1. HOME
  2. ブログ
  3. 役員と役員会・指導監査の準備
  4. 評議員会の招集手続き|理事会での決議・通知期限・省略要件まで実務で押さえるポイント

会計・法人運営の記事ブログ

会計・法人運営を支えるブログ

役員と役員会・指導監査の準備

評議員会の招集手続き|理事会での決議・通知期限・省略要件まで実務で押さえるポイント

はじめに

社会福祉法人では、決算承認や役員の選任など、
法人の重要事項を決定するために 評議員会 を開催します。

評議員会を適正に開催するためには、

  • 理事会での招集決議
  • 評議員への招集通知
  • 通知期限(原則1週間前)
  • 全員同意による招集手続きの省略
    など、法令に基づく手続きが必要です。

これらは、指導監査で必ず確認される重要項目です。

本記事では、社会福祉法および一般法人法の規定に沿って、
評議員会の招集手続きの実務をわかりやすく整理します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui


本のご案内バナー 書籍版1から学べる社会福祉法人会計 全11巻をなのなのながご紹介

有料動画のご案内バナー 社会福祉法人の全体像を10分で学べるシリーズ なのなのながご紹介


1.評議員会の開催時期

社会福祉法 第45条の9により、
定時評議員会は、毎会計年度終了後の一定の時期に招集する
と定められています。

多くの法人では、定款に
「毎年度○月(または終了後3か月以内)に開催」
といった定めが置かれています。

✔ 多くの法人では、6月末までに定時評議員会を開催します。

法人の定款(例)

第11条 評議員会は、定時評議員会として毎年度○月(「毎会計年度終了後3ヶ月以内」)に1回開催するほか、必要がある場合に開催する。

出典:厚生労働省「社会福祉法人定款例」より

2.評議員会を招集する理事会決議(必須)

評議員会を開催するには、
まず理事会で“評議員会を招集する”ことを決める必要があります。

評議員会の招集権者は、社会福祉法により次のように定められています。

(社会福祉法 第45条の9 第3項)
評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事が招集する。

定款では、
「理事会の決議に基づき理事長が招集する
という記載になっていることが多いです。

法人の定款(例)

第12条 評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事会の決議に基づき理事長が招集する。

出典:厚生労働省「社会福祉法人定款例」より

2-1.理事会が決議すべき内容

一般法人法 第181条により、理事会が決めるべき事項は次の3点です。

No決議すべき項目
評議員会の日時および場所
評議員会で審議する事項(議題)
議題に関する議案(提案内容)

▼ 議題と議案のイメージ

  • 議題:評議員会で扱うテーマ
    • 例:「理事の選任について」
  • 議案:具体的な提案内容
    • 例:「理事に〇〇氏を選任する件」

✔ 評議員会に提出する議題・議案は、必ず理事会で事前に決議しておく必要があります。


3.評議員会の招集通知(原則1週間前)

理事会で招集を決定した後、評議員に対して招集通知を送付します。

一般法人法 第182条により、
評議員会の日の1週間前までに通知を発する
ことが必要です。

定款で短縮している場合は、その期間に従います。

▼ 通知方法

  • 書面(郵送 等)
  • 電磁的方法(メール等)
    ※電磁的方法は評議員の承諾が必要

▼ 通知に記載すべき事項

  • 日時
  • 場所
  • 議題
  • 議案の概要

✔ 書面の場合は郵便の発送記録、メールの場合は送信履歴など、「いつ発出したか」が確認できる証跡を保存しておく必要があります。


4.招集手続きの省略(全員同意の場合)

一般法人法 第183条では、
評議員全員の同意がある場合は、招集手続きを省略できる
とされています。

ただし注意点があります。

▼ 省略できるのは「通知」のみ

理事会による

  • 日時
  • 場所
  • 議題
  • 議案
    の決議は省略できません。

▼ 全員同意の証拠が必要

  • 書面での同意
  • メールでの同意
  • その他、同意が確認できる記録

いずれも、後日説明できる形で保存しておくことが重要です。


5.招集手続きで押さえる実務ポイント(チェックリスト)

  • 理事会で開催日時・場所・議題・議案を決議しているか
  • 決議内容が議事録に記録されているか
  • 評議員会の1週間前までに通知を発出しているか
  • 書面・メール等の「発出証拠」を保存しているか
  • 全員同意で省略する場合、その記録を保存しているか

参考条文

評議員会の招集

(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。

社会福祉法

理事会で決議する事項(評議員会の招集)

社会福祉法が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(評議員会の招集の決定)
第百八十一条 評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 評議員会の日時及び場所
二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、前条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合には、当該評議員は、前項各号に掲げる事項を定めなければならない。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

招集通知及び招集手続きの省略

社会福祉法が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(評議員会の招集の通知)
第百八十二条 評議員会を招集するには、理事(第百八十条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合にあっては、当該評議員。次項において同じ。)は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない。
 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

(招集手続の省略)
第百八十三条 前条の規定にかかわらず、評議員会は、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

郵送簿の作成

郵送簿などを作成されていない法人さんもあるかもしれません。郵便の発送記録を帳簿の形にして残していきましょう。

次回はこのテーマです。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

ホームページの各記事や事務所サービスのご案内

よく読まれている人気の記事(カテゴリー別)


マツオカ会計事務所作成の書籍・動画・規程

20年間の社会福祉法人・福祉事業者の支援と、11年間の地方公務員の行政事務で培ったノウハウを 書籍・動画・規程 として公開しています。
ご自身で学び、法人内で活かせるコンテンツをご用意していますので、ぜひご覧ください。

▶ マツオカ会計事務所が提供する書籍・動画・規程まとめページを見る

出版中の書籍


本のご紹介 1から学べる社会福祉法人会計の執筆者 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士 松岡洋史の写真

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍のご案内

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能で、本の一部ご覧いただくことができます。

  1. 資金収支計算書 (第5版) 58ページ 1870円
  2. 事業活動計算書(第3版) 73ページ 1925円
  3. 貸借対照表 (第3版) 81ページ 1980円
  4. 経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について) 57ページ 1760円
  5. 随意契約 45ページ 1650円
  6. 注記と附属明細書 109ページ 1980円
  7. 社会福祉法人会計簿記の特徴 52ページ 1870円
  8. 社会福祉法人会計基準の逐条解説 83ページ 1980円
  9. 利益と増減差額 ~その違いからわかること~ 47ページ 1815円
  10. 現金主義と発生主義、実現主義 67ページ 1980円
  11. 社会福祉法人の減価償却 58ページ 1870円

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

関連記事


福祉の現場を知る会計士だからこそ
誰にも真似できない実務支援を

企業主導型保育園の経理規程案の説明書の紹介画像6ページ分を記載

有料動画のご案内・社会福祉法人会計
補助金審査員経験者が伝える補助金採択されたいならこれをみて!基本編

使命を守るための戦略シリーズ(大人気シリーズ)

使命を守るための戦略シリーズ 第1回なぜ今戦略が必要とされているのか
有料動画講座 受講者の声まとめページ|補助金・会計・研修の感想を紹介
書籍型1から学べる社会福祉法人会計を説明している画像

現在の顧問公認会計士・税理士との契約はそのままに

福祉の会計・監査の対応に安心を

error: Content is protected !!