はじめに(本記事の位置づけ)
本記事は、令和5年度に実施された「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」のうち、
障がい福祉サービス分について、当時公表された資料・通知を基に、勘定科目の考え方を整理したものです。
本交付金は、令和6年6月以降の障害福祉サービス等報酬改定を待たず、
人材流出防止のための緊急的な賃上げ支援として実施された制度であり、
恒常的な処遇改善加算とは性格が異なる期間限定措置でした。
なお、同趣旨の支援は令和7年度にも予定されていますが、本記事は令和5年度の実績整理としてお読みください。最新年度の情報については、制度公表後に別途整理する予定です。
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1.令和5年度 障がい福祉分・臨時特例交付金の概要
令和5年度の福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は、
障がい福祉分野においても、物価高騰や人材不足への緊急対応として実施されました。
主な特徴は次のとおりです。
- 対象:障がい福祉サービス事業所
- 目的:障がい福祉従事者の賃上げ支援
- 対象期間:令和6年2月~5月の賃上げ相当額
- 補助率:10/10
- 交付方法:
サービスごとに設定された交付率 × 総報酬額
交付は都道府県を通じて行われ、
国保連請求と連動した仕組みで算定される点が特徴です。
2.勘定科目を検討する際の前提
本交付金の勘定科目について判断が分かれやすい理由として、
次の点が挙げられます。
- 「処遇改善」を目的とし、処遇改善加算と類似した性格を持つこと
- 一方で、「交付金」として公費により支給される制度であること
- 支給額が総報酬に交付率を乗じて算定される点
このため、障がい福祉サービスにおいても、
単一の正解があるというより、整理の考え方を明確にすることが重要になります。
以下では、実務上想定される代表的な2つの考え方を示します。
3.勘定科目の考え方①
障害福祉サービス等収益として処理する考え方
1つ目は、小区分:介護給付費収益(またはそれに準ずる科目)として処理する考え方です。
| 区分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
|---|---|---|---|
| 科目名 | 障害福祉サービス等事業収益 | 自立支援給付費収益 | 介護給付費収益 訓練等給付費収益 など |
考え方の背景
- 支給額が障害福祉サービス等報酬に連動して算定されている
- 実質的に、報酬に上乗せされる形で支給されている
- 処遇改善加算と同様に、職員の賃上げに充当することが前提とされている
これらを踏まえ、
処遇改善加算と同様の考え方で収益処理を行う整理が成り立ちます。
留意点
- 交付金という名称との関係
- 他の補助金・交付金との区分
- 決算書上での説明の一貫性
法人内でこの整理を採る場合には、
処遇改善加算との関係が分かりやすく説明できるかを確認しておくことが重要です。
4.勘定科目の考え方②
補助金・交付金収益として処理する考え方
2つ目は、補助金事業収益(公費)として処理する考え方です。
| 区分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
|---|---|---|---|
| 科目名 | 障害福祉サービス等事業収益 | その他の事業収益 | 補助金事業収益 (公費) |
考え方の背景
- 制度名称が「臨時特例交付金」であること
- 国・都道府県の公費によって支給されること
- 恒常的な報酬体系とは別枠で実施された制度であること
これらを踏まえ、
処遇改善加算とは切り離して、交付金収益として整理する方法も考えられます。
留意点
- 処遇改善加算との関係が分かりにくくならないか
- 他の補助金との処理方法との整合性
- 決算書利用者への説明のしやすさ
特に、補助金が複数ある法人では、
補助金区分の整理ルールを明確にしておくことが重要です。
5.令和6年6月以降との切り分け
本交付金は、令和6年5月までの賃上げ相当額を対象とした臨時措置です。
令和6年6月以降は、障害福祉サービス等報酬改定により、
処遇改善加算の仕組みが整理・再編されています。
そのため、
- 令和5年度の臨時特例交付金
- 令和6年6月以降の処遇改善加算
を同一制度として処理しないことが、
会計処理・説明の両面で重要になります。
6.まとめ
令和5年度の福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金(障がい福祉サービス分)については、
- 障害福祉サービス等収益として整理する考え方
- 補助金・交付金収益として整理する考え方
のいずれも実務上あり得ると考えられます。
重要なのは、
- 制度の趣旨
- 処遇改善加算との関係
- 法人全体の会計方針
を踏まえ、一貫した説明ができる処理を選択することです。
なお、会計処理については、
厚生労働省や所轄庁から示される通知・指示を優先してください。
具体的な計上時期や計上金額の考え方については、
次の記事
「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方(障がい福祉サービス)」
で整理します。
関連記事
| ① | 令和5年度 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理①|勘定科目の考え方 |
| ② | 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方 |
| 参考 | ICT導入支援事業補助金の勘定科目や会計処理について |
| 参考 | 介護ロボット導入活用支援事業補助金の会計処理について |
(参考)福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の受給の仕方
交付について
厚生労働省の資料では、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金についても、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金等と近い形で交付を受ける形が示されています。
現行の福祉・介護職員処遇改善加算等と同様、障害福祉サービス等種類ごとに、福祉・介護職員数に応じて設定された一律の交付率を障害福祉サービス等報酬に乗じる形で各事業者に交付。
事業者ごとに交付される交付金額は、福祉・介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均 6,000 円(給与の約2%)の賃金引上げに相当する額になる 。
厚生労働省資料 「概要 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金(令和6年2月からの福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の交付率
に ついて)」より
計算方法
交付金は以下の計算式が示されています。
計算式
ある月の総報酬×交付率
総報酬:(「基本報酬+加算減算」×1単位の単価 )
算定式の「加算減算」には、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等加算分が含まれると示されています。
支払方法
厚生労働省の事務連絡の支払についてのポイントは下になります。
支払等のポイント
- 申請先:都道府県
- 支払者(交付者):都道府県
- 振込口座:原則 法人ごとに1口座へ振込(国保連への登録口座)
例外 都道府県の判断により事業所ごとの口座へ振込も可 - 支払時期:可能な限り早急に(対象月の介護報酬が確定した以後)
(読みやすいように改行をしています)
交付額の障害福祉サービス事業者等に対する支払(振込)については、原則として、法人ごとに一つの口座に対して行うものとする。
その際、振込先口座は、原則として、障害福祉サービス事業者等が各都道府県国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)に介護給付費等の振込先口座として登録している口座とし、各都道府県が各国保連から必要な口座情報の提供を受けることについて、別紙様式2-1を用いて、障害福祉サービス事業者等から同意を得ることとする。
ただし、民間事業者による報酬ファクタリングのサービスを利用し、介護給付費等の債権譲渡を行っている施設・事業所が交付対象施設・事業所に含まれる場合には、交付金の適正な執行の観点から、債権譲渡を行っていない施設・事業所の振込先口座又は都道府県に届け出た口座に支払(振込)を行うこととする。
また、各都道府県の判断において、施設・事業所ごとに支払を行うこととしても差し支えない。
なお、障害福祉サービス事業者等に対する支払時期・回数等については、障害福祉サービス事業者等の経営にも配慮し、各都道府県において、可能な限り早期の支払となるよう、適切な運用に努められたい。
出典:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 通知「令和5年度福祉・介護職員処遇改善支援事業の実施について」より
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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