マツオカ会計事務所

勘定科目の解説 事業活動計算書 固定資産売却損・処分損 建物売却損・処分損 社会福祉法人会計

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厚生労働省の勘定科目の説明 建物売却損・処分損

建物売却損・処分損
建物を除却又は売却した場合の処分損をいう

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」

勘定科目説明の解説

費用科目の解説について

事業活動計算書の費用科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。

建物売却損・処分損

今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。

大区分中区分小区分
固定資産売却損・処分損建物売却損・処分損

大区分は、「固定資産売却損・処分損」になります。
時として、法人の固定資産を処分することがあります。

固定資産売却損とは、固定資産を処分する際に、他の事業者に売却するケースで、売却時に損失が生じた場合に計上されます。
処分損は、固定資産を売却せずに、処分(廃棄等)をした時点での帳簿価額が、処分損になります。

中区分は「建物売却損・処分損」です。

法人の保有する建物(及び建物附属設備)を売却(譲渡)した時に、損失が出た場合や、

建物の(廃棄)処分を行った場合ですね。

社会福祉法人では、法人の建物を売却(譲渡)することはあまりないかもしれません。

老朽化した建物の移転や建替えに伴う旧建物の解体や、

建物附属設備の更新に伴う旧設備の廃棄処分などがあるかもしれませんね。

売却する場合には、売却価格と、帳簿価額を比較して

売却価格 ー 帳簿価額 = 差額が、プラスなら「建物売却益(○○売却益)」、マイナスなら「建物売却損・処分損」が計上されます。

売却価格がゼロならば、帳簿価額が「建物売却損・処分損」になります。

差額の状況勘定科目
売却価格 > 帳簿価額○○売却益(建物売却益)
売却価格 < 帳簿価額建物売却損・処分損
売却価格 =    0建物売却損・処分損
売却価格 = 帳簿価額

○○売却益

厚生労働省の勘定科目説明では、建物売却益は、例示されていません。

「○○売却益」という名称で例示されており、「○○」のところに、具体的な科目名を記載する形で

「建物売却益」と表示することになります。

※厚生労働省の勘定科目説明の例示

区  分売却益の場合 売却損・処分損の場合
勘定科目
車輌運搬具売却益
器具及び備品売却益
○○売却益
建物売却損・処分損
車輌運搬具売却損・処分損
器具及び備品売却損・処分損
その他の固定資産売却損・処分損

車両運搬具と、器具及び備品は、「売却益」と「売却損・処分損」が示されていますが、「建物」については、「売却損・処分損」のみが示されています。

建物については、売却する機会はあまりなく、(廃棄)処分する機会が想定されているのかもしれません。

建物売却損・処分損の計算

売却損の場合

計算例

建物を売却した場合、資金収支計算書と事業活動計算書に計上される科目を見ていきましょう。

資金収支計算書 事業活動計算書 貸借対照表(参考)
○○売却収入
(建物売却収入)
建物売却益
または
建物売却損・処分損
(基本財産)建物
(その他固定資産)建物

以下を例に計算してみましょう。

※施設建物を移転のため、譲渡した。

NO.区   分内   容
取得価額(建設金額)358,000,000円
取得した日(登録日)平成24年1月15日
耐用年数39年
売却した日令和4年10月17日
売却代金100,000,000円
資金収支計算書

勘定科目「○○売却収入」で説明します。

事業活動計算書

①の売却日現在の帳簿価額を計算して、⑤売却代金との差額を計算します。

社会福祉法人会計では、事業用の建物を毎期、減価償却していきます。売却時時点での減価償却費控除後の帳簿価額を計算していきます。

一般的には、固定資産管理台帳で計算していますね。

資産名取得価額期首帳簿価額
(令和4年4月1日現在)
当期減価償却費
(4月1日~10月17日分)
売却時の帳簿価額
施設建物358,000,000262,593,0005,429,666257,163,334
減価償却費の計算は、月割計算をしています。

固定資産管理台帳などによる減価償却費の計算結果を基に、⑤売却代金と⑥売却時の帳簿価額の差額を計算します。

 ⑤100,000,000-⑥257,163,334=△157,163,334(建物売却損・処分損)

