マツオカ会計事務所

有価証券|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と実務のポイント

有価証券(債券・株式・投資信託)の基本と実務ポイントを示す図(社会福祉法人会計)

はじめに

社会福祉法人では、預金だけでなく、
債券や投資信託などの「有価証券」を保有するケースも見られるようになりました。
ただし、有価証券は性質が多様でリスクの幅も大きいため、
預金とは別の慎重さが求められる科目です。

特に、


※本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、厚生労働省の科目定義に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。

「ホームページ利用上のご注意について」をお読み頂き、これらの条件にご同意の上ご利用ください。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui





1. 厚生労働省の定義

有価証券
債券(国債、地方債、社債等をいい、譲渡性預金を含む)のうち貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に満期が到来するもの、又は債券、株式、証券投資信託の受益証券などのうち時価の変動により利益を得ることを目的とする有価証券をいう。

出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について

このとおり、有価証券には次の2種類が含まれます。

いずれも「預金とは異なる性質」を持つため、
実務でも取扱いに注意が必要です。


2. 実務で押さえておきたいポイント

① 満期1年以内かどうかで区分が変わる

債券は、
満期までの期間で科目区分や管理方法が変わります。

「買った時点では長期 → 年度末に1年以内に入る」ケースもあるため、
毎年の確認が欠かせません。


② 株式や投資信託は“時価変動リスク”を前提に

有価証券の中で実務負担が大きくなるのが、
投資信託・株式など時価が変動する商品です。

こうした項目があるため、
預金や定期預金と同じ感覚では扱えません。


③ 投資の判断は「法人としての方針」が必要

厚生労働省の過去通知では、
有価証券の管理は “安全確実で換金性の高い方法を基本” と示されています。

「特に適正を期する必要があるため、安全確実で換金自由な方法によること」
(昭和56年通知より)

古い通知ですが、
運用リスクに対する慎重姿勢は現在も変わりません。

こうした点を整理したうえで、資金運用規程等を整備するとともに
理事会・評議員会などで売買等の承認や運用状況の報告をしておくことが重要です。

(参考)
運営費の管理、運用については、それが公金を主たる財源としている関係上、特に適正を期する必要があるので、その管理、運用に当たっては銀行、郵便局等への預貯金等安全確実で、かつ、換金自由な方法により行うよう指導されたいこと。

出典 社会福祉施設における運営費の運用及び指導について

3. 現場で見かける状況

訪問の際、投資信託の報告書が数枚まとめて机の上に置かれていて、
担当者さんが翌月の残高表と数字を照らし合わせている場面を見かけることがあります。

こうした作業が、預金と比べるとどうしても増えます。

そのため、
実務が混乱しないように、
「何をどの目的で保有しているのか」が明確であること
現場の負担を軽くするポイントになります。


4. 監査でよく確認される点

有価証券は預金よりも専門的な確認項目が増えるため、
事前の方針整理と資料の整備が重要になります。


5. 関連科目(内部リンク案)


まとめ

有価証券は、社会福祉法人においても保有できる資産ですが、
預金と比較すると 性質・リスク・管理方法が大きく異なります。

こうした点を押さえることで、
決算時や監査時の負担が減り、
日々の会計処理も安定していきます。

まんがでポイントを押さえよう

簡単な説明です

マツオカ

有価証券
運用や売買により利益を得ることを目的にして行う。投資前に、損をする可能性を想定しておくことをつい忘れがち。運用方針の決定や手続きを忘れないこと。


科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

まんがの部屋

会計・役員・企業主導型保育事業などを4コマ漫画で説明しています。こちら

社会福祉法人専門 公認会計士・税理士による書籍

ああ

Amazonのページはこちら(試し読み機能あり)

Amazonの試し読み機能で、本の一部ご覧いただくことができます。

  1. 資金収支計算書 (第5版) 58ページ 1870円
  2. 事業活動計算書(第3版) 73ページ 1925円
  3. 貸借対照表 (第3版) 81ページ 1980円
  4. 経営組織(理事・監事や理事会・評議員会について) 57ページ 1760円
  5. 随意契約 45ページ 1650円
  6. 注記と附属明細書 109ページ 1980円
  7. 社会福祉法人会計簿記の特徴 52ページ 1870円
  8. 社会福祉法人会計基準の逐条解説 83ページ 1980円
  9. 利益と増減差額 ~その違いからわかること~ 47ページ 1815円
  10. 現金主義と発生主義、実現主義 67ページ 1980円
  11. 社会福祉法人の減価償却 58ページ 1870円

よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

マツオカ会計事務所のストーリー

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

モバイルバージョンを終了