マツオカ会計事務所

④50円の奇跡 1から学べる社会福祉法人会計勉強会の資料ができるまで

50円の奇跡

1から学べる社会福祉法人勉強会の資料や書籍は、本質を伝えることを目的にしています。本質を伝えるために資料や文章へのこだわりについてお伝えしていきます。今回は少し異なった話です。

50円の奇跡

役所時代のお財布事情

私は、平成2年4月に、地方自治体に就職しました。
当時の初任給が、手取りで約12万円でした。
今は新卒の初任給が30万円を超えるニュースを目にして、とても驚いています。

手取りの中から、半分程度が実家に入れる生活費と親への返済金でした。
残り半分が、自分が自由にできるお金です。
使い道は、毎日の昼食代と週末に友達と遊ぶお金が中心でした。

大きな悩みが昼食代です。学生時代からの昼食の予算は400円です。
学食なら十分に食べられました。
当時はコンビニも少なく、最寄り駅から職場までの間には1軒もありませんでした。
パン屋さんもなく、昼食を職場で食べることができません。

必然的に、外食になります。しかし、近隣のお店のランチの相場は600円~800円です。
今なら十分に安い金額ですが、当時は、自分の予算の2日分の金額です。
私の財布には厳しいです。給料日前になるといつも、財布の中はさびしい状況でした。

50円の問題

社会人1年目のある月も、給料日前はさびしい状況でした。
いよいよ、お昼ご飯を食べるお金が尽きてきました。
しかたがありません、給料日までは昼食を抜いて、1日2食で乗り切るつもりです。

しかしここで、一つの問題が出てきました。
私一人で、国の機関である市内の財務事務所というところへ外勤することになりました。

社会人1年目です。『もし、相手の方に「喫茶店でも行きましょうか。」と誘ってもらったらどうしよう。』と想像しました。
今なら分かります。国の機関の方が、書類を提出しに来た人を喫茶店に誘うことなどありません。
当時は、『何かのために、お金を持っておかないとあかんかも』と考えました。
思い切って、私のことを弟のように接して下さっている先輩のところに行きました。

私:「○○さん、財務事務所まで外勤するんやけど、何かあったらあかんので、お金貸してくれへん?帰ったら返すし。」
先輩:「なんやお金ないんか?今、なんぼ持ってるねん?」
私:「50円・・・」
先輩:「50円???お前、50円しか持たんと仕事来てるんか?!!」 
( ゚Д゚)
先輩は呆れて言葉が出てきません。
先輩は、財布から5000円を出して、私に渡してくれました。
私:「ありがとう。帰ったら返すし。」
そして、外勤に行きました。
もちろん、先方に喫茶店に誘われることもなく、お金を使わずに帰ってきました。

50円の奇跡 1つ目

職場に戻って最初に、先輩にお金を返しに行きました。

私:「ありがとう」
先輩:「おぅ(苦笑)」
そして、自分の机に戻ると、机の上に「日当」と書いた封筒があり、お金が入っていました。
私:「???」
私はちょうど1週間前に、東京へ出張をしていました。
当時は市外へ出張をすると、日当を現金で支給してもらうことができました。

日当は、出張から帰って、復命(出張報告)をすると、課の庶務を担当しているお姉さまが伝票を書いて、決裁が完了したらもらえるという流れでした。
いつもは、出張から2週間~3週間くらい後に日当が支給されました。
私は毎日、日数を指折り数えて、日当が早くもらえないかなと祈っていました。
でも、恥ずかしくてとても口には出せません。

それが、外勤から帰ってきたら、その日当が私の机の上においてあったのです!
心の中では大喜びです。
「日当?」と呟くように周りの先輩方に聞いてみました。
みんな笑っていました。そして、理由が分かりました。

私が外勤してすぐ、お金を貸してくれた先輩が大きな声でぼやいていました。
先輩:「松岡くん、50円しか持っとらへん。あいつ幾つなんや。大丈夫かホンマ~。」
周りはみんな失笑していたそうです。

