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質問と回答

就労継続支援B型事業所で自立支援給付費(訓練等給付費)を工賃に充てることはできるのか 社会福祉法人会計専門 公認会計士・税理士

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質問の内容

就労継続支援B型事業所では、自立支援給付費(訓練等給付費)を工賃に充てることはできるでしょうか。
就労継続支援A型の事業所はできないと聞いたのですが、B型の事業所は大丈夫でしょうか。

ご注意

掲載している内容は、マツオカ会計事務所の顧問先の社会福祉法人様に向けた内容になっています。


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就労継続支援A型の事業所の取扱い

自立支援給付費を賃金・工賃に充てることができるか

A型の事業所では、自立支援給付費を賃金や工賃に充てることができないことは、良く知られている印象があります。

根拠は、「運営基準」の第192条第6項にあります。

第192条第6項を要約すると下のようになります。

NO.区分A型の事業所の規定
原則自立支援給付費を賃金・工賃に充てることは不可
例外

災害その他やむを得ない理由がある場合、例外的に可能

運営基準の確認

運営基準を確認してみましょう。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準

第十二章 就労継続支援A型

第四節 運営に関する基準

(賃金及び工賃)
第百九十二条 指定就労継続支援A型事業者は、第百九十条第一項の規定による利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことを支援するため、賃金の水準を高めるよう努めなければならない。

2 指定就労継続支援A型事業者は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない。

3 指定就労継続支援A型事業者は、第百九十条第二項の規定による利用者(以下この条において「雇用契約を締結していない利用者」という。)に対しては、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。

4 指定就労継続支援A型事業者は、雇用契約を締結していない利用者の自立した日常生活又は社会生活を営むことを支援するため、前項の規定により支払われる工賃の水準を高めるよう努めなければならない。

5 第三項の規定により雇用契約を締結していない利用者それぞれに対し支払われる一月あたりの工賃の平均額は、三千円を下回ってはならない。

6 賃金及び第三項に規定する工賃の支払いに要する額は、原則として、自立支援給付をもって充ててはならない。ただし、災害その他やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準

就労継続支援B型の事業所の取扱い

自立支援給付費を工賃に充てることができるか

「運営基準」のA型の事業所の第192条第6項の規定を、B型の事業所も準用されていることから、下のようになります。

NO.区分B型の事業所の規定
原則自立支援給付費を工賃に充てることは不可
例外

災害その他やむを得ない理由がある場合、例外的に可能

運営基準の確認

運営基準には、一見すると、B型については第192条第6項のような条文が見当たらない気もします。

しかし、よく目を通すと下の条文が見つかります。

第202条の条文で、第192条第6項がB型事業所にも準用されていることが分かります。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準

第十三章 就労継続支援B型

第四節 運営に関する基準

準用
第二百二条 第九条から第十七条まで、第十九条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第二十八条、第三十三条の二、第三十五条の二から第四十一条まで、第五十七条から第六十条まで、第六十六条、第六十八条から第七十条まで、第七十四条、第七十五条、第八十四条、第八十六条から第九十二条まで、第百五十九条、第百六十条、第百九十二条第六項及び第百九十三条から第百九十五条までの規定は、指定就労継続支援B型の事業について準用する。この場合において、第九条第一項中「第三十一条」とあるのは「第二百二条において準用する第八十九条」と、第二十条第二項中「次条第一項」とあるのは「第二百二条において準用する第百五十九条第一項」と、第二十三条第二項中「第二十一条第二項」とあるのは「第二百二条において準用する第百五十九条第二項」と、第五十七条第一項中「次条第一項」とあるのは「第二百二条において準用する次条第一項」と、「療養介護計画」とあるのは「就労継続支援B型計画」と、第五十八条中「療養介護計画」とあるのは「就労継続支援B型計画」と、第五十九条中「前条」とあるのは「第二百二条において準用する前条」と、第七十五条第二項第一号中「第五十八条」とあるのは「第二百二条において準用する第五十八条」と、「療養介護計画」とあるのは「就労継続支援B型計画」と、同項第二号中「第五十三条の二第一項」とあるのは「第二百二条において準用する第十九条第一項」と、同項第三号中「第六十五条」とあるのは「第二百二条において準用する第八十八条」と、同項第四号から第六号まで中「次条」とあるのは「第二百二条」と、第八十九条中「第九十二条第一項」とあるのは「第二百二条において準用する第九十二条第一項」と、第九十二条第一項中「前条」とあるのは「第二百二条において準用する前条」と、第百九十二条第六項中「賃金及び第三項に規定する工賃」とあるのは「第二百一条第一項の工賃」と、第百九十三条第一項中「第百九十七条」とあるのは「第二百二条」と、「就労継続支援A型計画」とあるのは「就労継続支援B型計画」と読み替えるものとする。

