立替金|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と実務の考え方
はじめに
立替金は、社会福祉法人の会計において
一時的に法人が支払いを立て替えた場合に発生する債権を整理する勘定科目です。
日常の法人運営では、
支払いの都合や事務処理の効率を考え、
法人がまとめて支払う方が合理的な場面があります。
こうした場合に発生する立替金は、
金額の大小にかかわらず、
誰の負担分を、どの時点まで立て替えているのかを
整理しておくことが重要になります。
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厚生労働省の勘定科目の説明
立替金
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
一時的に立替払いをした場合の債権額をいう。
立替金は、
将来的に返金を受けることを前提とした債権であり、
法人の費用そのものではありません。
立替金が発生する主なケース
社会福祉法人において立替金が発生するケースは、
大きく次の2つに分けて考えられます。
利用者に関する立替金
福祉サービスの提供に付随して、
利用者が本来負担すべき費用を
法人が一時的に立て替える場合があります。
たとえば、
- 理美容代
- 生活に必要な物品の購入代
- サービス利用に付随する実費負担分(法人以外への支払分)
などが考えられます。
これらは、
後日、利用料とあわせて精算されることが多く、
事業収益とは区分して管理する必要があります。
職員に関する立替金
職員に関する立替金として多いのは、
税金や社会保険料などの本人負担分を
法人が一時的に立て替えて納付するケースです。
たとえば、休職中などの際にう職員が負担する以下の費用として
- 住民税(特別徴収)
- 社会保険料の本人負担分
- 共済掛金
などがあります。
休職中や産休・育休中の職員については、
給与から天引きできない期間が生じるため、
法人が立て替えて納付し、
復職後や別途の方法で精算することになります。
他の未収系科目との違い
立替金は、
事業未収金や未収金と混同されやすい科目です。
それぞれの違いを整理すると、次のようになります。
- 事業未収金
事業収益に対応する未収分 - 未収金
事業収益以外の取引に対応する未収分 - 立替金
他者が負担すべき支払いを一時的に法人が立て替えたもの
立替金は、
法人の事業収益の発生とは直接関係しない点が
大きな特徴です。
実務で押さえておきたいポイント
立替金を管理する際には、
- 誰の負担分か
- 何に関する支払いか
- いつ、どのように精算される予定か
を、
個別に把握できる状態にしておくことが重要です。
特に、
長期間残っている立替金については、
精算方法や時期を改めて確認しておく必要があります。
債権としての位置づけ
立替金は、
会計上は 債権 に分類されます。
債権とは、
特定の相手に対して、
一定の行為(この場合は返金)を
請求できる権利をいいます。
立替金は金銭債権であり、
返金を受けることを前提として
管理される科目です。
まとめ
立替金は、
社会福祉法人の運営上、
実務の効率化のために発生することの多い科目です。
- 一時的な立替であること
- 将来、返金を受ける前提であること
- 収益とは区分して管理すること
これらを整理して理解しておくことで、
月次・決算・監査のいずれの場面でも、
実務を落ち着いて進めやすくなります。

記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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