マツオカ会計事務所

専門的財務監査のポイント⑩ 「3 収入(3)寄付金収入」について ~企業主導型保育事業~

寄付金

企業主導型保育事業の専門的財務監査

企業主導型保育事業では、助成金・保育料・共同利用料以外に、地域や企業、個人から 寄付金や寄付物品 をいただくことがあります。

寄付金は自由意思によるものですが、「強要・誤解・“不透明な受入れ” を避けること」 が特に重要で、専門的財務監査でも丁寧に確認される項目です。

児童育成協会が公表している専門的財務監査の評価基準のポイントを確認していきましょう。

🟦 「ホームページ利用上のご注意について」
https://office-matsuoka.net/goriyouchui





専門的財務監査の評価基準の内容とポイント
3 収入(3)寄付金収入

🌟 1.寄付金収入に関する監査ポイント(ア〜エ)


● ア:寄付を保護者・取引先・職員に強要していないか

監査が確認する内容

社会福祉法人・株式会社その他の法人のポイント


● イ:寄付金収入の適正処理(申込書・領収書・台帳)

寄付金を受けた場合は、

  1. 寄付申込書の受領
  2. 理事長など権限者の承認
  3. 領収書の発行(控は保存)
  4. 寄付金台帳への記録
  5. 会計処理(寄付金収益として計上)

が必要です。

監査の視点

マツオカ会計事務所の寄付金関係書類では、寄付金の申込書、領収書、寄付金の取扱要領を掲載しています。寄付金取扱要領は、監査担当者から「参考にしたいので写真に撮らせて欲しい」との依頼を受けたものです。


● ウ:現物寄付がある場合は “時価換算” して計上できているか

現物の寄付(例:備品・絵本・玩具など)があった場合、

が必要です。

注意


● エ:寄付金台帳と決算書の一致(最重要)

監査では次を突合します。

✔ いずれかが不一致だと 調整表の作成が必須


🌱 2.寄付金は「強要・暗示の禁止」からスタート

寄付の原則は
“自由な意思によるものであること”

そのため、


🌱 3.寄付金受入れの実務フロー(7ステップ)

NO手続き内容
寄付者に寄付申込書を記載してもらう
理事長、代表取締役など決裁権限者の承認
寄付の受領時に領収書を発行し、控を保存
寄付目的に応じて「どの拠点の収益か」を決定
寄付金台帳に記入(個人情報の扱いに注意)
寄付金の会計仕訳を行う
所轄庁への報告(※社会福祉法人の場合・所轄庁の通知にしたがう・・・100万円以上は報告必要など)

※自治体独自に寄付報告を求める通知があるため、事前確認が必要。

🌱 4.現物寄付の処理(備品寄付に多い)

現物寄付でよくある品目

処理のポイント

  1. 価格の根拠(カタログ・見積り)を保存
  2. 寄付金収益として時価で収益計上
  3. 備品として資産計上
  4. 減価償却の対象になる場合もある

🌱 5.決算書との一致を必ず確認

寄付金収入は、小さな金額でも「決算書の全体構造」と結びつくため、以下の一致が重要です。

✔ 小規模な寄付でも突合されるため、記録の残し方が鍵。


🌟 6.まとめ:寄付金収入の監査は“透明性+整合性” がポイント

寄付金収入に関する監査の要点は次のとおり。

✔ 保護者・職員への寄付強要がない

寄付申込書・承認・領収書が揃っている

台帳・決算書・明細書の金額が一致

現物寄付は時価換算し、証拠資料を保存

100万円以上の寄付は所轄庁への届出(社会福祉法人の場合)

寄付はトラブルが起きやすい分野やから、適切な文書と記録、透明性の確保が一番の防止策です。

マツオカ会計事務所の寄付金関係書類

マツオカ会計事務所の寄付金関係書類は、金銭、寄付物品別に、必要となる様式一式を揃えています。

寄付金関係書類の内容


(参考)専門的財務監査の評価基準と社会福祉法人のポイント解説

専門的財務監査の評価基準と項目ごとの社会福祉法人のポイントを掲載しています。

区分監査事項評価事項社会福祉法人のポイント
寄付金品を保護者や職員に強要するなど、不適切な寄付の受入れを行っていないか関係者に質問し確かめる。・保護者や職員等に寄付を強要している。○職員や保護者に向けて、寄附をお願いする文書などを渡していないか。

○寄附金収益明細書の寄附者の属性を確認しておく。
寄付金収入がある場合は、寄付受納に際し、寄付申込書を受け寄付金品台帳を作成し、領収書を発行するなど、適正な収入処理が行われているか確かめる。・適正な収入処理がなされていない。○寄付金の受入れ処理は、実際の入金額と一致しているか。

○資金収支計算書や事業活動計算書と附属明細書の寄附金収益明細書の内容、金額は一致しているか。
現物による寄付がある場合も同様に取り扱い、時価換算して収入計上しているか確かめる(ただし、消耗品等は換算不要)。・現物の寄付の処理が適切でない。○現物の寄附について、時価を確認した資料が保管されているか。
寄付金台帳の合計金額と、寄付金収入勘定金額の一致を確かめる。・不一致である。または不一致の場合、その合理的な理由を説明した調整表等を作成していない。○資金収支計算書、事業活動計算書、寄附金収益明細書と寄附申込書(合計額)や寄付金台帳の金額は一致しているか

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(2)経理規程・関連規程

発注規程
積立資産管理規程
助成金取扱規程
寄附金関係書類

②会計・財務コンサルティングサービス


企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度

下のリンクから指摘事項のページに進みます。

専門的財務監査専門的労務監査立入調査午睡時抜き打ち調査
4年度4年度4年度4年度
5年度5年度5年度5年度
6年度6年度6年度6年度

企業主導型保育事業に関する4コマ漫画

「まんがの部屋」コーナーでは、内容ごとに4コマ漫画で説明しています。

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。


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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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