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準

例外として可能となる要件について

災害その他やむを得ない理由がある場合の例①

第192条第6項但書きの災害その他やむを得ない理由がある場合

とは、どのような理由が該当するのでしょうか。

厚生労働省のQ&Aから、1つの例が挙げられます。

自立支援給付費を工賃に充てるための前提条件

区分前提条件

事業所の職員の処遇が悪化しない範囲

生産活動収入が災害前の水準に戻るまでの期間

下の3つ理由を全て満たすこと

3つの理由

こ区分理由
激甚災害の指定を受けた地域にB型事業所または取引先企業等が所在

災害救助法適用地域にB型事業所または取引先企業等が所在

・激甚災害の指定や災害救助法適用の要因となった大規模な災害による間接的な影響により生産活動収入が得られなかったことが明らかであると指定権者が認めた

・生産活動収入の大幅な減少が見込まれる


生産活動は行っているが数か月にわたり十分な生産活動収入が得られなかった

工賃変動積立金及び工賃変動積立資産がなく、活用できない

厚生労働省のQ&Aの確認

(問1)

指定就労継続支援B型事業において、生産活動収入の変動により、利用者に保障すべき一定の工賃水準(過去3年間の最低工賃)を支払うことが困難になった場合には、工賃変動積立金や工賃変動積立資産を取り崩して工賃を補填し、補填された工賃を利用者に支払うことになるが、大規模な災害による直接的又は間接的な影響で長期にわたり生産活動収入が得られない場合等において、この対応が困難になったときにはどのようにすればよいか。

(回答)

貴見のとおり、まずは工賃変動積立金や工賃変動積立資産により対応するものである。

ただし

以下の①から③をいずれも満たす場合には、事業所の職員の処遇が悪化しない範囲で自立支援給付費を充てることをもって、工賃の補填を行っても差し支えない。
① 激甚災害の指定を受けた地域又は災害救助法適用地域に就労継続支援B型事業所が所在する場合又は取引先企業等が所在する場合、若しくは激甚災害の指定や災害救助法適用の要因となった大規模な災害による間接的な影響により生産活動収入が得られなかったことが明らかであると指定権者が認めた場合
② 生産活動収入の大幅な減少が見込まれる、又は生産活動は行っているが数か月にわたり十分な生産活動収入が得られなかった場合
③ 工賃変動積立金及び工賃変動積立資産がなく、これらを活用できない場合

なお、生産活動収入が少なくとも災害前の水準に戻った以後には、利用者工賃に自立支援給付を充ててはならない。

出典:厚生労働省事務連絡(「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.5(平成30年12月17日)」の送付について)より

災害その他やむを得ない理由がある場合の例②

上記①以外にも、「やむを得ない理由」として認められる可能性はあります。

例えば、コロナ禍では、厚生労働省の事務連絡に「上記のQ&Aを参考に対応する」と示されていました。

また、 指定就労継続支援B型事業の工賃の支払いについては、 生産活動収入の変動により、利用者に保障すべき一定の工賃水準(過去3年間の最低工賃)を支払うことが困難になった場合には、工賃変動積立金や工賃変動積立資産を取り崩して工賃を補填し、 補填された工賃を利用者に支払うことになるが、 今般の新型コロナウイルスへの対応によりやむを得ない場合には、 「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.5」 (平成30年12月17日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課事務連絡) の問1における災害時の取扱いを参考にして対応いただきたい。

出典:厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルスへの対応に伴う就労継続支援事業の取扱い等について(第2報)(令和2年3月2日)」より

ただし、指定権者(所轄庁)では、「やむを得ない理由」は、限定的に解釈されていると考えられます。

指定権者(所轄庁)に、事業所の実情を伝えて、「やむを得ない理由」に該当するかどうか、相談してみましょう。

例外的に自立支援給付費を工賃に充てる場合の注意

見解と注意

上記の厚生労働省のQ&Aの中に「指定権者が認めた場合」との表現があるように、

例外的な取扱いとして、自立支援給付費を工賃に充てたい場合には、

事業所単独で判断するのではなく、事前に指定権者(所轄長)に確認して、認められた範囲内で行うようにしましょう。

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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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