基本財産(定期預金)|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と考え方
はじめに
社会福祉法人が保有する資産は、その性質に応じて
基本財産、その他財産、公益事業用財産、収益事業用財産
に区分されます。(社会福祉法人審査基準上の資産の分類になります。)
このうち 基本財産 は、
法人が社会福祉事業を継続して行うための
存続の基礎となる資産 として位置づけられています。
基本財産(定期預金)は、
定款等により基本財産として位置づけられた定期預金を指し、
不動産以外の資産で基本財産を構成する代表的な科目です。
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厚生労働省の勘定科目の説明
(基本財産)定期預金
出典:「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
定款等に定められた基本財産として保有する定期預金をいう。
基本財産(定期預金)は、
法人の任意で設定される場合もあれば、
審査基準に基づき保有が求められる場合もあります。
基本財産に位置づけられる定期預金
社会福祉法人審査基準では、
社会福祉施設を経営する法人について、
次のような考え方が示されています。
- 社会福祉施設の用に供する不動産は、原則として基本財産とする
- すべての施設の不動産が国や地方公共団体から貸与・使用許可を受けている場合には、
一定額以上の資産(現金、預金、確実な有価証券、不動産)を
基本財産として保有することが求められる
この「一定額以上の資産」の中に、
定期預金 が含まれています。
そのため、
法人設立時や施設整備時に、
- 寄付金を原資として
- 法人の安定的な運営資金として
定期預金を基本財産に組み入れるケースが多く見られます。
基本財産としての位置づけと制限
基本財産は、
法人存続の基礎となる資産であることから、
- 処分
- 担保提供
- 用途変更
を行う場合には、
定款の変更や
社会福祉法に基づく 所轄庁の承認 が必要となります。
この点は、
その他財産として保有する預金との
大きな違いです。
会計上の取扱い
基本財産(定期預金)は、
日常的に入出金が発生する性質のものではありません。
そのため、
- 期中は取引が発生しないことが多い
- 長期間にわたり、残高が変わらないケースもある
という特徴があります。
ただし、
会計帳簿上の動きが少ないからといって、確認が不要になるわけではありません。
残高確認と管理
基本財産(定期預金)については、
少なくとも 決算時には必ず残高を確認 しておく必要があります。
具体的には、
- 金融機関から残高証明書を取得する
- 帳簿残高と一致しているかを確認する
といった手続を行います。
また、
定期預金の通帳や証書、金融機関との契約書類については、
法人として適切に管理・保管しておくことが重要です。
受取利息の計上
定期預金の利息は、
契約内容により、次のような形で処理されます。
- 普通預金口座に利息が入金される場合
- 定期預金口座に利息が組み入れられる場合
普通預金口座に入金される場合は、
日常の入出金処理の中で把握しやすい一方、
定期預金口座に組み入れられる場合は、
受取利息の計上が漏れやすい という特徴があります。
そのため、
残高証明書の確認を通じて、
- 利息の発生有無
- 帳簿への反映状況
をあわせて確認しておくことが重要です。
まとめ
基本財産(定期預金)は、
- 定款等により基本財産として位置づけられた定期預金であること
- 法人存続の基礎となる重要な資産であること
- 処分や担保提供に制限があること
- 日常的な動きが少なくても、決算時の確認が欠かせないこと
これらを整理して理解しておくことで、
決算や監査、所轄庁対応の場面でも、
落ち着いて説明しやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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