理事会は適正に決議されているかの確認 社会福祉法人会計・法人運営
理事会決議のポイント
理事会の決議と出席者数
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 定足数 | 決議に必要な数の理事が出席しているか |
② | 決議 | 決議に必要となる数の理事が賛成しているか |
理事会の決議事項
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 決議事項 | 理事会の決議が必要となる事項を決議しているか |
特別利害関係者
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 特別利害関係者 | 決議について特別の利害関係を有する理事が決議に加わっていないか |
評議員の選任・解任決議
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 評議員の選任・解任 | 評議員の選任・解任について、定款で定めた方法(評議員選任・解任委員会等)による決議を行わずに、理事会決議で行っていないか。 |
書面決議
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 書面決議 | 理事会決議を書面で行っていないか |
社会福祉法の確認
理事会の招集手続きについては、社会福祉法及び定款(例)を確認してみましょう。
理事会の決議と出席者数
社会福祉法の規定では、下のようになっています。
NO. | 区 分 | 要 件 |
---|---|---|
① | 定足数 | 決議に加わることができる理事の過半数 |
② | 決議 | ①の過半数の賛成 |
ただし、法人の定款で「定足数」や「決議に必要な賛成の数」を過半数以上の数として定めた場合には、定款の規定による理事の数の出席や賛成が必要になります。
(理事会の運営)
社会福祉法より
第四十五条の十四
(省略)
4 理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
理事会の決議事項
理事会で決議すべき事項は下のようになります。
社会福祉法人で、理事長等に決定(権限)を委ねることなく、理事会において決議が必要になります。
NO. | 理事会で決議すべき議題 |
---|---|
① | 理事長及び業務執行理事の選定及び解職 |
② | 評議員会の日時及び場所並びに議題・議案の決定 |
③ | 重要な財産の処分及び譲受け |
④ | 多額の借財 多額の借財についてはこちら |
⑤ | 重要な役割を担う職員の選任及び解任 |
⑥ | 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 |
⑦ | 内部管理体制の整備(特定社会福祉法人のみ) |
⑧ | 役員、会計監査人の責任の一部免除(定款に定めがある場合) |
⑨ | 役員、会計監査人に対する補償契約及び役員、会計監査人のために締結される保険契約の内容の決定 |
⑩ | 競業及び利益相反取引の承認 |
⑪ | 評議員会へ議題を提出する計算書類及び事業報告、社会福祉充実計画等の承認 |
⑫ | その他重要な業務執行の決定(理事長等に権限移譲(委任)されていない業務執行の決定) |
(理事会の権限等)
第四十五条の十三 理事会は、全ての理事で組織する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 社会福祉法人の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 理事長の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
4 理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 重要な役割を担う職員の選任及び解任
四 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他社会福祉法人の業務の適正を
確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制の整備
六 第四十五条の二十二の二において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百十四条第一項の
規定による定款の定めに基づく第四十五条の二十第一項の責任の免除5 その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人においては、理事会は、前項第五号に掲げる事項を決定しなければならない。
(評議員会の運営)
社会福祉法より
第四十五条の九 定時評議員会は、毎会計年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 評議員会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 評議員会は、第五項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。
特別利害関係者
特別の利害関係者の決議への参加
理事会の決議を行う際には、当該決議(議案)に特別の利害関係を有する理事は、決議に参加することができません。
(理事会の運営)
社会福祉法より
第四十五条の十四
(省略)
4 理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
5 前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
特別の利害関係とは
特別の利害関係とは、理事が法人に対して忠実に業務を行うことが困難と認められる利害関係を指すと示されています。
決議の具体例としては、下のものが示されています。
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 理事の競業取引の承認 | 理事が自己又は第三者のために当該法人の事業に属する取引を行うこ |
② | 利益相反取引の承認 | 理事が自己又は第三者のために法人と取引を行うこと |
③ | 損害賠償責任の一部免除 | 理事の職務上の損害賠償責任の一部を免除する場合 |
特別の利害関係のないことの確認
理事会の決議では、決議に特別の利害関係がないことを確認した記録が必要になります。
