勘定科目の解説 地域密着型介護料収入 介護報酬収入、介護予防報酬収入 介護負担金収入、介護予防負担金収入 社会福祉法人会計
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説明の内容
管理職になり、初めて社会福祉法人の会計に接することになったお客様へ、 「自分は会計の初心者だ」と思っておられる方々へ、 社会福祉法人会計で用いる勘定科目のイメージを持ってもらうための簡単な説明になります。始めたきっかけはこちら |
厚生労働省の勘定科目の説明 地域密着型介護料収入
(介護報酬収入)介護報酬収入
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の地域密着型介護料で介護報酬収入をいう。
(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、夜間対応型訪問介護費、地域密着型通所介護費、認知症対応型通所介護費、小規模多機能型居宅介護費、認知症対応型共同生活介護費、複合型サービス費(看護小規模多機能型居宅介護費)、地域密着型特定施設入居者生活介護費、地域密着型介
護老人福祉施設入所者生活介護費)
(介護報酬収入)介護予防報酬収入
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の地域密着型介護料で介護予防報酬収入をいう。
(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する介護予防認知症対応型通所介護費、介護予防小規模多機能型居宅介護費、介護予防認知症対応型共同生活介護費)
(利用者負担金収入)介護負担金収入(公費)
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の居宅介護料で介護負担金収入(公費)をいう。
(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、夜間対応型訪問介護費、地域密着型通所介護費、認知症対応型通所介護費、小規模多機能型居宅介護費、認知症対応型共同生活介護費、複合型サービス費(看護小規模多機能型居宅介護費)、地域密着型特定施設入居者生活介護費、地域密着型介
護老人福祉施設入所者生活介護費の利用者負担額のうち、公費分)
(利用者負担金収入)介護負担金収入(一般)
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の居宅介護料で介護負担金収入(一般)をいう。
(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する定期巡回・随時対応型訪問介護看護費、夜間対応型訪問介護費、地域密着型通所介護費、認知症対応型通所介護費、小規模多機能型居宅介護費、認知症対応型共同生活介護費、複合型サービス費(看護小規模多機能型居宅介護費)、地域密着型特定施設入居者生活介護費、地域密着型介
護老人福祉施設入所者生活介護費の利用者負担額のうち、一般分)
(利用者負担金収入)介護予防負担金収入(公費)
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の居宅介護料で介護予防負担金収入(公費)をいう。
(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する介護予防認知症対応型通所介護費、介護予防小規模多機能型居宅介護費、介護予防認知症対応型共同生活介護費の利用者負担額のうち、公費分)
(利用者負担金収入)介護予防負担金収入(一般)
出典「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」
介護保険の居宅介護料で介護予防負担金収益(一般)をいう。(介護保険法の給付等に関する省令・告示に規定する介護予防認知症対応型通所介護費、介護予防小規模多機能型居宅介護費、介護予防認知症対応型共同生活介護費の利用者負担額のうち、一般分)
科目の簡単な説明をしてみましょう

地域密着型介護料収入の介護報酬収入、介護予防報酬収入、介護負担金収入(公)、介護者負担金収入(一)、介護予防負担金収入(公)、介護者負担金収入(一)
介護保険制度に基づく事業の中で、地域密着型サービスの介護給付と本人負担分を計上していきます。利用者さんの住み慣れた地域での生活を支えるためのサービスですね。

収入と収益の違いについて
資金収支計算書と事業活動計算書
まず、収入と収益の違いについて、説明をしていきます。
資金収支計算書では、「収入」と「支出」という表現を使い、
事業活動計算書では、「収益」と「費用」という表現を使っています。
計算書類名 | プラスの科目 | マイナスの科目 |
資金収支計算書 | 収入 | 支出 |
事業活動計算書 | 収益 | 費用 |
計算する対象の違い
資金収支計算書と事業活動計算書では計算の対象が異なるため、「収入」と「収益」のように表現が異なっています。
計算書類名 | 計算の対象 | 計算の考え方 |
資金収支計算書 | (支払)資金 | 法人のお金が 増えたor減った を計算する |
事業活動計算書 | 増減差額 | 法人の純然たる財産が 増えたor減った を計算する |
社会福祉法人の計算書類(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表)の関係を簡単に表すと下のようになります。

