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質問の内容
| 積立資産の予算を計上する場合の理事会の承認を受ける時期について、教えて下さい。 |
関連するページは下のようになります。
| NO. | 記事のタイトル |
|---|---|
| ① | 社会福祉法人の積立金と積立資産の取扱い(原則的な取扱い) |
| ② | 社会福祉法人の積立金と積立資産の取扱い(例外的な取扱い・積立資産のみの計上) |
| ③ | 積立金の積立ての理事会承認を受ける時期について |
| ④ | 積立資産の予算計上について |
| ⑤ | 積立資産の専用口座への資金移動の時期 |
| ⑥ | 有料動画 「積立金と積立資産の関係の確認」 約17分 税込み1,100円 |
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🎀 はじめに:積立資産の予算は「いつ承認が必要?」
積立金と積立資産の関係は、社会福祉法人の会計でも質問の多いテーマのひとつです。
とくに実務で悩まれるのが、
「積立資産の予算は、いつ理事会で承認すればいいの?」
という点。
この記事では、積立金と積立資産をセットで考えながら、
予算計上の考え方・承認時期・補正予算との関係 をやさしく整理します。
(関連ページは上の表のとおり、シリーズとして並べると理解が深まります)
1.積立資産の予算と理事会承認の関係
積立資産を積み立てるときは、
貸借対照表では次のように対応します。
- 借方:○○積立資産
- 貸方:○○積立金
そして、積立資産を積むには
👉 「(○○)積立資産支出」という予算科目が必要
になります。
つまり、積立金の理事会承認と同時に、
- 積立資産支出の予算
-(必要に応じて)補正予算の理事会承認
も検討する必要があります。
2.当初予算に積立資産支出が計上されている場合
当初予算で、すでに
○○積立資産支出
が計上されているなら、
👉 実績と予算の差額が大きくなければ問題なし。
差額が小さければ追加の補正予算の承認を省略することも可能です。
2 予算と経理
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(2)法人は、全ての収入及び支出について予算を編成し、予算に基づいて事業活動を行うこととする。
なお、年度途中で予算との乖離等が見込まれる場合は、必要な収入及び支出について補正予算を編成するものとする。ただし、乖離額等が法人の運営に支障がなく、軽微な範囲にとどまる場合は、この限りではない。
3.当初予算に計上がない/大きな乖離がある場合
次のような場合は補正予算の検討が必要:
- 当初予算で積立資産支出を計上していない
- 当初予算と実際の積立資産額に大きなズレがある
このときに問題になるのが、
補正予算の承認を、年度内に行うべきか、決算理事会で良いか?
という点。
ここから順番に整理していきます。
4.補正予算は「当年度内(3月末まで)」の承認が安全
モデル経理規程 第21条では、
予算執行中に変更事由が生じた場合、補正予算を作成し、理事会の承認を得る
と書かれています。
“予算執行中”とは
👉 会計年度内(4月〜翌3月)
を指すため、
補正予算は年度内に承認するのが原則安全です。
また、指導監査の実務でも、
年度内の承認 を推奨される傾向が強いと言えます。
※所轄庁が具体的な指示を出している場合は、その指示が優先されますのでご確認ください。
5.決算理事会で承認するケース(過去の例)
しかし実務では、次のようなケースがあります。
- 3月末時点では決算見込みが不確定
- 決算の確定額が分かるのは4月以降
- 確定額で積立資産を積みたい
このように “決算が確定しないと積立額が確定できない” 場合、
👉 過去には決算理事会で補正予算を承認する方法
が選ばれるケースもありました。
ただし、現在は決算理事会での補正予算を認める通知を確認することはできません。
決算理事会での補正予算を組みたい場合には、予め所轄庁に相談して、了承を得ましょう。(了承を得た記録・文書等を残しておくことも大切です。)
6.補正予算を組まなくてもよいケース(軽微な場合)の例示
「運用上の留意事項」では、補正予算について次の規定があります。
上記2にも記しましたが、乖離額が法人運営に支障がなく、軽微な範囲にとどまる場合は補正予算は不要。
つまり、積立資産の予算不足が
- 法人にとって軽微
- 影響がごく小さい
という場合には、補正予算なしで積立資産支出を行うことも可能になります。
“軽微かどうか” の判断は?
厚労省Q&Aでは、
一律に基準を示すことは困難
とされているため、
- 収益規模
- 当期資金収支差額
- 総資産・純資産に対する比率
などから法人ごとに判断することが必要になります。
7.実際の積立資産の資金移動は「翌年度でもOK」
予算承認(理事会)と、実際の資金移動は別の話で、
資金移動は翌年度でも構わないという通知があります。
通知では次のように明記:
専用口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月以内
(運用上の留意事項 第19)
つまり、予算は年度内承認が原則で、資金移動は翌年度でもOKということになります。
19 積立金と積立資産について
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について
(2)積立資産の積立ての時期
積立金と積立資産の積立ては、増減差額の発生した年度の計算書類に反映させるものであるが、専用の預金口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月を越えないうちに行うものとする。
8.まとめ:積立金・積立資産の承認は “2つセット”
積立金と積立資産の関係を整理すると、承認は次の2つに分かれます。
- 積立金を積むことの理事会承認
- (○○)積立資産支出の予算承認(当初 or 補正)
シリーズとして並べて読むと、法人の仕組みとして理解しやすくなります。
9.ご相談ください
積立金・積立資産は、
- 原則・例外の判断
- 理事会承認の時期
- 予算と補正の扱い
- 資金移動のタイミング
など、判断ポイントが多くあります。
法人ごとの状況に合わせて
「安全な時期・正しい手続き」を整理するお手伝いもできますので、
お気軽にお問い合わせください。
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(参考)モデル経理規程を基に経理規程の確認
社会福祉法人の経理規程の多くは、「モデル経理規程(経営協)」を基に規定されていることでしょう。
モデル経理規程の「第3章 予算」の第21条には補正予算について、規定されています。
(補正予算)
出典:モデル経理規程(経営協)より
第21条 予算執行中に、予算に変更事由が生じた場合には、理事長は補正予算を作成して理事会に提出し、その承認を得なければならない。
補正予算についての定めの中で、「予算執行中に」という表現がされています。
予算執行中とは、会計年度中(当年度中)を意味すると考えられます。
このことから、補正予算は、予算執行中である当年度中に理事会(または、定款の定めにより評議員会)で承認を得ることが前提となっていると考えられそうです。
一度、法人の経理規程の中の「補正予算」の条文を確認しておきましょう。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。
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