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社会福祉法人会計と制度の質問と回答

社会福祉法人での生命保険の経理処理について 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士

この記事では、社会福祉法人会計基準を基に、社会福祉法人が生命保険を加入する場合の会計処理(経理処理)について分かりやすく整理しています。


「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。
顧問先様からのメールでのご相談の中で、他の顧問先様にもご参考になりそうな内容を、ホームページでご案内しています。

この記事の目次

質問の内容

社会福祉法人で役員や職員の生命保険に加入した時の経理処理(会計処理)を教えて下さい。

ご注意

掲載している内容は、マツオカ会計事務所の顧問先の社会福祉法人様に向けた内容になっています。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


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1.はじめに

「役員や職員の生命保険に加入した場合、どの科目で処理すればよいのか?」
このご質問は、社会福祉法人からも保険会社からも非常に多く寄せられます。

ただし、社会福祉法人は
一般企業とは制度が大きく異なるため、同じ感覚で経理処理をすると誤りが生じやすい分野です。

2.一般企業(法人税法)の生命保険の経理処理

一般企業では、契約内容や被保険者区分によって、
生命保険の経理処理が大きく変わります。

  • 損金処理(支払保険料)
  • 給与課税
  • 退職金の扱い
  • 福利厚生費
  • 資産計上(保険積立金)

など、税務上の取扱いが細かく分かれています。

そのため、企業では「保険会社の案内に従って処理する」ことが一般的です。


3.社会福祉法人では、一般企業とどこが違うのか

社会福祉法人は、収入の大部分が公費(公金)であるため、
役員・職員個人の利益につながる支出を制限する規制や通知があります。

また、介護・障害・保育のどの制度に属するかで通知が異なり、
同じ「社会福祉法人」でも扱いが変わる点が大きな特徴です。

✔ 一般企業の税務処理 = 社会福祉法人の会計処理とは一致しない

これは特に誤解の多いポイントで、
保険会社の案内がそのまま使えないケースが多くあります。


4.生命保険を“経費として処理する”場合の科目

■ 会計基準における科目は「保険料」または「福利厚生費」

事業活動計算書の科目で、生命保険に関係する科目は、
事業費・事務費に「保険料」と事務費「福利厚生費」が示されています。

(資金収支計算書の科目は、保険料支出や福利厚生費支出)

厚生労働省の科目説明では次のように明記されています。

  • 保険料:生命保険料・損害保険料など
  • ただし、福利厚生費に該当するものを除く

したがって、加入目的が福利厚生の場合は
事務費・「福利厚生費」として処理します。


✔ 処理の基準(実務まとめ)

加入目的主な科目注意点
福利厚生目的福利厚生費規程整備が必要/目的が明確か
保障目的(役職者の不在時の資金リスクなど)保険料必要性の説明が求められる
受取人が法人の場合保険料会計処理より制度適合性が重要

5.生命保険を“資産計上する”場合の科目

保険会社の案内でよくあるのが
「保険積立金(資産計上)」という表現です。

しかし、社会福祉法人会計では次の点が重要です。

✔ 科目名に「積立金」は使用しない

貸借対照表では
「○○積立資産」
という科目を使います。

✔ 例

  • 保険積立資産
  • 福利厚生積立資産 など

これは、会計基準が
「将来の特定目的のために積み立てた資産」
を積立資産として位置付けているためです。


6.一般企業と社会福祉法人の違いまとめ

生命保険の経理処理でよく混乱が起きるポイントを整理すると、次のとおりです。

✔ ① 科目体系が違う

企業の「支払保険料」= 社会福祉法人の「保険料」または「福利厚生費」。

✔ ② 「保険積立金」という科目は使わない

社会福祉法人は「積立資産」を使用。

✔ ③ 税務より制度(通知・監査)の影響が大きい

社会福祉法人は公益性が高く、
「加入目的」「法人として必要か」「法令や通知に反していないか」が強く問われます。

✔ ④ 他法人の事例はあてにならない

制度・類型・所轄庁の運用が異なるため、安易な横並びは危険。他所の法人も加入しているから大丈夫という判断はお勧めしません。


7.生命保険の加入可否と会計処理の判断は“法人ごとに違う”

ここが最も重要なポイントです。

  • 自法人の制度(介護・障害・保育)
  • 通知・事務連絡
  • 所轄庁の運用
  • 福利厚生規程の有無
  • 加入目的
  • 受取人・契約形態

これらの要素で結論は大きく変わります。

そのため、
「一般企業の経理処理の感覚で処理する」
「保険会社の案内だけで判断する」

という方法は非常に危険です。


8.当事務所にご相談いただくメリット

当事務所は、社会福祉法人会計に特化して20年以上。
介護・障害・保育など幅広い法人の実務を支援してきました。

そのため、

  • 生命保険加入の可否判断
  • 会計処理(保険料/福利厚生費/積立資産)
  • 理事会説明用資料
  • 代理店側の提案段階での事前チェック
  • 指導監査リスクの事前評価

など、制度と実務の両方からサポートできます。


9.まとめ

社会福祉法人の生命保険の経理処理は、
企業会計と混同しやすい分野ですが、制度が異なるため注意が必要です。

✔ 生命保険の経理処理は「保険料」か「福利厚生費」

✔ 資産計上は「○○積立資産」を使用

✔ 加入目的・制度区分・所轄庁の運用が最重要

✔ 保険会社からの経理処理の案内(企業会計向け)をそのまま使うのは危険

✔ 専門家に確認しながら進めることが安全


10.お問い合わせ

加入可否の判断・会計処理の確認・保険会社向け解説など、
個別支援も可能です。お気軽にご相談ください。

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現在の会計事務所との契約はそのままに、セカンドオピニオンとしての相談顧問も人気です。
社会福祉法人の生命保険の加入についての記事はこちら
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企業会計と社会福祉法人会計で科目名が異なる場合

経費処理の案内で「支払保険料(損金経理)」と記載されている場合の科目(事業活動計算書の科目)

事業活動計算の科目として、事業費と事務費に「保険料」が示されています。

厚生労働省の科目説明では、下のように記載されています。

大区分事業費事務費事務費
中区分保険料保険料福利厚生費
科目説明利用者に対する損害保険料等をいう。生命保険料及び建物、車輌運搬具、器具及び備品等にかかる損害保険契約に基づく保険料をいう。
ただし、福利厚生費に該当するものを除く。

役員・職員が福利施設を利用する場合における事業主負担額、健康診断その他福利厚生のために要する法定外福利費をいう。

福利厚生費も参考に記載しています。

上記の説明から、福利厚生を目的とした保険は、福利厚生費(全額損金経理を行うことができる保険契約の場合)となります。

経費処理の案内で「保険積立金(資産計上)」と記載されている場合の科目(貸借対照表の科目)

大区分固定資産
中区分◯◯積立資産
科目説明将来における特定の目的のために積立てた現金預金等をいう。なお、積立資産の目的を示す名称を付した科目で記載する。

社会福祉法人では、資産の科目名には、「◯◯積立金」を使用せず「◯◯積立資産」という表現を使用します。

このことから、「保険積立資産」などと表示すると良いでしょう。

見解と注意

科目名について所轄庁から指示がある場合には、指示にしたがってください。

なお、無制限に生命保険が認められているものではなく、社会福祉法をはじめとした法令や厚生労働省通知、事務連絡その他において定められている要件を満たす範囲において加入が可能と考えられることにご注意ください。

(当事務所の私見であり、生命保険の加入に問題がないことを保証するものではありません。)

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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