先輩のボヤキを目の前で聞いていたお姉さまは、私の出張日当の伝票が回っていることを、すぐに思い出してくれました。
本来は、持ち回りなどしない日当の伝票を持って、決裁者のハンコをもらいに回ってくれました。
「松岡くん、今、50円しかお金持ってないらしい。早くハンコ押してやって!」

伝票を持ち回っているのは、課の中でも、一目も二目も置かれているお姉さまです。
あっという間に決裁がおりて、私が帰る前に日当を用意して下さっていた、と聞かせてもらいました。
感激です。お姉さまのお陰で、給料日まで食つなぐことができるようなりました。

50円の奇跡 2つ目

先輩の大声のボヤキとお姉さまが伝票を持ち回りして下さったことで、4階建ての職場内で「松岡、あいつ50円しか持ってないらしい。」との情報が、あっという間に広まってしまいました。

しかし、このことが私に、大きな変化をもたらしてくれました。

職場には、私より一回りも二回り、場合によっては三回りも年上の上役や大先輩がたくさんおられました。
私は、社会人1年目の新人です。
大先輩方には、入退勤時の挨拶と仕事上のことしか、話しかけることができません。
年の離れた先輩方への口の聞き方が分からない状態で、毎日を過ごしていました。

一方で、先輩方も同じだったそうです。
若い新人が入ってきたけれども、「どう声をかけてやったらいいかわからんなあ。」とみなさん思案して下さっていました。
意識しない間に、私と先輩方の間に垣根が出来ているという感じでした。
そこに、大先輩の間で「松岡、50円しかお金持っとらへんらしいぞ。」との情報が一気に流れました。

翌日のことです。
昼休みに、一人で廊下を歩いていると、向こうから別の部署の上役の方が歩いてこられました。
これまで、挨拶以外に言葉を交わしたこともありません。
上役は私に気がつくと、「おっ、松岡!昼飯、食べに連れってたるわ。」と誘ってくださったのです。
私:「あっ、ありがとうございます。」
これまで全く接点のなかった上役の方が食事に連れて下さるとともに、私にとっては大きな出会いが生まれました。

別の日には、仕事帰りに駅までの道をトボトボと歩いていると、突然、後ろから頭をポンっとされました。
振り返ると、別の部署の技術系の上役の方が笑って「餃子、食べて帰るか?!」と話掛けてくださいました。
「ありがとうございます!!!」
またまた、新たな交流をいただきました。
このような出来事が次から次へと続きました。

また、残業が続く時期には、先輩方は、休憩時間に夕食を食べに行かれます。
先輩方:「松岡くんも、晩ごはん、一緒に行かへんか?」
近くのお店は、夕食なら1000円近くはかかります。
私:「ありがとうございます。お腹が減っていないので、大丈夫です。」
先輩方:「(笑)。心配せんでいいからついておいで。」
先輩方は、私が晩ごはんを食べに行かない理由を察して、いつも連れ出してくれました。
そして先輩方は、代わる代わるご馳走してくださいました。

たくさんの上役や大先輩との交流が一気に増えると同時に、先輩方との垣根は、あっという間になくなっていました。
別の部署の上役や先輩方が誘って下さったことは、仕事の上でも、大いにプラスになっていきました。

奇跡を思い出して

あの時、自分のダメな部分をさらけ出して、みんなに知ってもらったことは、決してマイナスではなく、逆に、たくさんの上役や先輩方とも交流ができるようになったきっかけであり、私にとって大きなプラスだったんだとありがたく思います。

そして、今の事務所としても、情けないところ、上手くいっていないところもさらけ出した方が、みなさんにうちの事務所のことも伝わるのではないかと考えました。
これからも素直に、気取らず精進していきたいと思います。

私にとっては、奇跡のような思い出のお話でした。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。


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