ポイント 計算する対象の違い
資金収支計算書は、貸借対照表の緑色の部分、支払資金(流動資産ー流動資産)の1年間の増減を計算します。
事業活動計算書は、貸借対照表の青色の部分、純資産の1年間の増減を計算します。
法人のお金が増えることは、
法人の純然たる財産が増えることと、ほとんど同じと想像することができるように、
資金収支計算書と事業活動計算書では、同じような科目名(○○収入、○○収益)が用いられることが多いです。
(科目名の類似の例)
区 分 | 大区分 | 中区分 | 小区分 |
資金収支計算書 | 介護保険事業収入 | 施設介護料収入 | 介護報酬収入 |
事業活動計算書 | 介護保険事業収益 | 施設介護料収益 | 介護報酬収益 |
一方で、違うものもあります。
一般的に、自分自身の財布の中のお金が増えることは、自分自身の財産もが増えると考えられますが、
借入金のように、財布の中のお金は増えるけれども、
自分自身の財産は増えない(手許のお金は増えるけれども、借入金(負債)も増える)
ということがあるように、
必ずしも、お金の増減と純資産の増減は一致(対応)しないことがあります。
資金収支計算書と事業活動計算書とを見比べると、分かってきますね。
発生主義と現金主義
一般的な「収入」と「収益」の違い
企業会計などで、一般的に用いる
「収入」は、当年度に収入(入金)があったという考えに基づき計上していくため、
現金主義的な考え方となります。
「当年度にお金が入ってきたため、収入を計上した」というとらえ方ですね。
一方で、
「収益」は、当年度に福祉サービスの提供などによって収益を生んだという考えに基づき計上していくため、
発生主義による考え方になります。
「当年度に、福祉サービスを提供したため、収益を計上した」というとらえ方です。
(この場合に、当年度内での入金の有無は関係してきません。)
現金主義とは:会計処理上の概念の一つ。ある取引による損益や費用を、現金の受け渡しがあった時点で計上すること
発生主義とは:会計処理の原則の一つ。現金の受け渡しや預金の増減とは関係なく、取引が発生した時点で、収益や費用を計上すること。
出典「デジタル大辞泉」(小学館より)
資金収支計算書の「収入」
資金収支計算書の「収入」では、
実際にお金が入った時点(現金主義)で計上するのではなく、支払資金が増加した時に計上します。
支払資金は、上記の図にあるように、「流動資産ー流動負債」で計算されることから
社会福祉法人会計では、(流動資産の)事業未収金が計上された時点で支払資金は増加し、
収入が計上されることになります。
このように、資金収支計算書の「収入」は、
現金主義ではなく、福祉サービス等の提供とともに発生主義的に計上されていくことになります。
このため、資金収支計算書と事業活動計算書で、ほぼ同じ科目名の勘定科目では、
(発生主義に基づく)「事業活動計算書」の収益の金額 = (発生主義的な)「資金収支計算書」の収入の金額
と両者が一致することが多くなります。
勘定科目説明の解説
収入科目の解説について
資金収支計算書の収入科目については、中区分の分類を用いながら小区分の科目を解説していきます。
地域密着型介護料収入
今回、解説する勘定科目の体系は下のようになっています。
大区分 | 中区分 | 小区分 |
介護保険事業収入 | 地域密着型介護料収入 | |
(介護報酬収入) | 介護報酬収入 | |
介護予防報酬収入 | ||
(利用者負担金収入) | 介護負担金収入(公費) | |
介護負担金収入(一般) | ||
介護予防負担金収入(公費) | ||
介護負担金収入(一般) |

