はじめに
社会福祉法人では、理事・監事の改選に合わせて、
理事長および業務執行理事の選任手続きが適切に行われているかを確認することが重要です。
指導監査では、
・選任の根拠となる法令・定款どおりの手続きが行われているか
・理事会議事録に適切に記録されているか
が必ず確認されます。
本記事では、社会福祉法の規定に基づき、
理事長および業務執行理事の選任手続きのポイントを
実務担当者向けにわかりやすく整理します。
本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
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選任手続きの記録として必要な書類
理事長および業務執行理事を適正に選任したことを示すため、以下の書類を必ず整備・保存しておきます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ① | 理事会の議事録 |
まずは、この議事録が正しく作成されているか確認しましょう。
理事長・業務執行理事の選任手続き
● 選任を行う機関
社会福祉法および定款により、
理事長・業務執行理事は「理事会の決議」により選任することが明確に定められています。
理事会の決議がなければ、理事長としての権限も業務執行理事としての権限も発生しません。
■ 社会福祉法の規定(抜粋)
理事会は理事長を選定しなければならない(第四十五条の十三)
業務を執行する理事は、理事会の決議により選定される(第四十五条の十六)
また、法人の定款にも同様の規定があります。
ご自身の法人の定款(第16条前後)を必ず確認しておきましょう。
【参考】定款例における選任規定
厚生労働省の「定款例」では、次のように規定されています。
(役員の選任)
第一六条 理事及び監事は、評議員会の決議によって選任する。
2 理事長及び業務執行理事は、理事会の決議によって理事の中から選定する。
(出典:厚生労働省通知「社会福祉法人の認可について 別紙2 定款例」)
この条文に基づき、
どの理事を理事長に選任したか/誰を業務執行理事にしたか
を、理事会の議事録に明確に残しておく必要があります。
理事長の代表権について
理事長には、社会福祉法に基づき、次のような強い代表権限が与えられています。
理事長は、法人の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為を行う権限を有する。
(社会福祉法 第四十五条の十七)
一方で、
業務執行理事には代表権がありません。
あくまで内部的に法人の業務を執行する立場であり、対外的な契約等については理事長が行う必要があります。
理事会議事録に記録すべき内容
理事会では、次の事項が議事録に明確に書かれている必要があります。
- どの理事を理事長に選任したか
- どの理事を業務執行理事に選任したか
- 選任の決議が適正に行われたこと
- 出席理事・議決方法(定足数・賛否)
議事録に不備があると、監査で必ず指摘されます。
改選期に備え、過去の議事録も一度見直しておきましょう。
まんがでポイントを押さえよう
(参考)根拠条文等
社会福祉法
(理事会の権限等)
第四十五条の十三 理事会は、全ての理事で組織する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 社会福祉法人の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 理事長の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
(理事の職務及び権限等)
出典:社会福祉法より
第四十五条の十六 理事は、法令及び定款を遵守し、社会福祉法人のため忠実にその職務を行わなければならない。
2 次に掲げる理事は、社会福祉法人の業務を執行する。
一 理事長
二 理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの
(理事長の職務及び権限等)
出典:社会福祉法より
第四十五条の十七 理事長は、社会福祉法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
厚生労働省の定款例
(法人の定款も確認しておきましょう。)
(役員<及び会計監査人>の選任)
第一六条 理事及び監事<並びに会計監査人>は、評議員会の決議によって選任する。
2 理事長及び業務執行理事は、理事会の決議によって理事の中から選定する。(備考)会計監査人を置いていない場合、<>内は不要。
出典:厚生労働省通知「社会福祉法人の認可について 別紙2 定款例」より
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記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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