1. HOME
  2. ブログ
  3. 役員と役員会・指導監査の準備
  4. 理事会議事録の作成と保存|記載事項・署名人・省略決議のポイント

会計・法人運営の記事ブログ

会計・法人運営を支えるブログ

役員と役員会・指導監査の準備

理事会議事録の作成と保存|記載事項・署名人・省略決議のポイント

はじめに

社会福祉法人では、理事会は法人運営の中核となる重要な会議です。
そのため理事会議事録が適切に作成・保存されているかは、
指導監査でも必ず確認される重点項目です。

議事録は「作ればよい」だけでなく、

  • 記載事項に漏れがないか
  • 署名人は定款どおりか
  • 決議省略時の記録は正しいか
  • 10年間の備置きができているか
    など、細かな手続きの整備が必要です。

本記事では、社会福祉法・施行規則をもとに、
理事会議事録の作成・保存に関する実務ポイントを整理します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


本のご案内バナー 書籍版1から学べる社会福祉法人会計 全11巻をなのなのながご紹介

有料動画のご案内バナー 社会福祉法人の全体像を10分で学べるシリーズ なのなのながご紹介


1.理事会議事録の基本(社会福祉法の規定)

社会福祉法では、理事会議事録について次の点が義務付けられています。

No.要点
(1)議事録を作成する
(2)本部(主たる事務所)で10年間備え置く
(3)評議員は業務時間内いつでも閲覧・謄写できる
(4)債権者は裁判所の許可により閲覧・謄写可能
(5)法人に著しい損害のおそれがある場合は許可されない

議事録は「内部の書類」と思われがちですが、実は外部の権利行使に耐えられる内容が求められる重要書類です。


2.議事録の記載事項(施行規則の規定)

施行規則で、理事会議事録に記載すべき事項が明確に示されています。

2-1.記載事項(理事会を開催した場合)※実務で最重要

No.項目要点
日時と場所オンライン出席者がいる場合は氏名と出席方法も記載
開催事由(該当の場合)請求により開催された理事会はその旨を記載
議事の経過と結果議案内容・説明要旨・質疑応答・決議の結果
特別利害関係者該当理事の氏名、確認した旨の記録
定款の定めがある場合の出席理事理事長以外の出席理事の氏名(定款次第)
会計監査人の氏名会計監査人設置法人の場合のみ
議長の氏名議長を選出した場合に記載

🌟ポイント

  • 「議事の経過」は最もよく監査で指摘される項目です
  • 賛否のみ記録して内容が抜けているケースが多いので注意

2-2.議事録の署名人(定款に従う)

議事録の署名人は定款の規定が優先されます。

例:

  • 「出席した理事長および監事」と定めている法人
    → 理事長が欠席した場合、出席した全理事+監事全員の署名が必要

署名人の誤りは監査でも必ず指摘されるので、事務局で必ず確認します。

ポイント・議事録の署名人

理事会の議事録の署名人については、定款で定められています。定款にしたがって署名を行います。

※議事録署名人を「出席した理事長及び監事」と定款に定めている法人において、
理事長が理事会を欠席した場合には、出席した理事及び監事の全員の署名が必要になるとされています。

2-3.議事録作成者(作成責任者)

理事会の場合、
議事録の作成者(作成責任者)の記載は必須ではありません。

ただし次の場合だけは必須です。

  • 理事会決議の省略
  • 理事会報告の省略

これらは「通常の理事会ではない」ため、作成責任者の明記が必要になります。

ポイント・議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

社会福祉法施行規則では、評議員会議事録に求められている「議事録作成者(作成責任者)」の氏名の記載は、理事会においては、必ずしも求められていません。

ただし、理事会の決議を省略した場合、理事会の報告を省略した場合の議事録には「議事録作成者(作成責任者)」の記載が必要になりますので注意しましょう。


3.理事会決議の省略(みなし決議)の議事録

社会福祉法では、一般法人法を準用し、全理事・全監事の同意により理事会決議を省略できるとされています。

▼ 議事録の記載事項

No.内容
みなし決議とされた事項の内容
提案をした理事の氏名
みなし決議とされた日
議事録作成者(作成責任者)の氏名

▼ 注意点

  • 必ず全理事・全監事の同意が必要
  • 同意書・メール返信など証跡の保存が必須
  • 監事には「異議がないこと」の確認書を求める

ポイント・理事の同意を得たことの記録

理事会の決議を省略した場合には、全理事・全監事の同意書の入手や記録に注意しましょう

  • 全理事の同意書・全監事から確認書の入手(書面・または電磁的記録)
  • 全理事の同意書・全監事の確認書の備置き
  • 議事録に全理事からの同意・全監事から意義のないことの確認を得たことを記録する

※監事の確認書は「理事会決議の省略について意義のないことを確認する書類」になります。


4.理事会報告の省略(みなし報告)の議事録

次の場合も議事録の記載が必要です。

▼ 記載事項

No.内容
みなし報告とされた事項の内容
みなし報告とされた日
議事録作成者(作成責任者)の氏名

5.議事録の備置き(10年間)

