はじめに
前回の記事(①)では、
- 評議員会の招集通知には「開催日の1週間前まで」の期限がある
- 計算書類の備置きには「評議員会の2週間前から」という期限がある
この2つの規定により、
決算理事会は評議員会より2週間以上前に開催しておく必要がある
という結論を整理しました。
今回は、
「では、なぜ厚生労働省が “2週間” を求めるのか」
その考え方を、
指導監査ガイドラインとパブリックコメントの内容から分かりやすく解説します。
本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
今回は、
(決算)理事会と定時評議員会との間は、2週間以上の間隔を確保しておくことについて、厚生労働省の考え方を確認しましょう。
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1.まず前提:法令には「2週間以上あける」という明確な規定はない
厚生労働省は、次のように明言しています。
理事会と評議員会の開催日について、2週間以上の間隔を確保することにつき、法令上の明確な定めはない。
つまり「2週間」という数字が法律に書いてあるわけではありません。
ではなぜ厚労省は「2週間以上」を求めているのでしょうか?
その理由は次のとおりです。
2.厚生労働省の考え方:理事会・評議員会の“相互牽制”を確保するため
厚生労働省は、パブリックコメントに次のように回答しています。
評議員会は、理事会による法人運営を監視し、適切な相互牽制関係を確保する役割を担う。
そのため、
評議員に対し、理事会が最終的に承認した計算書類を “事前に確認させる” 必要がある。今回の改正は、従来からの運用上の取扱いを「明確化」したもの。
つまり、厚生労働省が重視しているのは次の2点です。
▼厚生労働省が重視していること
- 理事会と評議員会の牽制関係を保つこと
- 評議員が、理事会で承認された計算書類を事前に読み込める時間を確保すること
これが「2週間以上必要」という実務基準の根拠です。
3.“2週間” の根拠|備置き期限との関係
厚労省が「2週間以上」とする理由は、次の法定期限との関係から導かれています。
| 内容 | 規定 |
|---|---|
| 計算書類の備置き開始 | 定時評議員会の2週間前から(社会福祉法 第45条の32) |
| その計算書類は「理事会承認済み」であること | 理事会で承認したものを備置きする必要がある |
この関係から、
- 計算書類の備置き開始日より前に
- 理事会を開催し、計算書類の承認を終えておく必要がある
つまり、自然と「理事会→評議員会の間は2週間以上」必要となるのです。
4.指導監査ガイドラインにも明記されている
指導監査ガイドラインにも、次のように明記されています。
定時評議員会の場合は、計算書類等の備置き規定との関連から、開催日は理事会と2週間以上の間隔を確保する必要がある。
これは、厚生労働省が「2週間以上」を正式に求めていることを示すものです。
○ 評議員会の招集については、理事会の決議により評議員会の日時及び場所等(注)を定め、理事が評議員会の1週間(中7日間)又は定款においてこれを下回るものとして定めた期間以上前までに評議員に書面又は電磁的方法(電子メール等)により通知をする方法で行われなければならない(法第 45 条の9第 10 項により準用される一般法人法第 181条及び第 182 条、規則第2条の 12。
社会福祉法人指導監査実施要綱(指導監査ガイドライン)より
ただし、定時評議員会の場合は計算書類等の備置き及び閲覧に係る規定(法第 45 条の 32 第1項)との関連から、開催日は理事会と2週間(中 14 日間)以上の間隔を確保する)。なお、電磁的方法で通知をする場合には、評議員の承諾を得なければならない。指導監査を行うに当たっては、これらの手続が適正になされているかについて確認する。
5.今回の“2週間ルール”は新設ではなく「従来からの運用」だった
厚生労働省はパブリックコメントで、
今回の改正は、従来からの運用上の取扱いを明確化したもの
と説明しています。
つまり、
- 以前から “2週間以上” を求める運用だった
- ただし文書で明確に示されていなかった
- 今回の改正で明文化された
という流れです。
理事会と評議員会の開催日について2週間以上の間隔を確保することにつき 、法令上明確な定めは ありません 。
「指導監査ガイドラインの一部改正(案)に関する御意見募集(パブリックコメント)について」の結果について
しかしながら、評議員会が理事会による法人運営を監視 するなどの役割を担い 、両者の適切な牽制関係を確保するという制度の趣旨から、評議員に対し、理事会の最終的な意思決定たる「 承認 」を受けた計算書類等を事前に確認させることとしているものであり、 本改正案は従来からの運用上の取扱いを明確化 したものであることから 、今回は原案のとおりとさせていただきます 。なお、こうした運用上の取扱いは、一般社団法人等も同様のルールとなっているものと承知しています 。
6.実務で押さえるべき結論
厚労省の考え方を整理すると、結論は次のとおりです。
▼結論
決算理事会と定時評議員会は、2週間以上の間隔を確保する。
▼理由
- 法令の備置き期限が「評議員会の2週間前」である
- 評議員が事前に計算書類を確認する時間を確保する必要がある
- 理事会と評議員会の適切な相互牽制を確保する制度趣旨による
- 厚労省はこれを「従来からの運用」として明確化した
7.実務チェックリスト
- 評議員会の2週間前までに計算書類を備置きしているか
- 備置きには「理事会承認済み」の計算書類を置いているか
- 理事会と評議員会の日程が2週間以上あいているか
- 評議員が計算書類を読む時間が確保されているか
- 指導監査ガイドラインの内容に沿った運用となっているか
まんがでポイントを押さえよう
決
| NO. | 記事のタイトル |
|---|---|
| ① | 決算理事会から定時評議員会までの日数① 何日、間隔を開けるべきか |
| ② | 決算理事会から定時評議員会までの日数② 厚生労働省の考え方の確認 |
次回はこのテーマです。
- 評議員選任・解任委員会は適切に運営されたか
- 法人運営・指導監査の準備の記事の一覧はこちら
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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