社会福祉法人で経理規程が必ず必要な理由
社会福祉法人や企業主導型保育事業では、会計処理を適切に行うために経理規程の整備が求められています。
では、「なぜ必ず経理規程を作成しないといけないのか?」その根拠を整理して解説します。
※本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
| 「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。 |
| 顧問先様からのメールでのご相談の中で、他の顧問先様にもご参考になりそうな内容を、ホームページでご案内しています。 |
質問の内容
| なぜ、社会福祉法人では経理規程を必ず作成する必要があるのでしょうか。どこで決まっているのでしょう。 |
ご注意
掲載している内容は、マツオカ会計事務所の顧問先の社会福祉法人様に向けた内容になっています。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
-2-1024x417.jpg)
-1024x417.jpg)
経理規程とは
● 社会福祉法人会計基準に基づく内部ルール
社会福祉法人は、「社会福祉法人会計基準」に従って会計処理を行います。
経理規程は、この会計基準に沿って
法人内での会計事務の進め方・責任体制を明確にするための内部規程です。
モデル経理規程とは
社会福祉法人向けの経理規程は、次の団体から「モデル経理規程」として示されています。
| NO | 内容 | 発出元 |
|---|---|---|
| 1 | 経営協モデル | 全国社会福祉施設経営者協議会 |
| 2 | 全社協モデル | 全国社会福祉協議会 |
| 3 | 東社協モデル | 東京都社会福祉協議会 |
| 4 | 小規模法人向け | 厚生労働省(みずほ情報総研の調査研究事業) |
いずれも
社会福祉法人会計基準や厚労省の通知内容を踏まえて作成されており、厚生労働省も追認する形になっています。
そのため、法人が独自に定める経理規程も、各モデル規程をベースにすることが一般的です。
経理規程の根拠となる法令・通知
1. 厚生労働省「運用上の留意事項」
もっとも重要な根拠は、次の通知です。
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項」
(平成28年3月31日/最終改正 令和3年11月12日)
ここには、次のように明確に示されています。
(4)法人は、…会計処理のために必要な事項について経理規程を定めるものとする。
つまり、経理規程の作成は厚労省通知で義務付けられていることが分かります。
2. 社会福祉法 → 定款 → 経理規程 の流れ
経理規程が必要となる法的フローをまとめると次の通りです。
▶ 社会福祉法(第31条)
社会福祉法人を設立する際、定款に「会計に関する事項」を必ず定めることが規定されています。
▶ モデル定款(厚労省)
定款第34条には次のように明記されています。
会計に関しては、理事会で定める経理規程によって処理する。
つまり、
定款に「会計は経理規程で処理する」と書かれているため、経理規程を作らないと定款どおりの運営ができない
ということになります。
▶ 経理規程(モデル規程)
「適切な経理事務を行い、資金管理や経営状態を適正に把握することを目的とする。」
このように、
社会福祉法 → 定款 → 経理規程
という一連のつながりによって、経理規程の作成が求められています。
経理規程は見直しも必要です
経理規程は「作って終わり」ではなく、
実際の事務フロー・役職体制に合わせて定期的に見直すことが重要です。
運用している実務の内容と規程が合っていないと、
・監査で指摘が出る
・内部牽制が機能しない
・誤った会計処理につながる
などのリスクがあります。
必要に応じて、当事務所で見直しのサポートも行っています。
お問い合わせ
経理規程の作成・見直しをご検討の場合は、こちらからご連絡ください。
関連記事(一覧)
社会福祉法人・企業主導型保育事業の会計や監査に関する質問と回答はこちら
(参考)経理規程の根拠となる定め
経理規程を規定する根拠となる定めには、下があります。
社会福祉法人会計基準の関係通知(運用上の留意事項)
厚生労働省の通知「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について(平成 28 年 3 月 31 日最終改正令和3年11月12日)」
1 管理組織の確立
(1)法人における予算の執行及び資金等の管理に関しては、あらかじめ運営管理責任者を定める等法人の管理運営に十分配慮した体制を確保すること。
また、内部牽制に配意した業務分担、自己点検を行う等、適正な会計事務処理に努めること。
(2)会計責任者については理事長が任命することとし、会計責任者は取引の遂行、資産の管理及び帳簿その他の証憑書類の保存等会計処理に関する事務を行い、又は理事長の任命する出納職員にこれらの事務を行わせるものとする。
(3) 施設利用者から預かる金銭等は、法人に係る会計とは別途管理することとするが、この場合においても内部牽制に配意する等、個人ごとに適正な出納管理を行うこと。
なお、ケアハウス・有料老人ホーム等で将来のサービス提供に係る対価の前受分として利用者から預かる金銭は法人に係る会計に含めて処理するものとする。
(4)法人は、上記事項を考慮し、会計基準省令に基づく適正な会計処理のために必要な事項について経理規程を定めるものとする。
厚生労働省:社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
モデル定款
(会計処理の基準)
第三四条 この法人の会計に関しては、法令等及びこの定款に定めのあるもののほか、理事会において定める経理規程により処理する。
厚生労働省:モデル定款より
社会福祉法
社会福祉法
(申請)
出典:社会福祉法
第三十一条 社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。
一 ~ 九 (省略)
十 会計に関する事項
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

ホームページの各記事や事務所サービスのご案内
よく読まれている人気の記事(カテゴリー別)
- 社会福祉法人・企業主導型保育事業の質問と回答はこちら
- 社会福祉法人の役員(理事・監事)と評議員に関する手続き・監査指摘事項への対応はこちら
- 社会福祉法人会計で用いる勘定科目を科目ごとに分かりやすく解説はこちら
- 企業主導型保育事業の専門的財務監査の評価基準の解説はこちら
- 有料動画で学ぶ福祉の会計や経営はこちら
マツオカ会計事務所作成の書籍・動画・規程
20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。
▶ マツオカ会計事務所が提供する書籍・動画・規程まとめページを見る
出版中の書籍

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。





