評議員会の招集手続き|理事会での決議・通知期限・省略要件まで実務で押さえるポイント
はじめに
社会福祉法人では、決算承認や役員の選任など、
法人の重要事項を決定するために 評議員会 を開催します。
評議員会を適正に開催するためには、
- 理事会での招集決議
- 評議員への招集通知
- 通知期限(原則1週間前)
- 全員同意による招集手続きの省略
など、法令に基づく手続きが必要です。
これらは、指導監査で必ず確認される重要項目です。
本記事では、社会福祉法および一般法人法の規定に沿って、
評議員会の招集手続きの実務をわかりやすく整理します。
本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。
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1.評議員会の開催時期
社会福祉法 第45条の9により、
定時評議員会は、毎会計年度終了後の一定の時期に招集する
と定められています。
多くの法人では、定款に
「毎年度○月(または終了後3か月以内)に開催」
といった定めが置かれています。
✔ 多くの法人では、6月末までに定時評議員会を開催します。
法人の定款(例)
第11条 評議員会は、定時評議員会として毎年度○月(「毎会計年度終了後3ヶ月以内」)に1回開催するほか、必要がある場合に開催する。
出典:厚生労働省「社会福祉法人定款例」より
2.評議員会を招集する理事会決議(必須)
評議員会を開催するには、
まず理事会で“評議員会を招集する”ことを決める必要があります。
評議員会の招集権者は、社会福祉法により次のように定められています。
(社会福祉法 第45条の9 第3項)
評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事が招集する。
定款では、
「理事会の決議に基づき理事長が招集する」
という記載になっていることが多いです。
法人の定款(例)
第12条 評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事会の決議に基づき理事長が招集する。
出典:厚生労働省「社会福祉法人定款例」より
2-1.理事会が決議すべき内容
一般法人法 第181条により、理事会が決めるべき事項は次の3点です。
| No | 決議すべき項目 |
|---|---|
| ① | 評議員会の日時および場所 |
| ② | 評議員会で審議する事項(議題) |
| ③ | 議題に関する議案(提案内容) |
▼ 議題と議案のイメージ
- 議題:評議員会で扱うテーマ
- 例:「理事の選任について」
- 議案:具体的な提案内容
- 例:「理事に〇〇氏を選任する件」
✔ 評議員会に提出する議題・議案は、必ず理事会で事前に決議しておく必要があります。
3.評議員会の招集通知(原則1週間前)
理事会で招集を決定した後、評議員に対して招集通知を送付します。
一般法人法 第182条により、
評議員会の日の1週間前までに通知を発する
ことが必要です。
定款で短縮している場合は、その期間に従います。
▼ 通知方法
- 書面(郵送 等)
- 電磁的方法(メール等)
※電磁的方法は評議員の承諾が必要
▼ 通知に記載すべき事項
- 日時
- 場所
- 議題
- 議案の概要
✔ 書面の場合は郵便の発送記録、メールの場合は送信履歴など、「いつ発出したか」が確認できる証跡を保存しておく必要があります。
4.招集手続きの省略(全員同意の場合)
一般法人法 第183条では、
評議員全員の同意がある場合は、招集手続きを省略できる
とされています。
ただし注意点があります。
▼ 省略できるのは「通知」のみ
理事会による
- 日時
- 場所
- 議題
- 議案
の決議は省略できません。
▼ 全員同意の証拠が必要
- 書面での同意
- メールでの同意
- その他、同意が確認できる記録
いずれも、後日説明できる形で保存しておくことが重要です。
5.招集手続きで押さえる実務ポイント(チェックリスト)
- 理事会で開催日時・場所・議題・議案を決議しているか
- 決議内容が議事録に記録されているか
- 評議員会の1週間前までに通知を発出しているか
- 書面・メール等の「発出証拠」を保存しているか
- 全員同意で省略する場合、その記録を保存しているか
参考条文
評議員会の招集
(評議員会の運営)
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。
社会福祉法
理事会で決議する事項(評議員会の招集)
社会福祉法が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(評議員会の招集の決定)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百八十一条 評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 評議員会の日時及び場所
二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 前項の規定にかかわらず、前条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合には、当該評議員は、前項各号に掲げる事項を定めなければならない。
招集通知及び招集手続きの省略
社会福祉法が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(評議員会の招集の通知)
第百八十二条 評議員会を招集するには、理事(第百八十条第二項の規定により評議員が評議員会を招集する場合にあっては、当該評議員。次項において同じ。)は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない。
2 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
3 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。(招集手続の省略)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第百八十三条 前条の規定にかかわらず、評議員会は、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
郵送簿の作成
郵送簿などを作成されていない法人さんもあるかもしれません。郵便の発送記録を帳簿の形にして残していきましょう。
次回はこのテーマです。
- 理事の選任手続きの確認 「理事の資格要件の確認手続き」
- 法人運営・指導監査の準備の記事の一覧はこちら
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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