マツオカ会計事務所

勘定科目の解説 事業活動計算書 固定資産売却損・処分損 器具及び備品売却損・処分損 社会福祉法人会計

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厚生労働省の勘定科目の説明 器具及び備品売却損・処分損

器具及び備品売却損・処分損
器具及び備品を売却又は処分した場合の売却損又は処分損をいう。

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」

勘定科目説明の解説

費用科目の解説について

事業活動計算書の費用科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。

器具及び備品売却損・処分損

今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。

大区分中区分小区分
固定資産売却損・処分損器具及び備品売却損・処分損

大区分は、「固定資産売却損・処分損」になります。
時として、法人の固定資産を処分することがあります。

固定資産売却損とは、固定資産を処分する際に、他の事業者に売却するケースで、売却時に損失が生じた場合に計上されます。
処分損は、固定資産を売却せずに、処分(廃棄等)をした時点での帳簿価額が、処分損になります。

中区分は「器具及び備品具売却損・処分損」です。固定資産の器具及び備品を売却した時に、損失が出た場合や、処分した場合ですね。

社会福祉法人では、保有する器具及び備品を売却することはあまりないかもしれません。
古くなった器具及び備品を廃棄(処分)することは、ありそうですね。

売却する場合には、売却価格と、帳簿価額を比較して

売却価格 ー 帳簿価額 = 差額が

プラスなら「器具及び備品売却益
マイナスなら「器具及び備品売却損・処分損」が計上されます。

廃棄する場合は、帳簿価額が「器具及び備品売却損・処分損」の金額になります。

差額の状況勘定科目
売却価格 > 帳簿価額器具及び備品売却益
売却価格 < 帳簿価額器具及び備品売却損・処分損
廃棄(処分)器具及び備品売却損・処分損
売却価格 = 帳簿価額

器具及び備品売却損・処分損の計算

売却損の場合

計算例

資金収支計算書 事業活動計算書 貸借対照表(参考)
器具及び備品売却収入 器具及び備品売却益
または
器具及び備品売却損・処分損
器具及び備品

以下を例に計算してみましょう。

※保有しているコピー機を更新のため、下取りに出した。

区  分内 容
取得価額(購入金額)1,150,000円
取得した日令和元年11月15日
耐用年数5年
売却した日令和4年8月20日
売却代金(下取価額)320,000円
資金収支計算書

勘定科目「器具及び備品売却収入」で説明します。

事業活動計算書

①の売却日現在の帳簿価額を計算して、⑤売却代金との差額を計算します。

社会福祉法人会計では、器具及び備品を毎期、減価償却していきます。売却時時点での減価償却費控除後の帳簿価額を計算していきます。

一般的には、固定資産管理台帳で計算していますね。

資産名取得価額期首帳簿価額
(令和4年4月1日現在)
当期減価償却費
(4月1日~8月20日分)
売却時の帳簿価額
コピー機1,150,000594,16795,833498,334
減価償却費の計算は、月割計算をしています。

固定資産管理台帳などによる減価償却費の計算結果を基に、⑤売却代金と⑥売却時の帳簿価額の差額を計算します。

 ⑤320,000-⑥498,334=△178,334(器具及び備品売却損・処分損)

計算書類勘定科目金額
事業活動計算書器具及び備品売却損・処分損(⑤ー⑥)178,334

会計処理

器具及び備品を売却した場合、資金収支計算書と事業活動計算書に計上される科目を見てきましょう。

計算例の会計処理(仕訳)を見てきましょう。

(1)当期減価償却費の計上(4月1日~8月20日分)

  当期分の減価償却費が計上できていない場合には、減価償却費を計上していきます。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
減価償却費95,833減価償却費の計上95,833器具及び備品
(2)売却時の仕訳

売却代金は、普通預金に入金されたこととします。

ア 事業活動計算書及び貸借対照表に係る仕訳
借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
現金預金320,000コピー機の売却498,334器具及び備品
器具及び備品
売却損・処分損
178,334
イ 資金収支計算に係る仕訳

