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質問と回答

ICT導入支援事業補助金の会計処理について①「補助対象経費の勘定科目」 社会福祉法人会計

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質問の内容(介護福祉サービス)

介護事業所に対して交付されるICT導入支援事業補助金の会計処理について 勘定科目や会計処理を教えてください。

回答(解説)は分けて、記載していく予定です。

ICT導入支援事業補助金の会計処理について「補助対象経費の勘定科目」
ICT導入支援事業補助金の会計処理について「補助金の会計処理と勘定科目」
参考介護ロボット導入活用支援事業補助金の会計処理について

障害福祉サービスのICT導入支援事業補助金は別途記載する予定です。

補助対象経費の勘定科目について

補助金の計上科目を考える前提として、補助対象経費を計上する科目について確認していきましょう。

補助対象経費の内容

補助対象経費の一覧

補助対象となる経費の内容を確認していきます。

ここからは、大阪府のICT導入支援事業補助金を例に検討していきます。

各法人さんは、交付を受ける都道府県の要綱などを確認してください。

マツオカ会計事務所のストーリーこちら

NO.
ストーリー 本質を伝えたい 資料へのこだわり 理事長からの質問 50円の奇跡
NO.
ストーリー 規制緩和 役に立った習慣夢とクロワッサン会計と四柱推命鑑定
NO.
ストーリー途中で諦めた?80点の資料

大阪府の補助対象経費の一覧

補助対象経費次に掲げるICTの購入、リース等(当該年度分までの経費を限度額とする。)に要する費用

・ソフトウェア(標準仕様やLIFEの対応のための改修経費も含む。)
・クラウドサービス
・タブレット端末
・スマートフォン
・クラウドサービス
・ネットワーク機器(Wi-fiルーター等)の購入・設置費
・保守・サポート費
・導入設定に要する経費
・導入研修に要する経費
・セキュリティ対策に要する経費
・ICT導入に関する他事業者からの照会等に応じた場合の経費

出典:令和4年度 大阪府ICT導入支援事業補助金交付申請等の手引き

補助対象経費となるもの、補助の対象外となるものについて、交付を受ける都道府県の補助金の交付要綱や手引き、Q&A内容を確認をしてください。

ネットワーク機器やタブレット端末やスマートフォン、ソフトウェアの取得・設置費といったものから、関連する経費までが補助対象経費になっています。

補助対象経費の性質上の分類

補助対象経費は、性質上、ICT機器等の導入(取得)と、経費の支払いの2つがあります。


NO.
分 類補助対象経費の例
ICT機器等の導入
ネットワーク機器の購入・設定費
タブレット端末
スマートフォン
ソフトウェア
導入設定に要する経費※
経費の支払い
保守サポート費
導入研修に要する経費
セキュリティ対策に要する経費
ICT導入に関する他事業者からの照会等に応じた場合の経費
※他の者から購入したソフトウエアについて、そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自法人の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、当該ソフトウエアの取得価額に算入します。

補助対象経費の導入方法

ICT機器等の導入については、2通りの方法が示されています。

NO.導 入 方 法

購入による導入

リース取引による導入(当年度分の経費が対象)

補助対象経費の勘定科目

補助対象経費が計上される可能性のある勘定科目

補助対象経費の一覧から、補助対象経費として発生する可能性のある科目に分類してみましょう。

補助対象経費には、固定資産に計上するもの、事業費や事務費として処理するもの、及びリース取引としてリース会計の適用される可能性のあるものが考えられます。

勘定科目の例
NO.会計の区分勘定科目の例
貸借対照表
事業活動計算書資金収支計算書内  容
固定資産ソフトウェア

器具及び備品
ソフトウェア取得支出

器具及び備品取得支出

ソフトウェア
ネットワーク機器
スマートフォン
タブレット端末など
(導入設定に要する経費※)

事務費

(事業費)
保守料
業務委託料
手数料
研修研究費
事務消耗品費
保守料支出
業務委託料支出
手数料支出
研修研究費支出
事務消耗品費支出

保守サポート費
導入研修費
クラウドサービス利用料
スマートフォン
タブレット端末など

リース会計有形リース資産
無形リース資産
賃借料賃借料支出

ファイナンス・リース債務の返済支出
ICT機器等の導入をリース契約で行った場合
※他の者から購入したソフトウエアについて、そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自法人の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、当該ソフトウエアの取得価額に算入します。

①+② 固定資産または事務費・事業費について

ICT機器等を購入する場合には、固定資産に計上するか、費用の科目(事務消耗品費)で処理するべきかを検討する必要があります。

1単位あたりの取得価額が10万円(法人の経理規程に定める金額)を超えるかどうかを確認しましょう。

1単位とは、1個もしくは1組として、一般的に取引をされる単位になります。
1組は、全体として1つの機能を有しているものと考えてみましょう。

NO.補助対象経費を購入した内容1個または1組
10万円未満
1個または1組 
10万円以上
ハードウェア
スマートフォン、タブレット端末、ネットワーク機器など
事務消耗品費器具及び備品
ソフトウェア
介護ソフトなど
事務消耗品費ソフトウェア

タブレット端末、スマートフォン

補助対象経費には、タブレット端末やスマートフォンも対象となっています。

タブレット端末やスマートフォンは、1台10万円前後のものも多く、固定資産となるか、事務消耗品費となるか、判断がむずかしいところです。請求書や見積書を基に1台(1組)あたりの金額を確認しましょう。

