社会福祉法人の監事の改選期
令和5年度は、多くの社会福祉法人さんで、理事、監事の改選期になると思います。
監事の選任について正しい手続きを行い、記録がきちんと残されているか、今年度以降の指導監査に向けて準備をしていきましょう。
監事になることができない者
監事の選任時には、監事(候補者)が以下に該当していないかを確認していく必要があります。
NO. | 確 認 事 項 |
---|---|
① | 監事になることができない者(欠格事由) |
② | 法人の理事または職員及び評議員 |
② | 各役員と特殊関係にある者(特殊関係者) |
監事になることができない者(欠格事由)
監事になることができない者
社会福祉法では、監事になることができない者として、欠格事由を定めています。
欠格事由の内容
監事になることができない欠格事由は、社会福祉法によると下のようになります。
NO. | 内 容 |
---|---|
① | 法人 |
② | 精神の機能の障害により職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者 |
③ | 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 |
④ | ③のほか、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 |
⑤ | 所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた法人の解散当時の役員 |
⑥ | 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 |
社会福祉法の規定
社会福祉法の欠格事由の条文を確認しておきましょう。
監事の欠格事由は、社会福祉法第44条第1項により、評議員の欠格事由(第40条第1項)を準用しています。
(役員の資格等)
社会福祉法
第四十四条
第四十条第一項の規定は、役員について準用する 。
(評議員の資格等)
第四十条 次に掲げる者は、評議員となることができない。
一 法人
二 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として厚生労働省令で定めるもの
三 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又はこの法律の規定に違反して刑に処せられ、
その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが
なくなるまでの者
五 第五十六条第八項の規定による所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員
六 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する
暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しな
い者(第百二十八条第一号ニ及び第三号において「暴力団員等」という。)
法人の理事または職員及び評議員
法人の理事または職員及び評議員は、監事になることができません。
(評議員の資格等)
社会福祉法より
第四十条
2 評議員は、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
(役員の資格等)
第四十四条
2 監事は、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
各役員と特殊関係にある者(特殊関係者)
欠格事由の他にも、監事になることができない者として社会福祉法等により定められている特殊関係者が挙げられます。
特殊関係者の範囲
監事になることができない特殊関係者の範囲が下のようになります。
区分 | 内 容 |
---|---|
① | 配偶者 |
② | 三親等以内の親族 |
③ | 厚生労働省令で定める者(規則第2条の10) (1)当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者 (2)当該理事の使用人 (3)当該理事から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者 (4)(2)又は(3)の配偶者 (5)(1)~(3)の三親等以内の親族であって、これらの者と生計を一にする者 (6)当該理事が役員(注)若しくは業務を執行する社員である他の同一の社会福祉法人以外の団体の 役員、業務を執行する社員又は職員(同一の団体の役員等が当該社会福祉法人の監事の総数の3分の1を超える場合に限る。) (注)法人ではない団体で代表者又は管理人の定めがある場合には、その代表者又は管理人を含む。(7)において同じ。 (7)当該監事が役員若しくは業務を執行する社員である他の同一の社会福祉法人以外の団体の役員、 業務を執行する社員又は職員(同一の団体の役員等が当該社会福祉法人の監事の総数の3分の1を超える場合に限る。) (8)他の社会福祉法人の理事又は職員(当該他の社会福祉法人の評議員となっている当該社会福祉法人の評議員及び役員の合計数が、 当該他の社会福祉法人の評議員の総数の半数を超える場合に限る。) (9)次の団体の職員(国会議員又は地方議会の議員を除く。)(同一の団体の職員が当該社会福祉法人の監事の総数の3分の1を超える場合 に限る。)・ 国の機関、地方公共団体、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、地方独立行政法人、特殊法人、認可法人 |
(注意)租税特別措置法第40条の適用を受ける場合の特殊関係者の範囲について
社会福祉法人が受贈法人として、租税特別措置法第40 条第1項の適用を受けようとする場合には、
特殊関係者の範囲について、定款に「租税特別措置法施行令第 25条の 17 第6項第1号で定める親族等特殊関係者に関する規定」が規定されている必要があります。
社会福祉法と租税特別措置法施行令では、特殊関係者の範囲が同一ではありませんので、ご注意ください。
社会福祉法、社会福祉法施行規則及び社会福祉法人審査基準の規定
社会福祉法
社会福祉法では、特殊関係者について、下のように定めています。
(役員の資格等)
社会福祉法
第四十四条