大区分は、「介護保険事業収入」とあるように、介護保険制度に基づく事業の区分になりますね。

そして今回の中区分は、「地域密着型介護料収入」になります。
介護保険のサービスの中でも、地域密着型サービスに係る収入になります。
要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供されることが適当なサービス類型(=地域密着型サービス)「厚生労働省資料より」
ポイントは、下のイメージです。
① | 収入として計上するのは、介護給付と本人負担分(その他の利用料は、別の科目) |
② | 地域密着型系のサービスのみ計上する |
③ | 地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所サービス分は、こちらに計上する。 |
④ | 地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)での短期やデイサービス分は、別の科目で計上することがある。 |
⑤ | 介護予防に計上されるサービスは、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護の3つ |
⑥ | 本人負担分の科目名は、施設介護料収入と少し違っている(中区分にカッコ書きで科目名が設定されている) |
ポイントの説明
①収入として計上する対象は、介護保険制度における介護給付と本人負担分になります。
②地域密着型のサービスに関する介護給付+本人負担分を計上していきます。
③地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所サービスによる介護給付等は、こちらに計上していきます。
④③の施設内で、入所と短期(ショート)やデイサービスなどを行っている場合には、短期やデイに係る介護給付等は、地域密着型サービスに該当しない場合には「居宅介護報酬収入」に計上することがあるので注意しましょう。
⑤介護予防のサービスについては、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護の3つのサービスについて計上していきます。
⑥本人負担分の科目名が、(中区分)施設介護料収益とは若干違っています。
※施設介護料収入→「利用者負担金収入」 地域密着型介護料収益→「介護負担金収入」
今回の小区分の科目は、異なる中区分でも、同じ科目名が用いられています。
実務では、会計ソフトの入力誤りなどに気をつけましょう。
簡単な説明をもう一度

地域密着型介護料収入の介護報酬収入、介護予防報酬収入、介護負担金収入(公)、介護者負担金収入(一)、介護予防負担金収入(公)、介護者負担金収入(一)
介護保険制度に基づく事業の中で、地域密着型サービスの介護給付と本人負担分を計上していきます。利用者さんの住み慣れた地域での生活を支えるためのサービスですね。
科目の正確な内容は、厚生労働省の勘定科目説明でいつでも確認することができます。科目の要点をイメージできるようにしておきましょう。

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はじめに | 本が選ばれる3つの理由 |
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第1巻 | 資金収支計算書 |
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第4巻 | 経営組織(役員と役員会の役割) |
第5巻 | 随意契約 |
第6巻 | 注記と附属明細書 |
第7巻 | 社会福祉法人会計簿記の特徴 『大切なのは、1行増えること』 |
第8巻 | 管理職のための社会福祉法人会計基準の逐条解説 (令和5年8月8日 出版) |
第9巻 | 利益と増減差額(仮称) |
(第4巻 経営組織は、法人の役員(理事、監事)や評議員について解説しています)
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第2巻 | 事業活動計算書 | 73 | 1925円 |
第3巻 | 貸借対照表 | 81 | 1980円 |
第4巻 | 経営組織(役員と役員会) | 57 | 1760円 |
第5巻 | 随意契約 | 45 | 1650円 |
第6巻 | 注記と附属明細書 | 109 | 1980円 |
第7巻 | 社会福祉法人会計簿記の特徴 『大切なのは、1行増えること』 | 52 | 1870円 |
第8巻 | 管理職のための 社会福祉法人会計基準の逐条解説 | 83 | 1980円 |
第9巻 | 利益と増減差額(仮称) |
(第4巻 経営組織は、法人の理事・監事や評議員について解説しています)
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著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士 スマート介護士 認定経営革新等支援機関
マツオカ会計事務所 代表
地方公務員として11年、地方公営企業の財務部門を中心に在籍した後、
平成14年から社会福祉法人への会計支援業務を行う。会計支援を通じて出会った、社会福祉法人で働く皆さんの人柄に魅かれ、平成18年 社会福祉法人会計専門の会計事務所として開業した。
地方公務員としての経験と公認会計士としての知識を活かして、社会福祉法人の法人運営の支援を行ってきたことにより、独特の実務経験を有する。
