企業主導型保育事業の午睡時抜き打ち調査
令和6年度は、企業主導型保育事業の午睡時抜き打ち調査が600施設で実施されました。
今回は、こども家庭庁の資料から、令和6年度の特別立入調査の指摘事項を確認していきます。
冒頭の解説(導入文)
企業主導型保育事業は、企業と地域が連携して多様な働き方を支えるために始まった制度ですが、令和6年度も引き続き、「不適切保育」や「不正受給」に関する情報提供が複数寄せられました。
特別立入調査の実施方針
不適切保育や不正受給・申請の過誤、その他(一斉退職等)について、情報提供(通報や苦情)があった場合や、定期的な立入調査結果を踏まえ必要と認められる場合などに、必要に応じて、随時、抜き打ちで実施する。
実施状況(令和7年3月31日時点)
特別立入調査の実施施設 63施設(設置事業者数52事業者)
うち、不適切保育35施設(うち自治体との合同調査24施設)、不正受給・申請の過誤38施設
※特別立入調査に基づく文書指導の結果(不適切保育関連)
協会から設置法人に対し、具体的な再発防止策として、
① 設置法人による当該職員への処遇及び改善指導、
② 虐待防止マニュアルに沿った社内研修の実施、
③ 当該職員の配置転換等
を求めた。
不正受給・申請の過誤(区分別件数)
| No. | 区分 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 保育従事者の常勤換算 | 12件 |
| 2 | 在籍児童の出席日数等 | 13件 |
| 3 | 週開所日数 | 4件 |
| 4 | 開所時間 | 1件 |
| 5 | 病児・病後児・体調不良児 | 4件 |
| 6 | 保育補助者雇上強化加算 | 7件 |
| 7 | 連携推進加算 | 20件 |
| 8 | 一時預かり | 1件 |
| 9 | 定員超過 | 1件 |
不適切保育関連(行為類型別)
| No. | 行為類型 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 叩く・小突く | 3件 |
| 2 | 引っ張る・掴む | 6件 |
| 3 | 閉じこめ・拘束 | 1件 |
| 4 | 午睡対応不備 | 4件 |
| 5 | 食事介助 | 1件 |
| 6 | 不適切発言 | 3件 |
| 7 | 配置基準違反 | 5件 |
| 8 | 保護者トラブル | 3件 |
(不適切保育関連:35施設/不正受給・申請の過誤:38施設)
まとめ・解説コメント
今回の報告から見えてくるのは、「不適切保育=職員の関わり方の問題」と「不正受給=事務処理や制度理解の不足」がそれぞれ異なる構造を持っているという点です。
前者には研修・再配置などの組織的対応が求められ、後者には会計・運営管理体制の見直しが不可欠です。監査や立入調査は“罰”ではなく、“再発防止と制度信頼のためのプロセス”として位置づけられています。
今後もこうした報告書を読み解きながら、事業者・士業・自治体が連携して、「安心して預けられる企業主導型保育」の実現に向けて取り組むことが大切です。
企業主導型保育事業 各監査での指摘事項 令和4年度~令和6年度
下のリンクから指摘事項のページに進みます。
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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
