介護DXはトップダウンで成功するのか?― 生産性向上推進体制加算の“本質”を考える ―
導入
前回の記事では、
厚労省調査のデータから、介護現場の「現在地」を整理しました。
テクノロジー導入は進んでいる。
加算算定事業所では一定の効果も見られる。
しかし同時に、
・加算Ⅰは伸び悩んでいる
・介護テクノロジーの導入に関する補助金を申請していない事業所が多い※
・委員会が機能していないケースもある
という現実も見えてきました。
※テクノロジーを導入していない事業所のうち、
補助金を「申請したことがない」と回答した割合は67.3%でした。
今回は、その“本質”を考えます。
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■ なぜトップダウンだけでは進まないのか
調査では、テクノロジー導入のきっかけは
「管理職からの提案」が最も多いという結果でした。
これは自然な流れです。
制度改定の情報は、まず経営層に届きます。
しかし、ここで問題が起きます。
導入は決まった。
補助金も活用した。
報告書も提出した。
それでも、現場が変わらない。
なぜでしょうか。
■ テクノロジーは“構造”を変えない
見守り機器を入れた。
インカムを配布した。
記録ソフトを更新した。
しかし、
・夜勤体制は変わらない
・巡回の考え方は変わらない
・役割分担は従来通り
であれば、生産性は大きくは変わりません。
テクノロジーは“手段”です。
構造を変えなければ、
成果は限定的になります。
■ 本当に変わった法人の特徴
私が見てきた法人で、
実際に生産性向上が進んでいるところには共通点があります。
それは、
「導入前より、導入後の議論が多い」
ということです。
・アラートが多すぎるのはなぜか
・巡回を減らす基準は何か
・データをどう活用するか
こうした問いを、
現場と経営が一緒に考えている。
ここに差があります。
■ 委員会は“形式”か“装置”か
委員会設置率は6割超。
しかし、重要なのは設置ではありません。
委員会が、
・報告の場で終わっているのか
・改善を決める場になっているのか
この違いです。
委員会は、
制度対応の義務ではなく、
組織変革の装置になり得ます。
しかし、それには
議論する文化が必要です。
■ 科学的介護とは何か
「科学的介護」という言葉は、
データ重視の印象を与えます。
しかし本質は、
データを“議論する材料”にすること
です。
数値を出すことが目的ではありません。
数値を使って、
「どう変えるか」を考えることが目的です。
そこまで踏み込めたとき、
初めてDXになります。
■ 介護助手が示していること
今回の調査で、
高い効果を示したのは介護助手の活用でした。
これは示唆的です。
生産性向上とは、
機械化だけではなく、
役割の再設計でもある。
DXは
Digital Transformation だけではありません。
Design Transformation
― 組織設計の見直しです。
■ 経営に問われていること
制度は整いました。
補助金もあります。
加算もあります。
しかし、
すべての法人が変わるわけではありません。
差を生むのは、
「制度をこなす経営」か
「制度を使う経営」か。
生産性向上推進体制加算は、
単なる加算ではありません。
経営の姿勢を映す鏡です。
■ 結論
介護DXは、
トップダウンだけでは成功しません。
必要なのは、
・現場との対話
・データを読む力
・役割を再設計する勇気
テクノロジーを入れることよりも、
組織を変える覚悟のほうが難しい。
だからこそ、
そこに経営の価値があります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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