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勘定科目の解説 マツオカ事務所オリジナル

勘定科目の解説 介護保険事業収入 その他の事業収入 市町村特別事業収入 社会福祉法人会計

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説明の内容

管理職になり、初めて社会福祉法人の会計に接することになったお客様へ、
「自分は会計の初心者だ」と思っておられる方々へ、
社会福祉法人会計で用いる勘定科目のイメージを持ってもらうための簡単な説明になります。始めたきっかけはこちら

厚生労働省の勘定科目の説明 市町村特別事業収入

市町村特別事業収入(公費)
介護保険のその他の事業で、市町村特別事業のうち、公費からの収入をいう。
(介護保険法第62条に規定する市町村特別給付による収入)

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」

市町村特別事業収入(一般)
介護保険のその他の事業で、市町村特別事業のうち、利用者からの収入をいう。

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」

科目の簡単な説明をしてみましょう

マツオカ
マツオカ

その他の事業収入の小区分 市町村特別事業収入(公費)、市町村特別事業収入(一般)
介護保険サービスに関連して、市町村の独自の条例に基づき行われる事業の収入になります。
市町村独自の保健福祉サービスや、一般的に、横出しサービスや上乗せサービスと呼ばれるサービスの市町村からの給付額と本人負担額を計上していきます
補助金事業収入や受託事業収入と、混同しないように注意しましょう。

収入と収益の違いについて

資金収支計算書と事業活動計算書

まず、収入と収益の違いについて、説明をしていきます。

資金収支計算書では、「収入」と「支出」という表現を使い、

事業活動計算書では、「収益」と「費用」という表現を使っています。

計算書類名プラスの科目マイナスの科目
資金収支計算書収入支出
事業活動計算書収益費用

計算する対象の違い

資金収支計算書と事業活動計算書では計算の対象が異なるため、「収入」と「収益」のように表現が異なっています。

計算書類名計算の対象計算の考え方
資金収支計算書(支払)資金法人のお金が 増えたor減った を計算する
事業活動計算書増減差額法人の純然たる財産が 増えたor減った を計算する

社会福祉法人の計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)の関係を簡単に表すと下のようになります。

ポイント 計算する対象の違い

資金収支計算書は、貸借対照表の緑色の部分、支払資金(流動資産ー流動資産)の1年間の増減を計算します。

事業活動計算書は、貸借対照表の青色の部分、純資産の1年間の増減を計算します。

法人のお金が増えることは、

法人の純然たる財産が増えることと、ほとんど同じと想像することができるように、

資金収支計算書と事業活動計算書では、同じような科目名(○○収入、○○収益)が用いられることが多いです。

(科目名の類似の例)

区 分大区分中区分小区分
資金収支計算書介護保険事業収入施設介護料収入介護報酬収入
事業活動計算書介護保険事業収益施設介護料収益介護報酬収益

一方で、違うものもあります。

一般的に、自分自身の財布の中のお金が増えることは、自分自身の財産もが増えると考えられますが、


借入金のように、財布の中のお金は増えるけれども、

自分自身の財産は増えない(手許のお金は増えるけれども、借入金(負債)も増える)

ということがあるように、

必ずしも、お金の増減と純資産の増減は一致(対応)しないことがあります。

資金収支計算書と事業活動計算書とを見比べると、分かってきますね。

発生主義と現金主義

一般的な「収入」と「収益」の違い

企業会計などで、一般的に用いる

「収入」は、当年度に収入(入金)があったという考えに基づき計上していくため、

現金主義的な考え方となります。

「当年度にお金が入ってきたため、収入を計上した」というとらえ方ですね。

一方で、

「収益」は、当年度に福祉サービスの提供などによって収益を生んだという考えに基づき計上していくため、

発生主義による考え方になります。

「当年度に、福祉サービスを提供したため、収益を計上した」というとらえ方です。
(この場合に、当年度内での入金の有無は関係してきません。)

