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質問と回答

「厚生労働省の分析スコアカードとは?社会福祉法人が押さえておきたい4つの視点」財務諸表等開示システム

「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。
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質問の内容

財務諸表等電子開示システムから取得できるようになった「分析用スコアカード」の読み方を分かりやすく教えてください。

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厚生労働省からの通知について

令和7年10月1日付で厚生労働省より、「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」において、各法人の財務指標を自動計算した 分析用スコアカードが提供されるようになりました。
これにより、各法人は自分たちの財務状況を客観的に把握しやすくなります。

スコアカードでは、主要6指標評価の視点(5分類)に基づいて、法人の財務状況を総合的にチェックできます。

① 主要6指標

厚労省が示す「主要6指標」は次のとおりです。それぞれに固い説明とやわらかい説明を並べています。

  • 経常増減差額率
    法人の収益性を理解する上での基本指標。
    → 毎日の事業が黒字か赤字かを示す。
  • 流動比率
    短期支払い義務に対する支払能力を示す指標。
    → 急な支払いに耐えられるかを見る。
  • 固定長期適合率
    固定資産整備に関わる資金調達のバランスを示す指標。
    → 建物や設備を無理のないお金でまかなえているか。
  • 借入金償還余裕率(負担率)
    元利金返済の負担の大きさを示す指標。
    → 借金の返済が家計の重荷になっていないか。
  • 事業活動資金収支差額率
    当年度の資金収入と資金支出のバランスを示す指標。
    → その年の家計簿が黒字か赤字か。
  • 正味金融資産額・減価償却累計額比率
    将来の設備更新に備えた資金の蓄積度合いを示す指標。
    → 次の建物や設備を買い替えるための貯金があるかどうか。

② 5つの評価視点

スコアカードでは、主要6指標をもとに、次の5つの観点で評価します。

1. 収益性

固い説明: 事業からどれだけ利益や資金を生み出しているかを示す。
やわらかい説明: しっかり稼いで黒字を出せているか。
例: 経常増減差額率がマイナスなら「本業が赤字」、プラスなら「お金を残せている」。

2. 安定性・持続性

固い説明: 短期的な支払い能力と、長期的な安定性を測る。
やわらかい説明: 倒れない力と、将来も続けられる力。
例:
・流動比率が200%以上 → 「すぐの支払いに強い」
・借入金償還余裕率が100%未満 → 「返済に余裕がある」
・固定長期適合率が100%未満 → 「建物や設備を無理のない資金でまかなえている」
・正味金融資産が積み上がっている → 「将来の設備更新に備えている」

3. 合理性

固い説明: 費用の配分が適正かを測る。
やわらかい説明: お金の使い方がバランスよいか。
例:
・人件費比率が高すぎる → 「収益の規模に対して、職員の給与の負担が大きくなっている」
・事務費比率が高い → 「事務コストがかかりすぎている」

4. 効率性

固い説明: 人材や設備を効率的に使って成果を上げているかを測る。
やわらかい説明: 同じ人数や施設で、どれだけ多くの利用者にサービスを提供できているか。
例: 職員1人あたり収益が高ければ「少人数で成果を出している」、低ければ「人や設備を持て余している」。

5. 経営自立性

固い説明: 補助金や寄附金に頼らず、自前の収益でどこまで運営できているかを測る。
やわらかい説明: 自力で立つ力。外部の支援がなくてもやっていける力。
例: 自己収益比率が高い → 「補助金が減っても安定して続けられる法人」、低ければ「補助金次第で運営が揺らぎやすい法人」。

③ 一般的な財務分析の3分類

スコアカードに加えて、会計学や金融機関では伝統的に次の3分類で法人を見ています。

  • 安全性(Safety)
    倒れない力。資金繰りや返済能力の安定性。
    → 家計でいうと「貯金や現金が足りているか」。
  • 収益性(Profitability)
    稼ぐ力。黒字を出し、資金を積み上げられる体質。
    → 家計でいうと「毎月黒字になっているか」。
  • 生産性(Productivity)
    効率の力。限られた人員や資源で成果を上げられるか。
    → 家計でいうと「同じ働きでより多くの収入を得られているか」。

まとめ

厚生労働省が提供するスコアカードは、法人の財務状況を「見える化」するツールです。
資金繰りの安定性、黒字化の余力、将来への備え、自立性の高さなどを一目で確認できます。
理事会や監事監査でも共通の理解を持つために、このスコアカードを積極的に活用していきましょう。

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

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