NO. | 区 分 | 内 容 |
---|---|---|
① | 原則的な方法 | 議題ごとに特別の利害関係の有無を確認し 理事会議事録に特別の利害関係について確認を行った旨の記録 |
② | 別の方法(1) | 理事会の招集通知に、特別の利害関係がある場合には申し出るように記載した時に、 申し出がない場合(特別の利害関係者がいない場合)には、議事録への記載は不要。 |
③ | 別の方法(2) | 理事の職務執行などを定めた法人の規程の中に、「議題について特別の利害関係がある場合には申し出なければならないと定めている場合」 申し出がない場合(特別の利害関係者がいない場合)には、議事録への記載は不要。 |
指導監査ガイドラインを確認してみましょう。
○ 理事会の決議には、決議に特別の利害関係(注1)を有する理事が加わることができない(法第45 条の14 第5項)。理事会の決議に特別の利害関係を有している理事が加わっていないかについての確認は法人において行われる必要があり、その確認が行われているかについて指導監査で確認する。この確認は原則として議事録で行うものであるが、当該理事会の議案について特別の利害関係を有する場合には、法人に申し出ることを定めた通知を発出した場合や、理事の職務の執行に関する法人の規程に、理事が理事会の決議事項と特別の利害関係を有する場合に届け出なければならないことを定めている場合は、個別の議案の議決の際に法人で改めてその確認を行う必要はなく、決議に利害関係を有する理事がいない場合には、議事録への記載も不要であることに留意が必要である。
(注1)「特別の利害関係」とは、理事が、その決議について、法人に対する忠実義務(法第45 条の16 第1項)を履行することが困難と認められる利害関係を意味するものであり、「特別の利害関係」がある場合としては、理事の競業取引(注2)や利益相反取引(注3)の承認(法第45 条の16 第4項により準用される一般法人法第84 条第1項)や理事の損害賠償責任の一部免除の決議(法第45 条の20 第4項により準用される一般法人法第114 条第1項(法人の定款に規定がある場合に限る。))等の場合がある。
出典 厚生労働省 指導監査ガイドライン 「6 理事(1)審議状況」より
(注2)理事が自己又は第三者のために当該法人の事業に属する取引を行うこと
(注3)理事が自己又は第三者のために法人と取引を行うこと
評議員の選任・解任
社会福祉法人では、理事会で、評議員の選任や解任を行うことは認められていません。
法人の定款で、理事会で評議員の選任や解任を行うと定めている場合には、定款は無効となります。
評議員の選任・解任については、定款で定めた方法(評議員選任・解任委員会等)による決議を行います。
第二節 設立
(申請)第三十一条 社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。
(省略)
五 評議員及び評議員会に関する事項(省略)
5 第一項第五号の評議員に関する事項として、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定めは、その効力を有しない。
社会福祉法より
書面決議
書面決議については、可否の認識が、書面を決議の省略と混同しやすく感じます。
整理をしてみましょう。
理事会決議の方法として認められているものは、書面による同意に基づく決議の省略であり、書面決議は認められていません。
NO. | 区 分 | 可 否 | 理事全員の事前の同意の方法 |
---|---|---|---|
① | 書面決議 | × | - |
② | 決議の省略(※) | ○(可能) | 書面・電磁的記録(10年間保管) |
「社会福祉法」及び社会福祉法が準用する「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」には、書面決議を認める定めはありません。
一方で、書面による理事全員の事前の同意がある場合に、理事会の可決があったものみなし、理事会決議を省略することができます。この場合には、法人の定款に理事会決議の省略の定めが必要です。
(理事会の運営)
社会福祉法より
第四十五条の十四
(省略)
9 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十四条の規定は理事会の招集について、同法第九十六条の規定は理事会の決議について、同法第九十八条の規定は理事会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
(理事会の決議の省略)
第九十六条 理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
出典:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
指導監査ガイドラインを確認してみましょう。
○平成28 年改正法の施行前は、定款に定めることにより、欠席した理事の書面による議決権の行使(書面議決)が認められていたが、平成28 年改正法の施行後は、理事会における議決は対面(テレビ会議等によることを含む。)により行うこととされており、書面議決の方法によることはできなくなっている。書面による議決権の行使がなされた場合にはその取扱いを是正する必要があり、指導監査を行うに当たってはこの書面議決がなされていないかを確認する。
○ 理事会の議案について、理事の全員の事前の同意の意思表示がある場合には理事会の議決を省略することは認められているため、定款において決議の省略の定めがある場合には、理事の全員の事前の同意の意思表示により、当該議案について理事会の決議があったとみなされる(法第45 条の14 第9項により準用される一般法人法第96 条)。この場合には、理事会の決議が省略されたことが理事会議事録の記載事項となり(規則第2条の17 第4項第1号)、理事の全員の意思表示を記す書面又は電磁的記録は、決議があったとみなされた日から10 年間主たる事務所に備え置かなければならない(法第45 条の15 第1項)(指導監査における取扱いについては、6の(2)記録を参照)。また、当該提案について監事が異議を述べたときは、決議要件を満たさないため、監事からも事前に同意の書面を徴収することが望ましい。
出典 厚生労働省 指導監査ガイドライン 「6 理事(1)審議状況」より
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