基本財産(建物)|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と考え方
はじめに
社会福祉法人が保有する資産は、その性質に応じて
基本財産、その他財産、公益事業用財産、収益事業用財産
に区分されます。
このうち 基本財産 は、
法人が社会福祉事業を継続して行うための
存続の基礎となる重要な資産 として位置づけられています。
基本財産(建物)は、
社会福祉施設の用に供される建物を中心に整理される勘定科目です。
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厚生労働省の勘定科目の説明
(基本財産)建物
基本財産に帰属する建物及び建物附属設備をいう。出典
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う
会計処理等に関する運用上の留意事項について」
基本財産 建物
この定義から分かるとおり、
基本財産(建物)には
建物本体だけでなく、建物附属設備も含まれる 点が重要です。
基本財産として整理される建物
社会福祉法人審査基準では、
社会福祉施設の用に供する不動産は、原則として基本財産としなければならない
とされています。
ここでいう社会福祉施設とは、
第1種社会福祉事業を経営する施設 を指します。
そのため、
- 社会福祉施設として使用している建物
- 施設運営に不可欠な建物
については、
原則として 基本財産(建物) に区分されます。
資産区分の中での位置づけ
社会福祉法人の資産区分は、次のとおり整理されます。
- 基本財産
- その他財産
- 公益事業用財産(公益事業を行う場合)
- 収益事業用財産(収益事業を行う場合)
基本財産は、
法人の目的事業を支える 基盤となる資産 であり、
処分や用途変更にあたっては、
定款や所轄庁の承認が必要となる場合があります。
この点が、
その他財産との大きな違いです。
建物に含まれる範囲
社会福祉法人会計における「建物」には、
次のものが含まれます。
- 建物本体
- 建物附属設備
建物附属設備とは、
建物に附帯し、
建物と一体となって機能する設備を指します。
具体的には、
- 冷暖房設備
- 給排水設備
- 電気設備
- 昇降設備
- 厨房設備
- 消防設備
など、
建物から取り外して独立して使用することが想定されない設備が該当します。
建物本体と建物附属設備の区分
会計上は、
建物と建物附属設備をまとめて
「建物」として計上しますが、
管理上は両者を区分して把握することが重要 です。
その理由は、
- 建物本体と建物附属設備では
減価償却の耐用年数が異なる - 将来の修繕・更新計画を立てやすくなる
といった点にあります。
そのため、
固定資産管理台帳では、
- 建物本体
- 建物附属設備
を、それぞれ資産ごとに登録して管理する方法が一般的です。
建物の取得価額の考え方
建物を取得した場合の帳簿価額は、
単に建設工事費や購入代金だけで決まるものではありません。
基本的な考え方は、次のとおりです。
建物の帳簿価額
= 建物の取得に要した直接費用 + 付随費用
付随費用には、例えば次のようなものが含まれます。
- 設計費・監理費
- 建設工事に関連する諸費用
- 建物を使用可能な状態にするまでに要した費用
施設建設工事では、
建物本体工事と建物附属設備工事を
一体として発注することも多いため、
見積書や請求書の内容をもとに、
合理的な基準で按分 して整理します。
管理上の留意点
基本財産(建物)は、
法人運営の基盤となる資産であるため、
- 基本財産としての区分が適切か
- 建物と建物附属設備の整理ができているか
- 固定資産管理台帳と会計帳簿が整合しているか
といった点を、
定期的に確認しておくことが重要です。
まとめ
基本財産(建物)は、
- 社会福祉施設の用に供される重要な資産であること
- 建物本体と建物附属設備を含むこと
- 管理上は両者を分けて把握することが望ましいこと
- 法人存続の基礎となる資産として慎重な管理が求められること
これらを整理して理解しておくことで、
決算、監査、所轄庁対応のいずれの場面でも、
落ち着いて説明しやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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