社会福祉法人は、理事会議事録を主たる事務所で10年間備え置く義務があります。

「備え置く」とは

  • いつでも閲覧・謄写に応じられる状態にしておくこと
  • 見える場所に置く必要はない
  • 「どこにあるかすぐ出せる」が重要


6.議事録の閲覧・謄写の請求

  • 評議員はいつでも請求可能(業務時間内)
  • 債権者は裁判所の許可を得て請求可能
     ※法人に著しい損害のおそれがある場合は許可されない

議事録は外部公開の可能性がある書類なので、審議内容を明確に記録しておくことが大切です。

ポイント

議事録については,記載された全ての事項について,評議員や債権者等が,その関係書類と併せて内容の確認ができるよう明確に記載しておく必要があります。

まんがでポイントを押さえよう

理事会議事録

参考条文

社会福祉法

社会福祉法

(議事録等)
第四十五条の十五 社会福祉法人は、理事会の日(前条第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十六条の規定により理事会の決議があつたものとみなされた日を含む。)から十年間、前条第六項の議事録又は同条第九項において準用する同法第九十六条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその主たる事務所に備え置かなければならない。

2 評議員は、社会福祉法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
 一 議事録等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
 二 議事録等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

3 債権者は、理事又は監事の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、議事録等について前項各号に掲げる請求をすることができる。

4 裁判所は、前項の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該社会福祉法人に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、同項の許可をすることができない。

5 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第二百八十七条第一項、第二百八十八条、第二百八十九条(第一号に係る部分に限る。)、第二百九十条本文、第二百九十一条(第二号に係る部分に限る。)、第二百九十二条本文、第二百九十四条及び第二百九十五条の規定は、第三項の許可について準用する。

出典 社会福祉法より

社会福祉法施行規則

社会福祉法施行規則

(理事会の議事録)
第二条の十七 法第四十五条の十四第六項の規定による理事会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。


2 理事会の議事録は、書面又は電磁的記録をもつて作成しなければならない。


3 理事会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
 一 理事会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事又は会計監査人が理事会に出席した場合における当該出席の方法を含む。)
 二 理事会が次に掲げるいずれかのものに該当するときは、その旨
  イ 法第四十五条の十四第二項の規定による理事の請求を受けて招集されたもの
  ロ 法第四十五条の十四第三項の規定により理事が招集したもの
  ハ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第二項の規定による監事の請求を受けて招集されたもの
  ニ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第三項の規定により監事が招集したもの
 三 理事会の議事の経過の要領及びその結果
 四 決議を要する事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、当該理事の氏名
 五 次に掲げる規定により理事会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
  イ 法第四十五条の十六第四項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十二条第二項
  ロ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百条
  ハ 法第四十五条の十八第三項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百一条第一項
  ニ 法第四十五条の二十二の二において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十八条の二第四項
 六 法第四十五条の十四第六項の定款の定めがあるときは、理事長以外の理事であつて、理事会に出席したものの氏名
 七 理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称
 八 理事会の議長が存するときは、議長の氏名


4 次の各号に掲げる場合には、理事会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
 一 法第四十五条の十四第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十六条の規定により理事会の決議があつたものとみなされた場合次に掲げる事項
  イ 理事会の決議があつたものとみなされた事項の内容
  ロ イの事項の提案をした理事の氏名
  ハ 理事会の決議があつたものとみなされた日
  ニ 議事録の作成に係る職務を行つた理事の氏名
 二 法第四十五条の十四第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十八条第一項の規定により理事会への報告を要しないものとされた場合次に掲げる事項
  イ 理事会への報告を要しないものとされた事項の内容
  ロ 理事会への報告を要しないものとされた日
  ハ 議事録の作成に係る職務を行つた理事の氏名

出典:社会福祉法施行規則

次回はこのテーマです。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

ホームページの各記事や事務所サービスのご案内

よく読まれている人気の記事(カテゴリー別)


マツオカ会計事務所作成の書籍・動画・規程

20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。

▶ マツオカ会計事務所が提供する書籍・動画・規程まとめページを見る

出版中の書籍


本のご紹介 1から学べる社会福祉法人会計の執筆者 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士 松岡洋史の写真

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍のご案内

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能で、本の一部ご覧いただくことができます。

  1. 資金収支計算書 (第5版) 58ページ 1870円
  2. 事業活動計算書(第3版) 73ページ 1925円
  3. 貸借対照表 (第3版) 81ページ 1980円
  4. 経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について) 57ページ 1760円
  5. 随意契約 45ページ 1650円
  6. 注記と附属明細書 109ページ 1980円
  7. 社会福祉法人会計簿記の特徴 52ページ 1870円
  8. 社会福祉法人会計基準の逐条解説 83ページ 1980円
  9. 利益と増減差額 ~その違いからわかること~ 47ページ 1815円
  10. 現金主義と発生主義、実現主義 67ページ 1980円
  11. 社会福祉法人の減価償却 58ページ 1870円

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計


関連記事


福祉の現場を知る会計士だからこそ
誰にも真似できない実務支援を

企業主導型保育園の経理規程案の説明書の紹介画像6ページ分を記載

有料動画のご案内・社会福祉法人会計
補助金審査員経験者が伝える補助金採択されたいならこれをみて!基本編

使命を守るための戦略シリーズ(大人気シリーズ)

使命を守るための戦略シリーズ 第1回なぜ今戦略が必要とされているのか
有料動画講座 受講者の声まとめページ|補助金・会計・研修の感想を紹介
書籍型1から学べる社会福祉法人会計を説明している画像

現在の顧問公認会計士・税理士との契約はそのままに

福祉の会計・監査の対応に安心を

error: Content is protected !!