介護ロボット・ICT機器導入効果の確認 「見守り機器の導入①全般」 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士
介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業 報告書
厚生労働省 令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書を基に、見守り機器の導入効果を確認していきましょう。
詳細については、上記報告書をご参照ください。
介護テクノロジーの重点分野について
厚生労働省及び経済産業省から発出された「ロボット技術の介護利用における重点分野について」の該当項目は下になります。
分野名 | 項目名 | 説明 |
---|---|---|
見守り・コミュニケーション | 見守り(施設) | 介護施設において使用する、各種センサー等や外部通信機能を備えた機器システム、プラットフォーム |
実証実験の概要
令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」において実施された実証実験は下になります。
実証実験の概要
実証実験の分類 | 使用機器 | 実証実験の目的 | 利用施設 | 実施施設数 |
---|---|---|---|---|
【夜間見守り】見守り機器等を活用した夜間見守りによる生産性向上の取組に関する実証 | 見守り機器(施設) ※ バイタルタイプとカメラタイプの 2 種類を想定 | 夜間の人員配置の変更も視野に入れ、見守り機器を複数導入することにより、ケアの質の確保及び、職員の負担軽減が可能かを実証する。 | 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護医療院 | 28 施設 |
3つの実証パターン
区 分 | 新規導入 | 追加導入 | 全床導入 |
---|---|---|---|
実証目的 | 新規に入所者の10%程度に見守り機器(必要に応じて+インカム)を導入することで、夜勤職員の「直接介護」+「巡回・移動」の時間が減少するかを実証した。 インカムを使用した施設は4施設(22 施設中)。 | 既に見守り機器を導入している施設において、更に見守り機器を導入(入所者の50%~80%程度)した場合のケアの質の確保、生産性向上を実証した。 | 夜間の人員配置の変更も視野に入れ、見守り機器を複数導入することにより、ケアの質の確保及び、職員の負担軽減が可能かを実証する。 |
実証仮説 | 見守り機器の導入により、利用者の状況をリアルタイムに端末等で確認できるため、 ①巡回時間の削減や職員の業務効率化、 ②転倒・転落の未然防止や早期発見、 ③排泄の適時誘導が可能になる。 結果として、 ④適時適切な利用者へのケア提供が可能となり、間接業務時間や待機・休憩時間が確保できるようになるとした。 | 「新規導入」と同様の仮説に加え、見守り機器の活用によって創出された時間を他の間接業務等にあてることができるようになるとした。 | 見守り機器の全床導入により、ステーションで全利用者の状況を確認できることで、 ①定期巡回を訪室ではなく端末上で行えるようになり、巡回の時間が削減される。適時的切な利用者へのケア提供が出来るようになり、 ②ケアの質が確保され、人員配置基準を超える体制(2ユニットに夜勤職員1人)以上の体制(例:2.5 ユニットに1 人)で業務が可能となる。機器の活用により ③取得したデータを基に、個別援助計画の見直しが可能となり、ケアの質が確保されるとした。 |
「事前調査終了後、見守り機器導入からおおよそ1か月後に、事後調査を実施した。」とのことです。
機器導入によるオペレーション(業務)の変更
通常のオペレーション・ 課題 | 見守り機器導入後の オペレーション | オペレーション変更の 目的・目指すところ |
---|---|---|
一度に複数のコールが 鳴ったり、利用者の対応中に他利用者のコールが鳴る事も多く、職員が疲弊していた。 | 見守り機器の情報で起き上が り・端座位・離床の状態を把握し、訪室の必要性や優先順位を考える。 | スムーズな協力体制や情報 共有が確保できることにより、転倒・転落のリスク軽減や夜勤職員の身体的・精神的負担の軽減を図る。 |
転倒・転落の危険性の高い方には、スタッフが訪室して見守りを行っており、身体的・精神的負担がみられていた。 | 訪室での見守りから、見守り機 器による確認へ変更する。 •見守り機器によって離床した理由やその時の状況を把握し、不要な訪室を減らす。 | 転倒、転落の可能性のある利 用者の早期発見を図る。 行動パターンを把握し、センサーが無くても、行動パターンに合わせてケアが提供できる体制づくりを図る。 |
定期的な訪室や排せつケ アによって利用者を覚醒させてしまい、不眠やその後の頻回なナースコールにつながることがある。 | 覚醒状態や睡眠状況を把握す る事により、個々に応じた言葉かけや排泄ケアを行う。 利用者の様子を見守りセンサーで確認することで、定期巡視の回数を減らす。 | 不要な訪室の減少により利 用者の安眠、睡眠の質の向上を図る。 不要な呼び出しによる作業の中断を減らし、業務効率化を図る。 |
夜間不眠や中途覚醒により、昼夜逆転を起こしている場合に、睡眠導入剤の必要性や薬剤を選択するための情報が不十分である。 | 睡眠パターンや行動パターンが把握でき、ケアの介入方法や睡眠導入剤を検討する一助となる。 | 利用者の睡眠習慣から生活習慣を見える化し、生活や行動に合わせたケア提供ができる。また、データをもとに生活習慣の改善につなげる。 |
