ”が最も評価される項目です。


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まとめ:現金は“毎日の姿勢”が数字に表れる勘定科目

現金のズレは、単なるミスではなく“日々の習慣”がそのまま現れます。
現金が整っている法人は、帳簿・書類・内部統制も自然と整っていきます。

制度の知識以上に、
丁寧に、正確に、ズレを作らない姿勢が現場を守ります。

まんがでポイントを押さえよう

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。


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