社会福祉法人会計では、事業活動計算書や貸借対照表とともに資金収支計算書を作成する必要があります。

資金収支計算書を作成するためには、アの仕訳と合わせて、資金収支計算書に係る仕訳が必要になります。

資金収支計算書に係る仕訳は、一般的に、社会福祉法人会計ソフトで自動に行われることが多いです。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
支払資金320,000コピー機の売却320,000器具及び備品
売却収入

売却損の場合の事業活動計算書と資金収支計算書の関係

器具及び備品売却損が発生した場合、

事業活動計算書は費用の科目(損失)に計上されますが、資金収支計算書は収入の科目に計上されます。

売却益の場合

計算書類区 分勘定科目
事業活動計算書収益器具及び備品売却益
資金収支計算書収入器具及び備品売却収入

売却損の場合

計算書類区 分勘定科目
事業活動計算書費用器具及び備品売却損・処分損
資金収支計算書収入器具及び備品売却収入

処分損の場合

計算例

器具及び備品を売却せずに処分(廃棄)した場合、資金収支計算書と事業活動計算書に計上される科目を見てきましょう。

資金収支計算書 事業活動計算書 貸借対照表(参考)
なし器具及び備品売却損・処分損 器具及び備品

以下の計算例を用います

区  分内 容
取得価額(購入金額)1,150,000円
取得した日令和元年11月15日
耐用年数5年
廃棄した日令和4年8月20日
売却代金(下取価額)0円
処分損の計算

器具及び備品を処分する場合には、処分時に残っている帳簿価額を処分損として計上します。

資産名取得価額期首帳簿価額
(令和4年4月1日現在)
当期減価償却費
(4月1日~8月20日分)
売却時の帳簿価額
コピー機1,150,000594,16795,833498,334
減価償却費の計算は、月割計算をしています。

計算書類勘定科目金額
事業活動計算書器具及び備品売却損・処分損(⑥)498,334

会計処理

計算例の会計処理(仕訳)を見てきましょう。

(1)当期減価償却費の計上(4月1日~8月20日分)

  当期分の減価償却費が計上できていない場合には、減価償却費を計上していきます。(売却損の場合と同じ)

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
減価償却費95,833減価償却費の計上95,833器具及び備品
(2)処分時の仕訳

ア 事業活動計算書及び貸借対照表に係る仕訳
借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
器具及び備品
売却損・処分損
498,334コピー機の処分損498,334器具及び備品
イ 資金収支計算書に係る仕訳

器具及び備品の処分の場合には、お金の収入はないことから、資金収支計算書は計上されません。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
なしなし

備忘価額の器具及び備品の処分

耐用年数を過ぎた固定資産(器具及び備品)を固定資産台帳上、1円で残していることがあります。

1円を一般的に「備忘価額」といいます。

1円で残している器具及び備品を廃棄する場合には、廃棄前の帳簿価額の1円が、器具及び備品売却損・処分損に計上されます。

借方科目借方金額摘要貸方金額貸方科目
器具及び備品売却益・処分損備品の廃棄器具及び備品

固定資産売却益と固定資産売却損

上記の計算例ように、固定資産売却損益は

固定資産の売却代金(a)と売却時点での固定資産の帳簿価額(b)の差額を計算していきます。

(a)ー(b)が、プラスであれば、固定資産売却益、マイナスなら固定売却損となります。

売却代金>帳簿価額固定資産売却益
売却代金<帳簿価額固定資産売却損・処分損
売却代金=0 固定資産売却損・処分損

減価償却費を正しく計算することで、固定資産売却益、固定資産売却損・処分損のどちらになるかが分かります。

売却の意思決定前に、売却時点の帳簿価額を把握しておくといいでしょう。

勘定科目を簡単に説明します

マツオカ

器具及び備品売却損・処分損
法人が所有する器具や備品(固定資産)を売却した場合の売却代金(収入)ー帳簿価額の差額がマイナスになった場合の金額が売却損になり、器具及び備品を処分した時に残っている帳簿価額が処分損になります。


科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍

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第3巻貸借対照表 (第3版)811980円
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第5巻随意契約 451650円
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社会福祉法人会計基準の逐条解説
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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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