7 監事のうちには、各役員について、その配偶者又は三親等以内の親族その他各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者が含まれることになつてはならない。
社会福祉法施行規則
社会福祉法施行規則では、特殊関係者の範囲について、下のように具体的に定めています。
(監事のうちの各役員と特殊の関係がある者)
社会福祉法施行規則
第二条の十一 法第四十四条第七項に規定する各役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者は、次に掲げる者とする。
一 当該役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
二 当該役員の使用人
三 当該役員から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持している者
四 前二号に掲げる者の配偶者
五 第一号から第三号までに掲げる者の三親等以内の親族であつて、これらの者と生計を一にするもの
六 当該理事が役員(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあつては、その代表者又は管理
人。以下この号及び次号において同じ。)若しくは業務を執行する社員である他の同一の団体(社会福祉法人
を除く。)の役員、業務を執行する社員又は職員(当該他の同一の団体の役員、業務を執行する社員又は職員
である当該社会福祉法人の監事の総数の当該社会福祉法人の監事の総数のうちに占める割合が、三分の一を超
える場合に限る。)
七 当該監事が役員若しくは業務を執行する社員である他の同一の団体(社会福祉法人を除く。)の役員、業務
を執行する社員又は職員(当該監事及び当該他の同一の団体の役員、業務を執行する社員又は職員である当該
社会福祉法人の監事の合計数の当該社会福祉法人の監事の総数のうちに占める割合が、三分の一を超える場合
に限る。)
八 他の社会福祉法人の理事又は職員(当該他の社会福祉法人の評議員となつている当該社会福祉法人の評議員
及び役員の合計数が、当該他の社会福祉法人の評議員の総数の半数を超える場合に限る。)
九 第二条の七第八号に掲げる団体の職員のうち国会議員又は地方公共団体の議会の議員でない者(当該団体の
職員(国会議員又は地方公共団体の議会の議員である者を除く。)である当該社会福祉法人の監事の総数の当
該社会福祉法人の監事の総数のうちに占める割合が、三分の一を超える場合に限る。)
その他監事に選任することが適切でない者
欠格事由、特殊関係者の以外にも、監事に選任することに注意が必要となる場合について、指導監査ガイドラインの中で示されています。
注意が必要なものは、下のようになります。
名目的、慣習的に監事に選任している場合
監事の役員の重要性から、名目的、慣習的に監事に選任され、理事会の欠席が続いている場合には、監事に選任することが適切でない者に該当することになります。
監事の役割の重要性に鑑みれば、実際に理事会に参加できない者や地方公共団体の長等の特定の公職にある者が
厚生労働省 指導監査ガイドラインより「2 監事となることができない者が選任されていないか。着眼点、指摘基準、確認書類」より
名目的・慣例的に監事として選任され、その結果、理事会を欠席することとなることは適当ではないため、監事にこのような者がいないかを確認する。この場合の監事として不適当であると判断するための基準は、原則として、前年度から当該年度までの間において理事会を2回以上続けて欠席している者であることによることとする(なお、決議の省略を行った場合は、出席とみなして差し支えない)。
関係行政庁の職員が監事になっている場合
社会福祉協議会をはじめとして、関係行政庁の職員が法人の監事に選任されている場合にも、注意が必要とされています。
○ 上記(注2)の特殊の関係にある者の③のⅸに該当しない場合であっても、関係行政庁の職員が法人の監事となることは法第61 条に「国及び地方公共団体は法人の自主性を重んじ、不当な関与を行わないこと」(第1項第2号)及び「法人が国及び地方公共団体に対して不当に管理的援助を求めないこと」(同項第3号)と規定し、公私分離の原則を定める趣旨に照らすと適当ではないことに所轄庁等関係行政庁は留意する必要がある。
厚生労働省 指導監査ガイドラインより「2 監事となることができない者が選任されていないか。着眼点、指摘基準、確認書類」より
○ 社会福祉協議会については、公私の関係者の協力によって組織され運営されるものであることから、関係行政庁の職員が役員となることのみをもって不当な関与であるとはいえないが、役員総数(注3)の5分の1を超える割合を占める場合は不当な関与であると考えられるため、法により認められていない(法第109 条第5項)。
(注3)法第109 条第5項は、役員総数に対する関係行政庁の職員である役員の割合について規定しており、役員、すなわち、理事と監事の合計数で判断されるものである。
評議員会での確認の手続き
監事の候補者が、
監事に欠格事由に該当する者や特殊関係者を選任していないか等を、
選任の手続きの中できちんと確認を行ったことの記録が大切になります。
具体的には、
理事会(評議員会の開催を決議する理事会、議案として監事候補者を選任)と
評議員会(監事を選任する理事会)の開催において
・監事の候補者から履歴書や誓約書などの提出を受けて、
「欠格事由に該当しないこと」、「特殊関係者に該当しないこと」を確認し、
理事会(評議員会へ提出する理事候補者選任)及び評議員会(監事の選任)の場で
説明・報告し、議事録に記録していくことになります。
監事の候補者の履歴書において、
職歴(在職状況)など、欠格事由に該当していないことを確認しておきましょう。
また、
誓約書を用いて、
「欠格事由に該当しないこと」、
「役員・職員と特殊関係のないこと」
を候補者ご自身に誓約してもらっておきましょう。
理事会や評議員会の議事録には、
監事候補者が「欠格事由や特殊関係のないこと」を
確認した旨の説明が行われていることを、
記録されているか
理事会、評議員会の議事録、理事(候補者)の履歴書と誓約書を、一度、確認してみましょう。
履歴書・誓約書について
履歴書、誓約書は、新任となる監事さんだけでなく、再任される監事さんを含めて全ての監事さんのものが必要になります。
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