勘定科目の解説「退職給付引当金」社会福祉法人会計
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説明の内容
管理職になり、初めて社会福祉法人の会計に接することになったお客様へ、 「自分は会計の初心者だ」と思っておられる方々へ、 社会福祉法人会計で用いる勘定科目のイメージを持ってもらうための簡単な説明になります。始めたきっかけはこちら |
厚生労働省の勘定科目の説明 退職給付引当金
退職給付引当金
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
将来支給する退職金のうち、当該会計年度末までに発生していると認められる金額をいう。
退職給付引当金の簡単な説明をしてみましょう

退職給付引当金
法人の退職金制度で、職員さんに支給する予定の退職金の当期末の金額を見積もったもの。
外部の制度に加入している場合には、制度により取扱いが異なるので注意が必要になる。
福祉医療機構の制度では引当を行わない。都道府県の共済会制度へ加入も多いが、加入している共済会ごとに制度が異なるところがあるので、共済会の書類で確認しておこう。
勘定科目説明の解説
社会福祉法人会計の引当金
社会福祉法人会計基準では、引当金の計上について、下のように記しています。
資産の部に計上される引当金 | 負債の部に計上される引当金 |
徴収不能引当金(流動資産) | 賞与引当金(流動負債) |
徴収不能引当金(固定資産) | 退職給付引当金(固定負債) 役員退職慰労引当金(固定負債) |
徴収不能引当金について
(資産の評価)
社会福祉法人会計基準
第四条 資産については、次項から第六項までの場合を除き、会計帳簿にその取得価額を付さなければならない。ただし、受贈又は交換によって取得した資産については、その取得時における公正な評価額を付すものとする。
2 省略
3 省略
4 受取手形、未収金、貸付金等の債権については、徴収不能のおそれがあるときは、会計年度の末日においてその時に徴収することができないと見込まれる額を控除しなければならない。
5 省略
6 省略
賞与引当金・退職給与引当金・役員退職慰労引当金
(負債の評価)
社会福祉法人会計基準
第五条 負債については、次項の場合を除き、会計帳簿に債務額を付さなければならない。
2 次に掲げるもののほか、引当金については、会計年度の末日において、将来の費用の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該会計年度の負担に属する金額を費用として繰り入れることにより計上した額を付さなければならない。
一 賞与引当金
二 退職給付引当金
三 役員退職慰労引当金
社会福祉法人の退職金制度
社会福祉法人さんの退職金制度は、大きくは3つの方法が採用されていますね。
① | 独立行政法人福祉医療機構の実施する社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入する |
② | 都道府県等の実施する退職共済制度に加入する |
③ | 法人独自の退職金制度を設けている |

どのような退職金制度を用いるか、法人ごとに検討がされていますね。
退職給付引当金が計上される退職金制度
社会福祉法人が採用する退職金制度のうち、退職給付引当金が計上される制度は、
②の都道府県等が実施する退職共済制度と
③の法人独自の退職金制度に基づく場合が多いでしょう。
18 引当金について(会計基準省令第5条第2項関係)
社会福祉法人会計基準の運用上の取り扱い
(4) 職員に対し退職金を支給することが定められている場合には、将来支給する退職金のうち、当該会計年度の負担に属すべき金額を当該会計年度の費用に計上し、負債として認識すべき残高を退職給付引当金として計上するものとする。
①の独立行政法人福祉医療機構の退職共済に加入した場合
福祉医療機構の退職共済制度に加入されている法人さんも多いと思います。
会計上の処理は、拠出額(掛金額)を当年度に費用処理を行います。そのため、退職給付引当金を計上しません。
21 退職給付について
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(2)独立行政法人福祉医療機構の実施する社会福祉施設職員等退職手当共済制度及び確定拠出年金制度のように拠出以後に追加的な負担が生じない外部拠出型の制度については、当該制度に基づく要拠出額である掛金額をもって費用処理する。
②都道府県等の実施する退職共済制度に加入する
都道府県等ごとに制度の細かい内容が異なっています。
法人が加入する退職共済制度の案内やしおりなどで、会計処理の方法を確認していきましょう。
退職一時金制度等の確定給付型を採用している場合には、以下のようになります。
原則的な処理 | 退職給付引当金 = 約定の給付額 ー 職員の掛金累計額 |
簡便的な処理 | 退職給付引当金 = 期末退職金要支給額 ー 職員の掛金累計額 |
21 退職給付について
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(3) 都道府県等の実施する退職共済制度の会計処理
ア 共済契約者である社会福祉法人
退職一時金制度等の確定給付型を採用している場合は、約定の額を退職給付引当金に計上する。ただし被共済職員個人の拠出金がある場合は、約定の給付額から被共済職員個人が既に拠出した掛金累計額を差し引いた額を退職給付引当金に計上する。
なお、簡便法として、期末退職金要支給額(約定の給付額から被共済職員個人が既に拠出した掛金累計額を差し引いた額)を退職給付引当金とし同額の退職給付引当資産を計上する方法や、社会福祉法人の負担する掛金額を退職給付引当資産とし同額の退職給付引当金を計上する方法を用いることができるものとする。
③ 法人独自の退職金制度を設けている場合
法人独自の退職金制度を設けている場合には、退職金に関する規程に基づき、当年度末において負債として認識すべき退職金残高を退職給付引当金として計上します。
職員数 | 会計処理の方法 | 退職給付引当金(退職給付債務)の計算 |
300人以上 | 原則な方法 | 数理計算により、退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算する。 |
300人未満 | 簡便な方法も可 | 期末要支給額により計算することができる。 |
21 退職給付について
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(1) 期末要支給額による算定について
退職給付会計の適用に当たり、退職給付の対象となる職員数が300 人未満の社会福祉法人のほか、職員数が300 人以上であっても、年齢や勤務期間に偏りがあるなどにより数理計算結果に一定の高い水準の信頼性が得られない社会福祉法人や原則的な方法により算定した場合の額と期末要支給額との差異に重要性が乏しいと考えられる社会福祉法人においては、退職一時金に係る債務について期末要支給額により算定することができるものとする。
社会福祉法人会計では、退職給付引当金とともに、固定資産の「退職給付引当資産」を確認をすることお勧めします。
退職給付引当金は、拠点ごとに貸借対照表に計上されていきます。
拠点ごとの科目の残高と共済会から送られる通知書などとの整合を確認しておきましょう。
入退職に伴う引当金の引当や取崩、法人内部の異動によって退職給付引当金を計上する拠点の変更などに注意しましょう。
簡単な説明をもう一度

退職給付引当金
法人の退職金制度で、職員さんに支給する予定の退職金の当期末の金額を見積もったもの。
外部の制度に加入している場合には、制度により取扱いが異なるので注意が必要になる。
福祉医療機構の制度では引当を行わない。都道府県の共済会制度へ加入も多いが、加入している共済会ごとに制度が異なるところがあるので、共済会の書類で確認しておこう。
科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士 スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
