はじめに(本記事の位置づけ)
本記事は、令和5年度(令和6年2月~5月)に実施された「介護職員処遇改善支援補助金」について、当時公表された資料・通知を基に、勘定科目の考え方を整理したものです。
本補助金は、令和6年6月以降の処遇改善加算とは性格が異なる期間限定の支援であり、会計処理においては判断に迷う点が多い制度でした。
なお、同趣旨の支援制度は令和7年度にも予定されていますが、本記事は令和5年度の実績整理としてお読みください。最新年度の情報については、制度公表後に別途整理する予定です。
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1.令和5年度 介護職員処遇改善支援補助金の概要
令和5年度の介護職員処遇改善支援補助金は、物価高や人材不足への緊急対応として実施された制度です。
令和6年2月から5月までの賃上げ相当額を対象に、都道府県を通じて交付されました。
- 対象:介護サービス事業者
- 目的:介護職員の賃上げ等による処遇改善
- 補助率:10/10
- 支給方法:サービスごとに設定された交付率 × 総報酬額
この制度は、介護報酬改定を待たずに実施された一時的措置であり、恒常的な加算制度とは異なります。
計算方法
現行の介護職員処遇改善加算等と同様、介護サービス種類ごとに、介護職員数に応じて設定された一律の交付率を介護報酬に乗じる形で各事業者に交付。
厚生労働省資料 「介護職員処遇改善支援補助金の概要 令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金の交付率について」より
補助金は以下の計算式が示されています。
計算式
ある月の総報酬×交付率
総報酬:(「基本報酬+加算減算」×1単位の単価 )
算定式の「加算減算」には、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等加算分が含まれると示されています。
2.勘定科目を考える前提
本補助金の会計処理で悩みやすい理由は、次の点にあります。
- 処遇改善を目的とし、処遇改善加算と似た性格を持つこと
- 一方で、名称は「補助金」であり、交付金的な要素もあること
- 支給額が「総報酬 × 交付率」で算定され、報酬と強く連動していること
このため、勘定科目については、一義的な正解があるというより、考え方の整理が重要になります。
以下では、実務上考えられる代表的な2つの整理方法を示します。
3.勘定科目の考え方①
介護報酬収益として処理する考え方
1つ目は、小区分:介護報酬収益(またはそれに準ずる科目)として処理する考え方です。
| 区 分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
|---|---|---|---|
| 科目名 | 介護保険事業収益 | 施設介護料収益 居宅介護料収益 地域密着型介護料収益 (サービスごとの科目) | 介護報酬収益 |
この考え方の背景
- 支給額が介護報酬に連動して算定されている
- 実質的に、処遇改善加算と同様に「報酬の上乗せ」と捉えることができる
- 職員への賃上げに充てることが前提とされている
このため、処遇改善加算と同様の整理として、
介護報酬収益の一部として処理する考え方が成り立ちます。
留意点
- 補助金という名称との関係
- 他の制度の補助金・交付金との区分・整理
- 所轄庁や監査での説明の一貫性
法人内でこの考え方を採る場合には、処遇改善加算との整理方法と整合しているかを確認しておくことが重要です。
4.勘定科目の考え方②
補助金事業収益として処理する考え方
2つ目は、補助金事業収益(公費)として処理する考え方です。
| 区分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
| 科目名 | 介護保険事業収益 | その他の事業収益 | 補助金事業収益(公費) |
この考え方の背景
- 制度名称が「支援補助金」であること
- 都道府県を通じて交付される公費であること
- 処遇改善加算とは別枠で期間を限定した補助制度として実施されたこと
これらを踏まえ、補助金として独立して収益計上する整理も、実務上は十分に考えられます。
留意点
- 処遇改善加算との関係が分かりにくくならないか
- 決算書上の表示が実態を適切に表しているか
- 同様の補助金との処理方法の統一
特に、補助金が複数存在する法人では、他の補助金との整合性も重要になります。
5.令和6年6月以降との切り分け
本補助金は、令和6年5月までの期間限定措置です。
令和6年6月以降は、介護報酬改定により処遇改善加算の仕組みが整理・再編されています。
そのため、
- 令和5年度補助金
- 令和6年6月以降の処遇改善加算
を同一の制度として扱わないことが、会計処理・説明の両面で重要です。
6.まとめ
令和5年度の介護職員処待遇改善支援補助金については、勘定科目として、
- 介護報酬収益と考える整理
- 補助金事業収益と考える整理
のいずれも実務上あり得るといえます。
重要なのは、
- 制度の趣旨
- 他の処遇改善制度との関係
- 法人全体の会計方針との整合性
を踏まえ、一貫した説明ができる処理を選択することです。
具体的な計上時期や金額の考え方については、
次の記事「令和5年度 介護職員処遇改善支援補助金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方」で整理しています。
回答(解説)は追加がある場合には分けて、記載していく予定です。
関連記事
| ① | 令和5年度 介護職員処遇改善支援補助金の会計処理①|勘定科目の考え方 |
| ② | 令和5年度 介護職員処遇改善支援補助金の会計処理②|計上時期・計上金額の考え方 |
| 参考 | ICT導入支援事業補助金の勘定科目や会計処理について |
| 参考 | 介護ロボット導入活用支援事業補助金の会計処理について |
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(参考)補助金の交付(支払方法)
厚生労働省の事務連絡の支払についてのポイントは下になります。
支払等のポイント
- 申請先:都道府県
- 支払者(交付者):都道府県
- 振込口座:原則 法人ごとに1口座へ振込(国保連への登録口座)
例外 都道府県の判断により事業所ごとの口座へ振込も可 - 支払時期:可能な限り早急に(対象月の介護報酬が確定した以後)
(4)支払について
(読みやすいように改行をしています)
補助額の介護サービス 事業者等 に対する支払(振込)については、 原則として、法人ごとに一つの口座に対して行うものとする。その際、振込先口座は、原則として、介護サービス事業者等が各都道府県国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)に介護給付費等 の振込先口座として登録している口座とし、各都道府県が各国保連から必要な口座情報の提供を受けることについて、別紙様式2-1を用いて、介護サービス事業者等から同意を得ることとする。
ただし、民間事業者による介護 報酬ファクタリングのサービスを利用し、介護給付費等の債権譲渡を行っている事業所が交付対象事業所に含まれる場合には、補助金の適正な執行の観点から、債権譲渡を行っていない事業所の振込先口座又は都道府県に届け出た口座に支払(振込)を行うこととする。
また、各都道府県の判断において、事業所ごとに支払を行うこととしても差し支えない。
なお、事業者に対する支払時期・回数等については、介護サービス事業者等の経営にも配慮し、各都道府県において、可能な限り早期の支払となるよう、適切な運用に努められたい。
出典:厚生労働省老健局老人保健課 事務連絡「令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金の実施について」より
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という考え方です。
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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