現金主義とは:会計処理上の概念の一つ。ある取引による損益や費用を、現金の受け渡しがあった時点で計上すること

発生主義とは:会計処理の原則の一つ。現金の受け渡しや預金の増減とは関係なく、取引が発生した時点で、収益や費用を計上すること。

出典「デジタル大辞泉」(小学館より)

資金収支計算書の「収入」

資金収支計算書の「収入」では、

実際にお金が入った時点(現金主義)で計上するのではなく、支払資金が増加した時に計上します。

支払資金は、上記の図にあるように、「流動資産ー流動負債」で計算されることから

社会福祉法人会計では、(流動資産の)事業未収金が計上された時点で支払資金は増加し、

収入が計上されることになります。

このように、資金収支計算書の「収入」は、

現金主義ではなく、福祉サービス等の提供とともに発生主義的に計上されていくことになります。

このため、資金収支計算書と事業活動計算書で、ほぼ同じ科目名の勘定科目では、

(発生主義に基づく)「事業活動計算書」の収益の金額 = (発生主義的な)「資金収支計算書」の収入の金額

と両者が一致することが多くなります。

勘定科目説明の解説

収入科目の解説について

資金収支計算書の収入科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。

市町村特別事業収入

今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。

大区分中区分小区分
介護保険事業収入その他の事業収入 市町村特別事業収入(公費)
市町村特別事業収入(一般)
配食サービス 資金収支計算書

大区分は、「介護保険事業収入」とあるように、介護保険制度に基づく事業の区分になりますね。

市町村役場 資金収支計算書

今回は、中区分「その他の事業収入」の中の「市町村特別事業収入」になります。

介護保険法で定められた介護保険サービスとは別に、市町村が(独自に)定めた条例に基づき行うサービスの給付になります。

第六十二条 市町村は、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者(以下「要介護被保険者等」という。)に対し、前二節の保険給付のほか、条例で定めるところにより、市町村特別給付を行うことができる。

介護保険法

ポイントは、下のイメージです。

介護保険サービスに関連して市町村が条例に基づき特別給付される
市町村独自の保健福祉サービスや横出しサービス、上乗せサービスと言われるものなどがあります。
(公費)には、市町村からの給付額、
(一般)には、利用者負担額を計上する。
補助金事業収入や受託事業収入などと科目の混同に注意する

ポイントの説明

①市町村特別事業は、市町村の独自の条例に基づき特別事業として給付されるサービスが対象になります。 

②市町村特別事業として、条例に基づいて行われる以下のようなサービスがあります。

・市町村独自の、保健福祉サービス

・「横出しサービス」として、介護保険適用サービスとしては提供されないサービス
※例 配食サービスの補助、移送サービスの補助、おむつ支給(サービス)など

・「上乗せサービス」として、介護保険の支給限度額を超えるサービス
※例 介護保険適用サービスの利用時間の延長、利用回数の追加 など


③市町村特別事業収益(公費)には、市町村からの給付額を計上していきます。

市町村特別事業収入(一般)には、条例で定められたご利用者の負担金額を計上していきます。


④市町村特別事業(収入)と混同しやすい事業収入として、補助金事業(収入)や受託事業(収入)があります。

市町村特別事業は、条例に基づき、市町村へ特別給付の請求を行います
補助金事業は、地方公共団体から交付決定(通知書)を受けて、実施する事業というイメージです。
受託事業は、地方公共団体と委託契約書等を締結して、実施する事業というイメージになります。

 混同しないように、市町村特別事業の請求書(様式)や、地方公共団体等と交わした書類に注目しましょう。

簡単な説明をもう一度

マツオカ
マツオカ

その他の事業収入の小区分 市町村特別事業収入(公費)、市町村特別事業収入(一般)
介護保険サービスに関連して、市町村の独自の条例に基づき行われる事業の収入になります。
市町村独自の保健福祉サービスや、一般的に、横出しサービスや上乗せサービスと呼ばれるサービスの市町村からの給付額と本人負担額を計上していきます
補助金事業収入や受託事業収入と、混同しないように注意しましょう。


科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

Profile Picture

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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