看取りの方に対して、小まめに訪室し状態確認を行っていた。 | 見守り機器で利用者の状態を 把握し、必要に応じて早期に対応する。 | 急変時等の確認が画面上で出来る為、訪室回数の減少や職員の負担軽減に繋げる。 |
夜勤職員間、及び他職種間での情報共有ができていなかった。 | 見守り機器の情報に基づいた情報共有や検証を行う。 | 他職種間の情報共有をより円滑にし、サービスの質の向上に繋げる。 |
タイムスタディ調査の結果
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
夜勤職員の対応可能人数の変化
結果の講評
通常時のオペレーションと実証時のオペレーションでの夜勤職員の担当利用者数を比較し、見守り機器の
全床導入により職員1 人当たりの担当利用者数がどの程度増加するのかを試算した。
集計対象6 施設の結果は以下のとおり。全体平均で通常の約1.5 倍の利用者の対応が可能という結果だった。
出典:(厚生労働省)令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書より
職員向けアンケート調査の結果
(1)心理的負担評価
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
(2)モチベーションの変化
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
(3)見守り機器の利用による職員や施設業務の変化
結果の講評
見守り機器の導入による職員や施設業務の変化について、
新規・追加実証では「訪室しなくても利用者の状況が分かる」で「1~3(そう思う)」と回答した割合は69%と最も多く、次いで「利用者の行動パターンが把握できる」、「事故原因分析の参考情報にできる」が62%、「優先順位の判断ができる」58%、「利用者のペースに合わせた介助ができる」が53%だった。
全床実証では「訪室しなくても利用者の状況が分かる」で「1~3(そう思う)」と回答した割合は83%と
最も多く、次いで「利用者の行動パターンが把握できる」で73%、「事故原因分析の参考情報にできる」が
71%だった。
出典:(厚生労働省)令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書より
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
(4)見守り機器の満足度評価
結果の講評
見守り機器の導入については、
新規・追加実証では「やや満足している」が4~5 割を占め、「やや満足し
ている」「満足している」「非常に満足している」の合計はいずれの質問項目においても6 割を超えた。
全床実証では「やや満足している」が4~5 割を占め、「やや満足している」「満足している」「非常に満足している」の合計はいずれの質問項目においても半数以上であった。
出典:(厚生労働省)令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書より
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
(5)業務の質の向上
結果の講評
夜間見守り業務の質の向上について、
新規・追加実証では「入居者の睡眠に関する情報が分かりやすくなった」で「いくらかそうだ」「まあそうだ」「その通りだ」の合計が84%であった。
全床実証では「入居者の睡眠に関する情報が分かりやすくなった」で「いくらかそうだ」「まあそうだ」「その通りだ」の合計が82%で最も多く、次いで「訪室回数の減少によって入居者の睡眠を妨げることが減った」、 「睡眠状況等を家族への状況報告に活用できた」 が73%、「心拍数、呼吸数等から異変に気付きやすくなった」が72%であった。
出典:(厚生労働省)令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書より
新規導入+追加導入の結果
全床導入の結果
利用者向けアンケート調査の結果
以下は、(厚生労働省)令和5年度「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」報告書の調査結果の文章を基に紹介しています。
(1)ADLの調査結果
見守り導入前後の利用者のADL の変化ついて、「していること」「できること」それぞれ事前と事後を比
較したところ、
新規・追加実証では大きな変化は見られなかった。
全床実証でも大きな変化は見られなかった。
(2)認知症高齢者の日常生活自立度
見守り機器導入前後の認知症高齢者の日常生活自立度について、
新規・追加実証では、事前で「Ⅲa」が30%で最も多く、次いで「Ⅳ」が25%であった。事後では「Ⅲa」と「Ⅳ」がともに29%で最も多かった。
全床実証では「Ⅲa」が事前52%、事後44%で最も多かった。
(3)認知症行動(DBD13)の変化
見守り導入前後の利用者の認知症行動(DBD13)の変化について、事前と事後を比較すると、
新規・追加実証では事前・事後ともに「0 点~13 点」が半数を超え、最も多かった。
全床実証では事前では60%、事後では58%が「0 点~13 点」であり最も多かった。
(4)認知機能変化の総合的な評価
見守り機器導入後における認知機能変化の総合的な評価について、
新規・追加実証では「0(変化なし)」が87%であった。「悪化したと感じる(-3~-1)」と回答した割合と「向上したと感じる(1~3)」と回答した割合を比較すると、「向上したと感じる」と回答した割合が多かった。
全床実証では「0(変化なし)」が85%であった。「悪化したと感じる(-3~-1)」と回答した割合と「向上し