法人の経理規程の第47条前後に、固定資産について規定がされています。

モデル経理規程(経営協)

(固定資産の範囲)


第47条 この規程において、固定資産とは取得日後1年を超えて使用又は保有する有形固定資産及び無形固定資産(土地、建設仮勘定及び権利を含む。)並びに経常的な取引以外の取引によって発生した貸付金等の債権のうち回収期間が1年を超える債権、特定の目的のために積み立てた積立資産、長期保有を目的とする預貯金及び投資有価証券をいう。

2 省略

3 1年を超えて使用する有形固定資産又は無形固定資産であっても、1個もしくは1組の金額が10万円未満の資産は、第1項の規定にかかわらず、これを固定資産に含めないものとする。

③ リース会計について

リース会計適用の要否

補助対象経費には、ICT機器等の導入について、購入とともにリースでの取引も認められています。

(リースによる取引の場合は、当該年度分までの経費を限度額とされています。)

ICT機器等の導入を購入ではなく、リース契約で行った場合には、リース会計の適用を検討する必要があります。

リース会計の適用の要否は、法人の経理規程にしたがいます。

一般的に、経理規程では、

ファイナンス・リース取引で、

1契約当たりリース料総額が300万円以上で、

かつ、

リース期間が1年を超えるリース契約の取引は

売買取引に準じた会計処理を行うと規定しています。

経理規程にしたがうと、①~③に該当するリース取引では、売買取引に準じた会計処理を行います。

NO.リース会計を適用する範囲
ファイナンス・リース取引
1契約あたりリース料総額300万円以上
リース期間1年を超える

経理規程の49条前後に、リース会計について規定がされています。

法人の経理規程を確認してみましょう。

下は、経営協さんのモデル経理規程になります。

モデル経理規程(経営協)

(リース会計)

第49条 ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととする。また、利息相当額の各期への配分方法は利息法とする。

ただし、リース契約1件あたりのリース料総額が300万円以下又はリース期間が1年以内ファイナンス・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる

2 リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の各期への配分方法は、前項の規定にかかわらず、定額法によることができる。

3 前項に定める、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過リース料の期末残高(賃貸借処理に係る方法に準じて会計処理を行うこととしたもののリース料、第1項又は第2項に定める利息相当額を除く。)が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の法人全体の合計額に占める割合が10%未満である場合とする。

4 オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととする。

売買取引に準じた処理

支払リース料を、支払時に賃貸借処理(賃借料に計上)をせずに、
リースの対象となる機器について、リース料総額と利息相当額を基に固定資産に計上して、リース期間に渡って減価償却を行っていきます。

リース取引の分類

リース取引の分類を参考に記載します。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リース

リース取引には、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類されます。

No.名   称内  容
ファイナンス・リース取引所有権移転ファイナンス・リース取引

所有権移転外ファイナンス・リース取引
オペレーティング・リース取引ファイナンス・リース取引以外のリース取引

ファイナンス・リース取引は、下の①、②のどちらの要件も満たすものになります。

NO.要 件内 容説    明
解約不能中途解約できないリース契約に基づくリース期間の中途において
当該契約を解除することができない
リース取引又はこれに準ずるリース取引
フルペイアウト経済的利益を享受

コストを負担
借手が、
当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)から
もたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、

かつ、
当該リース物件の使用に伴って生じるコストを
実質的に負担することとなるリース取引
「リース取引に関する会計基準の適用指針」を基に作成

ICT導入をリース契約で行う場合の勘定科目

ICT導入にリース契約を用いた場合の科目はこのようになります。

ァイナンス・リース取引ファイナンス・リース取引オペレーティング・リース取引
No.リースの対象 1契約のリース料総額
300万円以下
or
リース期間
1年以内
1契約のリース料総額
300万円超
or
リース期間
1年以内上
金額に関わらず
ハードウェア
スマートフォン、タブレット端末、ネットワーク機器など
賃借料有形リース資産 賃借料
ソフトウェア
介護ソフトなど
賃借料無形リース資産 賃借料
リース会計の適用
(1つの契約のリース料総額が300万円以下のリース取引であっても、法人の任意で、リース会計を適用することができます。)

補助対象経費の勘定科目(まとめ)

まとめとして、補助対象経費の勘定科目については、下のように考えられます。

NO.内  容貸借対照表事業活動計算書資金収支計算書(参考)
1つまたは1組10万円以上の
機器、ソフトウェアの購入
または
リース会計の適用対象となる
リース契約
器具及び備品
ソフトウェア

有形リース資産
無形リース資産
器具及び備品取得支出
ソフトウェア取得支出

ファイナンス・リース債務の返済支出

上記以外の費用

事務費の科目
または事業費の科目

事務費支出の科目
または事業費支出の科目

法人がどのようにICTを導入するかによって、

補助金の対象となる経費には、固定資産に計上されるものと、費用処理されるものが、

混在することになりそうです。

次回は、補助対象経費の勘定科目を前提に、補助金を計上する勘定科目を検討していきます。

ICT導入支援事業補助金の勘定科目については、厚生労働省や所轄庁から会計処理や勘定科目等の通知等が発せれましたら、通知等の指示にしたがってください。

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よかった。ありがとう。読んだ人が幸せでありますように。

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著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史 松岡弘巳

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
スマート介護士 認定経営革新等支援機関

マツオカ会計事務所 代表

地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。


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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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