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役員と役員会・指導監査の準備

監事の選任手続きの確認③「監事は適正な手続きにより選任されているか」社会福祉法人会計・法人運営

社会福祉法人の監事の改選期

令和7年度は、多くの社会福祉法人さんで、理事、監事の改選期になると思います。

理事の選任について正しい手続きを行い、記録がきちんと残されているか、今年度以降の指導監査に向けて準備をしていきましょう。

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適正な選任手続きを記録する書類等

監事を適正に選任したことを、記録し、保管しておく書類としては以下のようなものがあります。

NO.記 録 ・ 保 管  書  類
理事会の議事録(評議員会の議題(及び議案)を決定した理事会の議事録)
監事(候補者)について、在任中の監事の過半数の同意を得たことを証明する書類
評議員会の招集通知
評議員会の議事録
就任承諾書(及び委嘱状)

確認していきましょう。

監事の選任手続きについて

監事を選任する機関(決議)

監事を選任する機関は、社会福祉法において、評議員会と定められています。

評議員会の決議によって、監事は選任されることになります。

(役員等の選任)
第四十三条 役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
 前項の決議をする場合には、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又は定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十二条、第七十三条第一項及び第七十四条の規定は、社会福祉法人について準用する。この場合において、同法第七十二条及び第七十三条第一項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同項中「監事が」とあるのは「監事の過半数をもって」と、同法第七十四条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

出典:社会福祉法より

監事の選任までの実務の流れ

理事会(評議員会への議題及び議案の提出)

評議員会を開催し、「監事」を選任するためには、予め、理事会の決議を取った上で、

評議員に評議員会の招集の通知を行う必要があります。

(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 評議員会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する

社会福祉法より

理事会で決議する内容

評議員会を開催する場合の手続きについては、

社会福祉法が準用する「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、定められています。

理事会で決議する内容は、下のようになります。

NO.内   容
評議員会の日時及び場所
評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
評議員会の目的である事項に係る議案(当該目的である事項が議案となるものを除く。)の概要
(議案が確定していない場合はその旨。規則第2条の12)

監事の選任のために、評議員会の招集通知に記載する必要がある内容は、

「評議員会の日時や場所」と

「監事の選任について」及び「監事の候補者」(評議員会の議題及び議案)になります。

(評議員会の招集の決定)
第百八十一条 評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
 一 評議員会の日時及び場所
 二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
 三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、前条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合には、当該評議員は、前項各号に掲げる事項を定めなければならない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(社会福祉法第43条第3項において準用)

監事(候補者)について、在任中の監事の過半数の同意を得たことを証明する書類

監事(候補者)を選任する場合には、

在任中の監事の過半数から候補者についての同意を得る必要があると定められています。

その趣旨(理由)は、

「監事が理事の職務の執行(理事会の構成員として行う行為を含む。)を監査する立場にあることに鑑み、

その独立性を確保するため(「指導監査ガイドラインより」)

と説明されています。

(監事の選任に関する監事の同意等)
第七十二条 理事は、監事がある場合において、監事の選任に関する議案を社員総会に提出するには、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

そのため、評議員会に議案として提出する監事候補者を、理事会において決議する際には、

予め、在任中の監事の過半数から同意を得ておく必要があります。

監事から同意を得たこと証明する書類としては、下の書類が示されています。

NO.書   類
各監事の同意書
監事の連名による同意書
監事の選任に関する議案を決定した理事会の議事録
(当該議案に同意した監事の氏名の記載及び当該監事の署名又は記名押印があるものに限る。)

○理事会が監事の選任に関する議案を評議員会に提出するためには、監事が理事の職務の執行(理事会の構成員として行う行為を含む。)を監査する立場にあることに鑑み、その独立性を確保するため、監事の過半数(注2)の同意を得なければならず(法第43 条第3項により準用される一般法人法第72 条第1項)、指導監査を行うに当たっては、監事の過半数の同意を得ているかについて確認する。
(注2)「監事の過半数」については、在任する監事の過半数をいう。

なお、理事会が提出する議案について監事の過半数の同意を得ていたことを証する書類は、各監事ごとに作成した同意書や監事の連名による同意書の他、監事の選任に関する議案を決定した理事会の議事録(当該議案に同意した監事の氏名の記載及び当該監事の署名又は記名押印があるものに限る。)でも差し支えない。

出典:「厚生労働省 指導監査ガイドライン 5監事(2)選任及び解任」より

監事の過半数について

法人の監事が2名の場合には、過半数は2名になります。

過半数とは:全体の半分よりも多い数(出典「デジタル大辞泉」小学館より)

招集通知

評議員会を開催する場合には、原則として開催の1週間前、または定款で定める期間までに

評議員に対して書面にて通知を発送する必要があります。

適正に招集の通知を行ったことの記録として、招集通知を保管しておきましょう。

(評議員会の招集の通知)
第百八十二条 評議員会を招集するには、理事(第百八十条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合にあっては、当該評議員。次項において同じ。)は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない。
2 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
3 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

(招集手続の省略)
第百八十三条 前条の規定にかかわらず、評議員会は、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

なお、評議員全員の同意がある場合には、一定の場合には、招集の通知を省略することができます。

招集の通知を省略した場合には、(招集通知の代わりに)

評議員全員が同意したことを、客観的に確認できる書類を保管しておく必要があります。

また、招集の通知を省略した場合にも、評議員会の開催についての理事会決議は必要となることに

注意しましょう。

なお、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく評議員会を開催することができることとされており(法第45 条の9第10 項により準用される一般法人法第183 条)、この場合には招集の通知を省略できるが、評議員会の日時等に関する理事会の決議は省略できないことに留意するとともに、評議員全員の同意があったことが客観的に確認できる書類の保存が必要である。

出典:「厚生労働省 指導監査ガイドライン 3評議員・評議員会(2)評議員会の招集・運営」より

評議員会(監事の選任)

評議員会において、適正に監事を選任したことを、議事録に記録しておく必要があります。

評議員会の決議については、こちらの記事に記載しています。

監事の就任承諾書

選任された監事から「就任承諾書」を受領し、保管しておくことが大切になります。

法人から「委嘱状」を交付している場合には「委嘱状(控)」とともに保管しておきましょう。

社会福祉法人と監事の関係

社会福祉法人と監事との関係は、委任関係になります。

(社会福祉法人と評議員等との関係)
第三十八条 社会福祉法人と評議員、役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

社会福祉法より

委任関係について

委任の関係については、法人から相手方(監事)へ委任し、相手方(監事)が承諾することにより、

委任関係が成立するとされています。

法人からの委任を「委嘱状」として

相手方からの承諾を「就任承諾書」として、書面に残して、保管しておくことが大切です。

(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法

(参考)厚生労働省の指導監査ガイドラインでは、「就任承諾書」について、以下のように示されています。

○ 法人と監事との関係は、評議員や理事と同様に、委任に関する規定に従う(法第38 条)。

そのため、評議員会により選任された者が就任を承諾することで、その時点(承諾のときに監事の任期が開始していない場合は任期の開始時)から監事となることから、この就任の承諾の有無についての指導監査を行うに当たっては、監事の役割の重要性に鑑み、文書による確認(就任承諾書の徴収等)によって行う必要があり、当該文書は法人において保存される必要がある。

なお、監事の選任の手続において、選任された者に対する委嘱状による委嘱を行うことが必要とされるものではないが、法人において、選任された者に委嘱状により監事に選任された旨を伝達するとともに、就任の意思の確認を行うことは差し支えない。

出典:「厚生労働省 指導監査ガイドライン 5監事(2)選任及び解任」より

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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。



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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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