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役員と役員会・指導監査の準備

理事会の招集権者|招集できる理事・招集請求・監事による招集のルール(理事会の招集権者と招集手続)

はじめに

社会福祉法人の理事会では、
誰が理事会を招集できるのかという点が誤解されやすく、
また監査でも必ず確認されるポイントです。

理事会の招集権者は、

  • 社会福祉法の原則
  • 定款に定める者
  • 理事からの招集請求
  • 監事による招集
    といった複数のルールが関係します。

本記事では、理事会の招集権者と、招集請求・監事招集の手続きについて、社会福祉法に基づき整理して解説します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。

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1.理事会を招集できる理事(招集権者)

理事会の招集権者は、「社会福祉法の原則」→「定款の決まり」→「監事招集」の順に整理すると理解しやすいです。


1-1.原則:各理事が招集権者

社会福祉法 第45条の14 第1項では、理事会は、各理事が招集すると規定されています。

つまり、定款に特別の定めがない場合は、理事であれば誰でも理事会を招集できます。


1-2.実務:多くの法人は定款で「理事長が招集する」と規定

多くの社会福祉法人の定款では、「理事会は理事長が招集する」と定めています。

例(厚労省 定款例)

第二五条 理事会は、理事長が招集する。
2 理事長が欠けたとき又は理事長に事故があるときは、各理事が招集する。

定款にこのような定めがある場合、理事長が専任の招集権者になります。


1-3.理事長が招集しない場合(理事による招集請求)

定款に「理事長が招集権者」とある場合でも、

  • 他の理事は、理事長に対して理事会の開催を請求できる
  • 請求後、一定期間内に招集がされない場合は、自ら理事会を招集できる

という仕組みが法令で保障されています。

社会福祉法 第45条の14(第2項・第3項)より:

▼ 手続きの流れ

手続き内容
① 理事が理事長に招集を請求議題を示して請求
② 請求から5日以内理事長が招集通知を発しなければならない
③ 開催日は、請求日から2週間以内上記の期間中で開催日を設定
④ 期限までに通知がない場合請求した理事が自ら理事会を招集可能

これは「理事長が理事会開催に動かない場合」に備えた仕組みです。


2.監事が理事会を招集する場合(監事招集)

監事は、

  • 必要があると認めた場合
  • 理事に開催を請求し
  • 期限までに通知がない場合

に、理事会を招集できます。

(社会福祉法 第45条の18 → 一般法人法 第101条~第103条を準用)

▼ 手続き(監事の場合)

手続き内容
① 監事が理事に招集を請求必要性を認めた場合
② 請求日から5日以内理事が招集通知を出すべき
③ 請求から2週間以内開催日を設定すべき
④ 通知がない場合監事が理事会を招集できる

監事には、法人監査を実効性のあるものにするため、強い権限が法律上認められています。


3.招集権者の種類(まとめと早見表)

以下の表にまとめると理解しやすいです。

No.区分内容招集権者
多くの法人(実務)定款で招集権者を定めている理事長
法令の原則定款に定めがない場合各理事
法令(監事招集)監事の請求が無視された場合監事


4.招集手続きと記録の整備

理事会を招集する際に整備しておくべき書類は次のとおりです。

No.区分書類要点
招集通知を発した場合招集通知発出した日付がわかるように保存
招集通知を省略した場合全員の同意書等理事・監事全員の同意の記録を保存
共通理事会議事録開催日・場所・議事内容・同意の旨など

指導監査ガイドラインでも、「招集通知の発出状況」「全員の同意の証跡」は重点確認項目です。

○ 指導監査を行うに当たっては、理事会を招集した理事(法第45 条の14 第3項により招集した理事を含む。)が開催通知を期限までに発出しているか、招集通知を省略している場合には、理事及び監事の全員の同意があるかを確認する。
なお、理事会の招集通知を省略することについての理事及び監事の同意の取得・保存の方法について、法令上の制限はないが、法人において、理事及び監事の全員が同意書を提出することとする、又は理事会の議事録に当該同意があった旨を記載する等、書面若しくは電磁的記録による何らかの形で保存できるようにしておくことが望ましい。

出典 厚生労働省 指導監査ガイドライン 「6 理事(1)審議状況」より

5.理事会の招集手続き(通知期限)

理事会の招集通知は、一般法人法 第94条の準用により、

開催日の1週間前までに通知

(定款で短縮可能)

が基本です。

通知方法は書面・メールなどが認められますが、どの場合も「発出日が確認できる形」での保存が重要です。


6.招集手続きの省略

理事会は、理事および監事全員の同意がある場合に限り、招集手続を省略して開催できます。

(一般法人法 第94条 第2項 準用)

▼ 実務ポイント

  • 書面または電磁的記録で同意を得ることが望ましい
  • 同意書を集めるか、議事録に全員同意の旨を記載する
  • 法令上の様式制限はないが、証跡の保存が必須

まんがでポイントを押さえよう

理事会招集通知

参考条文

理事会の招集権者

(理事会の運営)
第四十五条の十四 理事会は、各理事が招集する。ただし、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その理事が招集する。

2 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた理事(以下この項において「招集権者」という。)以外の理事は、招集権者に対し、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を請求することができる。

3 前項の規定による請求があつた日から五日以内に、その請求があつた日から二週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした理事は、理事会を招集することができる。

社会福祉法より

監事による理事会の招集

※社会福祉法

第四十五条の十八 監事は、理事の職務の執行を監査する。この場合において、監事は、厚生労働省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

2 監事は、いつでも、理事及び当該社会福祉法人の職員に対して事業の報告を求め、又は当該社会福祉法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

3 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百条から第百三条まで、第百四条第一項、第百五条及び第百六条の規定は、監事について準用する。この場合において、同法第百二条(見出しを含む。)中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同条中「法務省令」とあるのは「厚生労働省令」と、同法第百五条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

※一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(理事会への出席義務等)
第百一条 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

2 監事は、前条に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事(第九十三条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、理事会の招集を請求することができる。

3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。

理事会の招集手続き

(理事会の運営)
第四十五条の十四
(省略)
9 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十四条の規定は理事会の招集について、同法第九十六条の規定は理事会の決議について、同法第九十八条の規定は理事会への報告について、それぞれ準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める

社会福祉法より

(招集手続)
第九十四条 理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。

出典:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

招集手続きの省略

(招集手続)
第九十四条
(省略)
 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

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記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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