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企業主導型保育事業 専門的財務監査

専門的財務監査のポイント㉖ 対象外経費の内容 ~企業主導型保育事業~ 

企業主導型保育事業の専門的財務監査

令和3年度から、企業主導型保育事業に対して専門的財務監査が行われています。
専門的財務監査は、監査法人(公認会計士等)によって行われることになります。

今回は、、専門的財務監査において指摘が多い、対象外経費を確認していきます。

ホームページのご利用上の注意」をお読み下さり、ご了承の上、お読みください。

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対象となる経費↔対象外経費のポイント

対象外経費を確認する上では、助成金の対象となる経費を確認することが大切です。

助成金の対象となる経費に該当しない経費は、対称外経費と考えることができます。

NO.助成金の対象となる経費のポイント
当年度に支出した経費
現金支出を伴う経費
保育サービス提供のために要した経費
助成金を原資とする経費
証憑書類が残っており、金額が明確な経費
経済的合理性のある契約に基づく、妥当な金額の経費
助成金の使途として適切な経費
児童育成協会「令和5年度企業主導型保育事業(運営費等)の年度報告、完了報告及び処遇改善等加算実績報告の手引き」を基に作成しています

対象となる経費↔対象外経費の項目ごとのポイント

児童育成協会の資料によると、項目ごとのポイントは下になります。

①当年度に支出した経費

企業主導型保育事業は国の年度ごとの予算に基づく単年度事業であるため、原則として当年度内に現金支出した経費が対象となります。

ただし、年度内に発生し、かつ支払額が確定している経費は対象となります 。
(例:未払金等に計上され、翌月以降に支払が行われる経費。4月に支払う職員の3月分給与、3月分の光熱費、3月までに完了した修繕費等)

②現金支出を伴う経費

現金支出を伴う経費のみが対象となり、現金支出を伴わない会計上の費用は対象外です。

このような費用を非現金支出費用と呼びます。

非現金支出費用には以下のような経費があります。

  • 減価償却費
  • 賞与引当金繰入額
  • 退職給付引当金繰入額(退職給付費用)
  • 除却損・廃棄損
  • 〇〇圧縮損など

③ 保育サービス提供のために要した経費

保育サービスの提供のために法人が支出した経費のみ対象です。

以下のような支出は対象外です。

  • 精算によって生じた協会への返還金
  • 保育施設の運営以外の法人の支出
  • 法人役員に対する支出
  • 借入金の元金償還支出
  • 法人内部での資金移動等

また、対象経費として計上した支出について、監査では、保育サービスの提供に要した経費であることが確認できる資料の提出を求められると考えておきましょう。

④ 助成金を原資とする経費

当該年度の運営費助成金以外を原資とする支出は対象外です。

運営費助成金以外を原資とする支出の例は以下のようなものがあります。

  • 協会以外からの助成金を原資とした支出
  • 保護者・職員からの実費徴収分を原資とした支出
  • 過年度の助成金の積立資産を原資とした支出
  • 保険料を過年度も含め対象支出として計上している保険の保険金等を原資とした支出など

⑤ 証憑書類が残っており、金額が明確な経費

支出に関する証憑がない場合、金額が不明確な場合は対象外です。

証憑書類とは取引の記録として受け取る各種の書類になります。

証憑書類には下のようなものがあります。

  • 契約書
  • 見積書
  • 発注書、注文書
  • 請求書
  • 納品書
  • 領収書、受領書
  • 振込明細書
  • ネット取引やネット決済の記録

支出に関する証憑類は保管しておくことが義務付けられています。

助成金確定額の決定後であっても、監査等で証憑類が確認できない場合は対象外支出とされ、助成金の返還を求められることがありますので注意が必要です。

(重要)経費を按分した場合の根拠資料

本部一括支払いなどで保育施設の費用分を按分して計上する場合には、

保育施設の費用を算出した合理的な按分根拠を示す資料を備えていない場合も対象外となります。

⑥ 経済的合理性のある契約に基づく、妥当な金額の経費

経済的合理性のない契約に基づく支出や妥当性を欠く価格の支出は対象外です。

支出に対する効用・効果を考えた場合に、著しく高額と考えられる支出は対象外となる場合があります。

(例:一般的な市場価格と乖離した高額な取引価格での支出など)

支出額の適切性の確認のため、契約締結に至る経緯や購入物の選定についての説明、

また効用・成果物について確認できる資料の提出を求められると考えておきましょう。

(重要)同一グループ企業、関連者等との取引においては、

取引先の実費分以外の利益相当分が対象外となる場合がありますので適切な金額での取引となるよう留意する必要があります。

(重要)関連会社、グループ企業、役員や親族との契約

関連会社や役員等との契約では、契約金額を任意に決めることが容易になり、助成金を原資とした利益供与が行われることが懸念されています。

このため、契約の必要性、契約の相手方に選定した根拠、契約金額の妥当性を示すことができるように、説明や資料が必要になります。

取引の例:業務委託契約や特定の物品やサービスの購入など

⑦ 助成金の使途として適切な経費

①~⑥以外に、助成金の使途として不適切な支出は対象外です。


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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。



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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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