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五感の調和が生む“安心と没入”──エステ・治療院に学ぶ、環境づくりの科学 職員の身体的負担と精神的負担の解消に向けて

はじめに(前回の記事とのつながり)

前回の記事では、「波長」「周波数」「1/fゆらぎ」 といった“こころのリズム”が、人の安心や話しやすさを大きく左右することを紹介しました。

人は、
・呼吸
・声のトーン
・表情
・間(ま)
といった非言語のリズムに強く影響を受け、
そのリズムが整うことで「安心できる相手・安心できる場」が生まれることを確認しました。

今回の記事は、その続編です。
「人が安心できる“場”をどうつくるか」 をテーマに、
エステサロンや整体院、治療院など、“五感を整えるプロ”が実践している空間づくりの方法をまとめます。

エステサロンでの五感の調和の取組みのイメージ図

この五感の調和は、福祉・介護・障がい・保育の現場でもそのまま応用できます。


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五感の調和とは何か

五感の調和とは、
五つの感覚すべてが“同じメッセージ”を脳へ届けている状態 のことです。

そのメッセージとは
「あなたは安全です。安心して過ごしてください。」
というもの。

空間からの情報が統一されると、
脳の警戒モードが解除され、深いリラックス状態へ入ることができます。

逆に、五感のどこかにノイズ(不快)が混ざると、
脳は「安全かどうか」を判別し続けなければならず、落ち着けません。

五感がバラバラだと、脳は疲れてしまう

たとえば、
・静かで落ち着いた音楽が流れているのに、照明が明るすぎる
・香りは良いのに、室温が寒い
・部屋は素敵なのに、椅子が硬くて座りにくい

こんな状態では、脳は「安全かどうか」の判断材料が揃わず、不安定さを感じます。

これが 認知負荷の増加(=無意識の疲れ)です。

そのため、成功しているリラクゼーション空間は、
五感すべてが矛盾なく「安らぎ」を伝えるよう設計されています。


五感別:空間を整えるポイント

五感ごとに要点を整理しました。

① 聴覚(音)

役割:自律神経のスイッチを切り替える“最初の導入”

・1/fゆらぎを含むヒーリング音楽
・小川、波、風の音
・歌詞のないBGMで外部ノイズをマスキング

音は、施設に入った瞬間の印象を決める「最初の案内役」です。

② 嗅覚(香り)

役割:最も速く脳に届く“安心の合図”

・アロマ
・木の香り(ヒノキなど)
・好き嫌いのある香りは避ける

嗅覚は大脳辺縁系に直結し、感情に即時作用するため効果が速いのが特徴です。

③ 視覚(光と色)

役割:心を落ち着かせる“空間の安全基地”

・間接照明
・陰影のある柔らかい照明
・植物や自然素材
・乱れた掲示物を置かない

視覚は情報量が多いため、最もノイズが混じりやすい感覚です。

「照明」「色」「形」だけで空間の印象は大きく変わります。

④ 触覚・体感温度

役割:身体的な不快ゼロの状態をつくる

・柔らかいタオル・クッション
・季節による温度差の吸収
・椅子やベッドの素材
・温度のムラを作らない

触覚が不快だと、他の感覚からの“安らぎの信号”が上書きされてしまいます。

⑤ 施術者(職員)の存在

役割:共鳴(エンパシー)を生む“第六の感覚”

元ファイルにもあるように(報告書 2)
施術者の落ち着き、呼吸のリズム、手の温度が利用者に伝わり、
深い共鳴(共感)が生まれます。

これは、福祉の職場でもまったく同じです。


五感が整うと“共鳴”が起きる

空間が整うことで、
職員自身の呼吸もゆっくりになり、声や表情も安定します。

すると、
利用者や子ども達にもその“安定の波長”が伝わり、
互いに安心しやすくなります。

これは「情動伝染」と呼ばれる現象で、
福祉・介護・保育では日常的に起きています。


福祉の現場に応用するポイント

エステや治療院の環境づくりは、福祉の施設にも直結します。

以下のように置き換えることで十分活かすことができます。

① 音

・施設特有の“機械音”“金属音”を軽減
・自然音の小さなBGMで雰囲気が柔らかくなる

② 香り

・共有スペースは無香料
・相談室や面談室はヒノキ・柑橘系などで安心感を演出

③ 光

・蛍光灯の直射を避ける
・デスクの間接照明
・掲示物の整理で視覚ノイズを減らす

④ 触覚・温度

・車椅子・ベッド周りの素材
・個室や相談室の温度差
・利用者の好みに合わせた椅子やクッション

⑤ 職員(関わりの姿勢)

・声のトーン
・動作の滑らかさ
・朝の呼吸リセット

環境と職員の調和が整うと、
「安心して話せる場所」「落ち着いて過ごせる空気」が生まれます。


まとめ

五感の調和は、
単に“おしゃれな空間”をつくるものではなく、
人の脳が安心しやすい環境をつくるための科学的アプローチ です。

・五感のメッセージが揃うと、脳は警戒を手放す
・エステや治療院はそれを高い精度で実践している
・福祉や教育の現場でも同じ効果を再現できる
・職員の存在そのものが“第六の感覚”となり、安心感を広げる

次の記事からは、
オフィス・一般企業ではどのように整えていくか

さらに、私たちの介護・障がい福祉・保育園ではどのようにしていくか

数回に分けて考えていきます。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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