たと感じる(1~3)」と回答した割合を比較すると、「向上したと感じる(1~3)」と回答した割合が多かった。
(5)利用者への心理的な影響(Vitality Index)
見守り機器導入前後の利用者への心理的な影響について、
新規・追加実証では「0 点~3 点」「4 点~7点」「8 点~10 点」に該当した割合が事前から事後にかけて大きな変化は見られなかった。
全床実証では「4 点~7 点」に該当した割合が事前・事後ともに50%で最も多かった。「0 点~3 点」に該当した割合が事前での19%から事後での23%に4 ポイント増加し、「8 点~10 点」に該当した割合が事前での31%から事後での27%に4 ポイント減少した。
(6)機器導入によるコミュニケーションの変化
見守り機器導入後におけるコミュニケーションの変化について、
新規・追加実証では「利用者の発語量の変化」と「利用者の表情の変化」のいずれにおいても「0(変化なし)」と回答した割合が最も多く、8~9 割を占めた。見守り機器導入後におけるコミュニケーションの変化の総合的な評価についても同様の傾向が見られた。
全床実証では「利用者の発語量の変化」と「利用者の表情の変化」のいずれにおいても「0(変化なし)」と回答した割合が最も多く8 割以上を占めた。見守り機器導入後におけるコミュニケーションの変化の総合的な評価についても同様の傾向が見られた。
(7)機器導入による社会参加の変化
見守り機器導入後におけるレクリエーション・イベントへの参加状況の変化について、
新規・追加実証では、いずれの項目においても「0(変化なし)」と回答した割合が90%を超えた。見守り機器導入後における食事やレクリエーション・イベント以外の場面での他者との交流の変化についても、同様の結果であった。見守り機器導入後における社会参加の変化の総合的な評価としては、「0(変化なし)」と「増加したと感じる(1~
3)」と回答した割合の合計が99%であった。
全床実証ではいずれの項目においても「変化なし」と回答した割合が約9 割であった。見守り機器導入後における食事やレクリエーション・イベント以外の場面での他者との交流の変化についても、同様の結果であった。見守り機器導入後における社会参加の変化の総合的な評価としては、全ての利用者への評価が「0(変化なし)」もしくは「増加したと感じる(-1~-3)」であった。
(8)利用者のQOL
見守り機器導入前後の利用者のQOL について、
事前と事後を比較したところ、新規・追加実証では「7点~13 点」に該当した利用者の割合が最も多く、事前では51%、事後では53%であった。
全床実証では「7 点~13 点」に該当した利用者の割合が最も多く、事前では48%、事後では42%であった。
(9)ケア内容の変更
見守り機器導入後におけるケア内容の変更について、
新規・追加実証では「機器導入により、利用者の状況が可視化できる」で「思う」と「とても思う」と回答した割合の合計が82%(51%、31%)で最も多く、次いで「機器導入により、より適切なタイミングでケアが提供できる」が65%(37%、28%)であった。
全床実証では「機器により取得したデータ等を、ケア計画の策定・見直しに活かすことができる」で「思う」
と「とても思う」と回答した割合の合計が89%(83%、6%)でで最も多く、次いで「機器が取得したデータ
等から、別なケアに活かすことができる」が79%(73%、6%)であった。
訪室回数調査の結果
(1)職員1 人1 夜勤当たり訪室回数
新規導入+追加導入の結果
排泄ケア回数調査の結果
(1)職員1 人1 夜勤当たり排泄ケア回数
新規導入+追加導入の結果
スマート介護士
マツオカ会計事務所では、スマート介護士の資格を取得して、介護ロボット導入についての知識を習得しています。
スマート介護士は、社会福祉法人へのICT導入を先駆的に取り組んでおられる
社会福祉法人善光会のサンタフェ総合研究所さんが主催・認定されている資格になります。
社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍
本の内容をブログ記事でご紹介しています
事務所スタッフによる本の感想です。(本のタイトルまたは画像をクリックして下さい)
第1巻
資金収支計算書
はじめに | 本が選ばれる3つの理由 |
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第1巻
資金収支計算書
63ページ
1870円
NO. | タイトル | ページ | 価格 |
第1巻 | 資金収支計算書 (第5版) | 58 | 1870円 |
第2巻 | 事業活動計算書(第3版) | 73 | 1925円 |
第3巻 | 貸借対照表 (第3版) | 81 | 1980円 |
第4巻 | 経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について) | 57 | 1760円 |
第5巻 | 随意契約 | 45 | 1650円 |
第6巻 | 注記と附属明細書 | 109 | 1980円 |
第7巻 | 社会福祉法人会計簿記の特徴 『大切なのは、1行増えること』 | 52 | 1870円 |
第8巻 | 管理職のための 社会福祉法人会計基準の逐条解説 | 83 | 1980円 |
第9巻 | 利益と増減差額 ~その違いからわかること~ | 47 | 1815円 |
第10巻 | 現金主義と発生主義、実現主義 ~収益と費用を計上するタイミングはいつ?~ | 67 | 1980円 |
マツオカ会計事務所のストーリー
よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。