はじめに
社会福祉法人会計では、
貸付金や未収金などの債権について、
将来回収できない可能性が見込まれる場合には、
その金額をあらかじめ見積もり、
徴収不能引当金として処理することが求められています。
このうち、
1年を超えて回収される予定の債権に対応するものが、
その他固定資産 徴収不能引当金です。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
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厚生労働省による勘定科目の説明
徴収不能引当金
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
長期貸付金等の固定資産に計上されている債権について、
回収不能額(返済免除等を含む)を見積もったときの引当金をいう。
この定義から、
その他固定資産 徴収不能引当金は、
固定資産に計上されている債権の評価調整を行うための引当金
であることが分かります。
引当金としての位置づけ
社会福祉法人会計基準では、
引当金は性格に応じて、
資産の控除項目または負債として処理されます。
徴収不能引当金については、
他の引当金(賞与引当金や退職給付引当金)とは異なり、
債権の金額から直接控除する方法が採られます。
そのため、
貸借対照表では
資産の部にマイナス表示される点が特徴です。
会計基準における考え方
社会福祉法人会計基準では、
債権の評価について、次のように定められています。
受取手形、未収金、貸付金等の債権については、
徴収不能のおそれがあるときは、
会計年度の末日において、
その時に徴収することができないと見込まれる額を控除しなければならない。
この規定により、
徴収不能引当金は、
回収不能が確定した後に計上するものではなく、
回収不能のおそれを見積もって計上するもの
であることが明確になります。
対象となる債権
その他固定資産 徴収不能引当金の対象となるのは、
主に次のような債権です。
- 長期貸付金
- その他、1年を超えて回収される予定の固定資産の債権
事業未収金など、
流動資産に該当する債権については、
流動資産の徴収不能引当金として処理され、
ここで扱う対象とは区別されます。
見積方法の考え方
徴収不能引当金の見積りは、
債権の性質に応じて、
次の2つに分けて行われます。
個別債権
- 法的整理の状況
- 実質的な返済能力
- 返済状況の悪化など
個別の事情を踏まえて、
回収可能額を判断し、
回収できないと見込まれる金額を見積もります。
一般債権
- 個別判断が難しい債権については、
- 過去の回収不能実績などを基に、
- 一定の割合で合理的に見積もります。
重要性の考え方
徴収不能引当金についても、
金額が重要性に乏しい場合には、
重要性の原則により、
計上を省略することが認められています。
ただし、
債権金額や法人全体への影響を踏まえ、
合理的な判断が必要となります。
まとめ
その他固定資産 徴収不能引当金は、
- 固定資産に計上されている債権の評価調整であること
- 債権の金額から直接控除して表示すること
- 回収不能のおそれを見積もって計上すること
- 個別債権と一般債権を区分して考えること
これらを整理して理解しておくことで、
社会福祉法人会計における
資産評価の考え方を、
制度に沿って正確に把握することができます。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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厚生労働省の勘定科目の説明 その他の固定資産 徴収不能引当金
(その他固定資産)徴収不能引当金
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
長期貸付金等の固定資産に計上されている債権について回収不能額(返済免除等を含む)を見積もったときの引当金をいう。
🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui
勘定科目説明の解説
社会福祉法人会計基準や各通知の中で、徴収不能引当金に関する規定を確認してみましょう。
社会福祉法人会計の引当金
社会福祉法人会計基準では、引当金の計上について、下のように記しています。
| 資産の部・引当金 | 負債の部・引当金 |
|---|---|
| 徴収不能引当金(流動資産) | 賞与引当金(流動負債) |
| 徴収不能引当金(固定資産) | 退職給付引当金(固定負債) 役員退職慰労引当金(固定負債) |
徴収不能引当金について
(資産の評価)
社会福祉法人会計基準
第四条 資産については、次項から第六項までの場合を除き、会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。ただし、受贈又は交換によって取得した資産については、その取得時における公正な評価額を付すものとする。
2 省略
3 省略
4 受取手形、未収金、貸付金等の債権については、徴収不能のおそれがあるときは、会計年度の末日においてその時に徴収することができないと見込まれる額を控除しなければならない。
5 省略
6 省略
賞与引当金・退職給与引当金・役員退職慰労引当金
(負債の評価)
社会福祉法人会計基準
第五条 負債については、次項の場合を除き、会計帳簿に債務額を付さなければならない。
2 次に掲げるもののほか、引当金については、会計年度の末日において、将来の費用の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該会計年度の負担に属する金額を費用として繰り入れることにより計上した額を付さなければならない。