計算書類勘定科目金額
事業活動計算書建物売却損・処分損(⑤ー⑥)157,163,334

会計処理

計算例の会計処理(仕訳)を見てきましょう。

(1)当期減価償却費の計上(4月1日~10月17日分)

  当期分の減価償却費が計上できていない場合には、減価償却費を計上していきます。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
減価償却費5,429,666減価償却費の計上5,429,666(基本財産)建物
(2)売却時の仕訳

売却代金は、普通預金に入金されたこととします。

ア 事業活動計算書及び貸借対照表に係る仕訳
借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
現金預金100,000,000施設建物の売却257,163,334(基本財産)建物
建物売却損・処分損157,163,334
イ 資金収支計算に係る仕訳

社会福祉法人会計では、事業活動計算書や貸借対照表とともに資金収支計算書を作成する必要があります。

資金収支計算書を作成するためには、アの仕訳と合わせて、資金収支計算書に係る仕訳が必要になります。

資金収支計算書に係る仕訳は、一般的に、社会福祉法人会計ソフトで自動に行われることが多いです。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
支払資金100,000,000施設建物の売却100,000,000○○売却収入
(建物売却収入)

売却損の場合の事業活動計算書と資金収支計算書の関係

建物売却損が発生した場合、

事業活動計算書は費用の科目(損失)に計上されますが、資金収支計算書は収入の科目に計上されます。

売却益の場合

計算書類区 分勘定科目
事業活動計算書収益建物売却益
資金収支計算書収入建物売却収入

売却損の場合

計算書類区 分勘定科目
事業活動計算書費用建物売却損・処分損
資金収支計算書収入建物売却収入

処分損の場合

計算例

建物を売却せずに処分(廃棄)した場合、資金収支計算書と事業活動計算書に計上される科目を見ていきましょう。

資金収支計算書 事業活動計算書 貸借対照表(参考)
なし建物売却損・処分損 (基本財産)建物
(その他の固定資産)建物

以下の計算例を用います

NO.区  分内   容
取得価額(建設金額)358,000,000円
取得した日(登録日)平成24年1月15日
耐用年数39年
処分した日令和4年10月17日
売却代金0円
処分損の計算

建物を処分する場合には、処分時に残っている帳簿価額を処分損として計上します。

資産名取得価額期首帳簿価額
(令和4年4月1日現在)
当期減価償却費
(4月1日~10月17日分)
売却時の帳簿価額
施設建物358,000,000262,593,0005,429,666257,163,334
減価償却費の計算は、月割計算をしています。

計算書類勘定科目金額
事業活動計算書建物売却損・処分損(⑥)257,163,334

会計処理

計算例の会計処理(仕訳)を見ていきましょう。

(1)当期減価償却費の計上(4月1日~10月17日分)

  当期分の減価償却費が計上できていない場合には、減価償却費を計上していきます。(売却損の場合と同じ)

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
減価償却費5,429,666減価償却費の計上5,429,666(基本財産)建物
(2)処分時の仕訳

ア 事業活動計算書及び貸借対照表に係る仕訳
借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
建物売却損・処分損257,163,334施設建物の処分損257,163,334(基本財産)建物
イ 資金収支計算書に係る仕訳

建物の処分の場合には、お金の収入はないことから、資金収支計算書は計上されません。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
なしなし

基本財産の売却・処分損

基本財産である建物を売却や処分する場合には、処分等を行う前に、

定款に定めにしたがい、理事会や評議員会での承認手続きを得た上で、所轄庁の承認を受ける必要があります。

その他の固定資産の建物を処分する場合には、

定款や法人の定款細則等の専決規程に定めにしたがい、理事会や評議員会などの承認手続きを得る必要があります。

勘定科目を簡単に説明します

マツオカ

建物売却損・処分損
法人が保有する建物を譲渡した場合の売却代金(譲渡金額)ー帳簿価額の差額がマイナスになった場合の金額が売却損に、建物を処分した時に残っている帳簿価額が処分損になります。売却損と処分損を合わせて、「売却損・処分損」とします。


科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

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マツオカ会計事務所のストーリー

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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