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増減差額の意味について 会計用語の解説 社会福祉法人会計

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質問の内容(介護サービス)

社会福祉法人会計で使われている「増減差額」という用語の意味について教えてください。
「利益」とは何が違うのでしょうか。

会計用語「増減差額」の意味

増減差額とは貸借対照表の純資産を増加または減少させる差額という意味になります。

社会福祉法人会計では、なぜ、「増減差額」という会計用語が用いられているのかを、確認していきましょう。

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計算書類の増減差額

事業活動計算書と貸借対照表の中で用いられている「増減差額」を確認してみましょう。

事業活動計算書

NO.名称計算方法
サービス活動増減差額サービス活動収益計-サービス活動費用計
サービス活動外増減差額サービス活動外収益計-サービス活動外費用計
経常増減差額①+②
特別増減差額特別収益計-特別費用計
当期活動増減差額③+④
前期繰越活動増減差額
当期末繰越活動増減差額⑤+⑥
次期繰越活動増減差額⑦+基本金取崩額+その他の積立金取崩額-その他の積立金積立額

貸借対照表

NO.名称計算方法
次期繰越活動増減差額事業活動計算書の⑧と同じ金額になる
リンクは勘定科目の解説「次期繰越活動増減差額」へ

企業会計の利益と社会福祉法人会計の増減差額について

増減差額を理解するには、企業会計で用いられている利益と比較してみることがいいでしょう。

株式会社の利益と社会福祉法人の増減差額を比較してみしょう。

利益と増減差額の計算

「利益」と「増減差額」は共に、収益から費用を差し引くことで計算します。

区分会計用語計算方法
株式会社企業会計 利  益 収 益 ー 費 用
社会福祉法人社会福祉法人会計増減差額収 益 ー 費 用

利益と増減差額の共通点

計算された「利益(または損失)」と「増減差額」は、

どちらも、法人(会社)の貸借対照表の純資産を増加または減少させます。

区分用語計算書類プラスの場合マイナスの場合
株式会社 利益(損失) 損益計算書 純資産の増加 純資産の減少
社会福祉法人増減差額事業活動計算書純資産の増加純資産の減少

利益と増減差額の相違点

株式会社では、獲得した利益を原資として、株主(出資者)へ配当を行います。

社会福祉法人では、増減差額を、配当として法人外部へ資金を流出させることは認められていません。

区分用語貸借対照表配当の可否
株式会社 利益(損失) 利益剰余金
社会福祉法人増減差額次期繰越活動増減差額×

社会福祉法人会計の増減差額と企業会計の利益のイメージ

株式会社の利益と社会福祉法人の増減差額の計算の流れをイメージ図で確認してみましょう。

企業会計(株式会社)の利益のイメージ

企業会計の利益の計算方法と配当 損益計算書の利益は、貸借対照表の純資産を増加させる。出資者への配当により、純資産は減少する。
NO.内  容
損益計算書で計算された「利益」の金額分、貸借対照表の純資産が増加する
貸借対照表の「利益(剰余金)」を原資に、株主へ配当を行う

社会福祉法人会計の増減差額のイメージ

社会福祉法人会計の増減差額の計算方法と配当は認められていないこと
事業活動計算書の増減差額は、貸借対照表の純資産を増加させる。社会福祉法人では出資者への配当は認められていないため、配当により純資産は減少することはない。
NO.内   容
事業活動計算書で計算された「増減差額」の金額分、貸借対照表の純資産が増加する
なし (配当を行うことは認められていない)

まとめ

上記をまとめると下のようになります。

区分用語計算書類計算方法純資産の増減配当
株式会社 利益(損失) 損益計算書収益ー費用
社会福祉法人増減差額事業活動計算書収益ー費用×

社会福祉法人の「増減差額」と株式会社の「利益」と比較すると、以下のことが分かりますね。

NO.区分内  容
共通点計算方法・貸借対照表の純資産を増加・減少させること
相違点出資者(拠出者)への配当の可否・計算書類の名称(事業活動計算書と損益計算書)

以上のことから、

社会福祉法人会計では、

配当が想定される「利益」という表現を用いずに、

貸借対照表の純資産を増加または減少させる差額を示す意味として、

「増減差額」という会計用語が用いられていることが分かります。

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増減差額の用語については、社会福祉法人制度の理解につながることから、勉強会のテーマとして開催しました。この勉強会の内容を本に書き起こしています。

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(参考)社会福祉法人会計基準の記載内容(事業活動計算書について)

第三節 事業活動計算書

(事業活動計算書の内容)
第十九条 事業活動計算書は、当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示するものでなければならない。

(事業活動計算の方法)
第二十条 事業活動計算は、当該会計年度における純資産の増減に基づいて行うものとする。
2 事業活動計算を行うに当たっては、事業区分、拠点区分又はサービス区分ごとに、複数の区分に共通する収益及び費用を合理的な基準に基づいて当該区分に配分するものとする。

(事業活動計算書の区分)
第二十一条 事業活動計算書は、次に掲げる部に区分するものとする。
一 サービス活動増減の部
二 サービス活動外増減の部
三 特別増減の部
四 繰越活動増減差額の部

社会福祉法人会計基準

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マツオカ会計事務所のストーリー

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。



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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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