一 賞与引当金
二 退職給付引当金
三 役員退職慰労引当金
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて」では、徴収不能引当金が明記されていますね。
18 引当金について(会計基準省令第5条第2項関係)
(1)将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当該会計年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合には、当該会計年度の負担に属する金額を当該会計年度の費用として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部に計上又は資産の部に控除項目として記載する。
(2)原則として、引当金のうち賞与引当金のように通常1年以内に使用される見込みのものは流動負債に計上し、退職給付引当金のように通常1年を超えて使用される見込みのものは固定負債に計上するものとする。
また、徴収不能引当金は、当該金銭債権から控除するものとする。
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」では、具体的な会計処理の方法が書かれています。
18 引当金について
(1)徴収不能引当金について
ア 徴収不能引当金の計上は、原則として、毎会計年度末において徴収することが不可能な債権を個別に判断し、当該債権を徴収不能引当金に計上する。
イ ア以外の債権(以下「一般債権」という。)については、過去の徴収不能額の発生割合に応じた金額を徴収不能引当金として計上する。
勘定科目説明のポイント
説明からのポイントは2つです。
| NO. | 内 容 |
|---|---|
| ① | 長期貸付金など長期の債権の、回収不能額を |
| ② | 見積もる |
①長期貸付金などの回収不能額について
徴収不能引当金は、回収ができない債権について、引当という処理を行います。
未収金など、流動資産に属する債権に係るものについては、流動資産の徴収不能引当金のところで説明しています。
固定資産の徴収不能引当金の計上の対象になる債権の代表的なものは、長期貸付金になります。
1年以上先に入金(返済)が行われる貸付金ですね。
長期に渡って返済を受けるため、期日通りの入金が滞ったり、回収不能が生じるリスクがあります。
このようなことが継続的に起きている場合に、徴収不能引当金を計上していくことになります。
②見積もる
徴収不能引当金は、回収不能になったことが確定した場合に計上するのではなく、回収不能の発生に備えて計上していくものです。
そのため、確定した金額で計上するのではなく、見積もり計算を行います。
回収不能の可能性のある金額を概算額で計上しておくイメージです。合理的に計算を行うといいます。
具体的な会計処理のポイント
会計基準と関係通知には、具体的な会計処理の方法が明記されています。こちらもポイントは2つです。
①債権の金額から控除する
②債権を2種類に分けて会計処理を行う
①債権の金額から控除する
徴収不能引当金は、貸借対照表には、債権の金額から控除する形で表示されます。つまり資産の部にマイナスで計上されることになります。他の引当金が、負債の部に計上されることと異なります。
例えば、こんな感じです。
貸借対照表
令和〇年3月31日現在
| 資産の部 | 金 額 | 負債の部 | 金 額 |
| 長期貸付金 | 100万円 | 賞与引当金 | 24万円 |
| 徴収不能引当金 | △5万円 | 退職給付引当金 | 32万円 |
| 役員退職慰労引当金 | 15万円 |
②債権を2種類に分けて会計処理を行う
徴収不能引当金は、債権を「個別債権」と「一般債権」に分けて会計処理を行います。
「個別債権」
個別債権は、個別評価金銭債権と呼ばれています。
債権ごとに、個別の事情から判断して、回収(入金)の可能額を算定し、回収できないであろう金額を引当金として計上していきます。
個別の事情とは、法律上の事情(更生経過の認可など)、実質的な事情(債務超過など)、形式的な事情(会社更生の申立て)などに応じて、判断して、見積もっていきます。
一般債権
一般債権は、一括評価金銭債権とも呼ばれます。
一般債権の方は、債権を個々に判断するのではなく、過去(3年間程度)の回収不能実績額と、一般債権金額の合計額との割合(回収不能比率)などを用いて、年度末の一般債権に係る回収不能見積もり額を計算していきます。
ポイント
重要性の原則
会計基準には、「重要性の原則」というものがあります。
重要性の原則とは、
「重要性の乏しいものについては、会計処理の原則及び手続並びに計算書類の表示方法の適用に際して、本来の厳密な方法によらず、他の簡便な方法によることができること(社会福祉法人会計基準第2条第4項)」を言います。
徴収不能引当金についても、重要性が乏しい場合には、その計上を省略することができます。
簡単な説明です
(その他固定資産)徴収不能引当金
長期貸付金など、長期に入金される予定のお金は、確実に入金されないリスクがあります。このような場合に備えて、回収できない金額を見積もっておく必要があります。
長期の債権の管理と回収事務の大切さを感じます。
科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。
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マツオカ会計事務所のストーリー
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
