理事長及び業務執行理事の職務の執行状況の報告
職務の執行状況の報告について
社会福祉法人の理事長及び業務執行理事は、職務の執行状況を理事会へ報告しなければなりません(以下「業務執行状況報告」と記載します)。
(理事の職務及び権限等)
第四十五条の十六 理事は、法令及び定款を遵守し、社会福祉法人のため忠実にその職務を行わなければならない。
2 次に掲げる理事は、社会福祉法人の業務を執行する。
一 理事長
二 理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの
3 前項各号に掲げる理事は、三月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎会計年度に四月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。
社会福祉法より
業務執行状況報告の記録
業務執行状況報告については、報告を行った理事会の議事録に報告事項として記録しておく必要があります。
NO. | 必要な記録 |
---|
① | 理事会の議事録に報告事項として記録する |
業務執行報告の方法や様式
業務執行状況報告を行う場合の報告様式などは、任意様式とされています。
書類(資料)や口頭その他の方法が考えられます。
書面で報告を行った場合には、議事録に報告で使用した書面を添付し、
口頭で報告を行った場合には、報告した内容を議事録に明瞭に記載しておきましょう。
ポイント
理事会での業務執行報告は、報告を行う理事長または業務執行理事が、自ら報告を行います。
理事会で事務局が報告することにならないように注意しましょう。
議事録上も、理事長または業務執行理事が報告を行った旨を記載しておきましょう。
業務執行状況報告をする時期
報告時期や報告回数の考え方
業務執行状況報告は、原則として、3か月に1回以上、報告をする必要があります。
ただし、法人の定款で、「毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上(※)」と規定している場合には、
4か月以上の間隔を開けた上で、年に2回以上、業務執行報告を行います。
年度内の必要回数
区分 | 報告の期間や回数 | 年度内の必要回数 |
---|
原則 | 3か月に1回以上 | 4回以上 |
例外 (定款に上記(※)を定める法人) | 4か月を超える間隔で 2回以上 | 2回以上 |
4か月の間隔と会計年度の関係について
「毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上」としている場合、業務執行報告の行う時期については会計年度内で4か月の間隔を開ける必要がありますが、
会計年度をまたぐ場合には、4か月以内の期間に業務執行報告を行うことは差し支えないとされています。
(例)
NO. | 前回の報告月 | 今回の報告月 | 間隔 | 可否 | 可否の理由 |
---|
① | 令和7年1月 | 令和7年3月 | 2か月 | × | 同一会計年度内のため |
② | 令和7年2月 | 令和7年4月 | 2か月 | ○ | 会計年度が異なるため |
(注2)定款で理事長及び業務執行理事の報告を「毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上」と定めた場合、同一の会計年度の中では理事会の間隔が4か月を超えている必要があるが、会計年度をまたいだ場合、前回理事会から4か月を超える間隔が空いていなくても差し支えない。例えば、定款の定めに基づき、理事会を毎会計年度6月と3月に開催している場合、3月の理事会と6月の理事会との間隔は4か月を超えるものではないが、会計年度をまたいでいるため、当該間隔が4か月を超えていなくても差し支えない。
厚生労働省「指導監査ガイドラインより」
業務執行状況報告を行う理事会について
実際に開催された理事会
業務執行報告を行う理事会は、実際に開催された理事会になります。
決議の省略を行った理事会において、業務執行状況報告を行う形は認められていませんので注意しましょう。
決議の省略を行った理事会での「業務執行状況報告」が認められない理由
社会福祉法で準用する「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」において、
業務執行報告については、理事会への報告の省略の規定を適用しないと定められているため。
厚生労働省「指導監査ガイドライン」の説明
なお、理事の理事会への報告事項については、理事及び監事の全員に当該事項を通知したときは、当該事項の理事会への報告を要しない(法第45 条の14 第9項により準用される一般法人法第98 条第1項)。
例えば、同条第1項の規定により報告を省略できるものとしては、競業又は利益相反取引をした理事の当該取引に関する報告(法第45 条の16 第4項により準用される一般法人法第92 条第2項)がある。
もっとも、上記の理事長及び業務執行理事による職務の執行状況の定期的な報告については、この規定は適用されず(同条第2項)、必ず実際に開催された理事会において報告を行う必要がある。
出典:厚生労働省「指導監査ガイドラインより」
社会福祉法を確認してみましょう。
理事の業務執行報告について社会福祉法を確認してみましょう。
社会福祉法と一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- 社会福祉法 理事会への報告について
- 理事会への報告について、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を準用する
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- 理事会への報告の省略について規定
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
- 理事の職務執行の報告については、理事会の省略の規定を適用しない
社会福祉法
まず、「社会福祉法」です。
理事会への報告については、
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の第98条を準用するとされています。
(理事会の運営)
第四十五条の十四
(省略)
9 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十四条の規定は理事会の招集について、同法第九十六条の規定は理事会の決議について、同法第九十八条の規定は理事会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
出典:社会福祉法より
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
次に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」です。
第91条第2項に、理事及び業務執行理事の「業務執行報告」についての規定があります。
第98条第2項で、第91条第2項の「業務執行報告」については、理事会への報告の省略を適用しないとされています。
(理事会設置一般社団法人の理事の権限)
第九十一条 次に掲げる理事は、理事会設置一般社団法人の業務を執行する。
一 代表理事
二 代表理事以外の理事であって、理事会の決議によって理事会設置一般社団法人の業務を執行する理事として選定されたもの
2 前項各号に掲げる理事は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。ただし、定款で毎事業年度に四箇月を超える間隔で二回以上その報告をしなければならない旨を定めた場合は、この限りでない。
(理事会への報告の省略)
第九十八条 理事、監事又は会計監査人が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を理事会へ報告することを要しない。
2 前項の規定は、第九十一条第二項の規定による報告については、適用しない。
出典:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
事務所サービスのご案内②
規程の販売
質問専用フォーム
福祉大臣(会計ソフト)
社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍のご案内
本の内容をブログ記事でご紹介しています
事務所スタッフによる本の感想です。(本のタイトルまたは画像をクリックして下さい)
※ 第4巻 経営組織は、法人の役員(理事、監事)や評議員について解説しています
Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)
Amazonの試し読み機能をぜひご活用ください。本の内容を一部ご覧いただくことができます。
※ 第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています
マツオカ会計事務所のストーリー
よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
代表挨拶へ
(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計)