器具及び備品|社会福祉法人会計で押さえておきたい基本と考え方
はじめに
社会福祉法人が保有する有形固定資産は、
その性質や用途に応じて
建物、構築物、機械及び装置、車両運搬具、器具及び備品
などに区分されます。
このうち 器具及び備品 は、
比較的身近で種類が多く、
日常業務の中で取得されることの多い資産を整理するための勘定科目です。
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厚生労働省の勘定科目の説明
器具及び備品
器具及び備品をいう。ただし、取得価額が一定額以上で、
耐用年数が1年以上のものに限る。出典
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う
会計処理等に関する運用上の留意事項について」
取得価額の基準額については、
各法人の経理規程で定めた金額 によって判断します。
多くの社会福祉法人では、
取得価額 10万円以上 を基準としているケースが一般的です。
器具及び備品の基本的な考え方
器具及び備品は、
- それ自体で固有の機能を果たす
- 独立して使用される
- 日常業務や事業運営に直接使用される
といった特徴を持つ資産です。
建物や構築物のように
土地に固着するものではなく、
機械及び装置のように
工程の一部を構成するものでもありません。
機械及び装置との区分
器具及び備品と混同しやすい勘定科目に
機械及び装置 があります。
両者の区分は、次の考え方で整理されます。
- 器具及び備品
- 単体で機能する
- 独立して使用される
- 機械及び装置
- 複数の機器が組み合わさり
- 作業や生産の一連の工程を構成する
設備全体の中での 役割や位置づけ を整理することが、
区分判断のポイントになります。
器具及び備品に該当する資産
社会福祉法人において
器具及び備品として整理される資産には、
次のようなものがあります。
- 利用者用ベッド
- 特殊浴槽
- 厨房機器
- 洗濯機
- AED
- 事務用パソコン
- コピー機
いずれも、
取得価額が経理規程で定める基準額以上で、
耐用年数が1年以上のものが対象となります。
取得価額の考え方
器具及び備品の帳簿価額は、
次の考え方で整理します。
器具及び備品の帳簿価額
= 取得に要した直接費用 + 付随費用
付随費用には、
- 設置費用
- 初期設定に要した費用
- 使用可能な状態にするために必要な支出
などが含まれます。
減価償却と管理
器具及び備品は、
取得件数が多く、
法人内に分散して使用されることが多い資産です。
そのため、
- 固定資産管理台帳への正確な登録
- 資産の所在・使用状況の把握
- 減価償却が終了した資産の管理
が重要になります。
耐用年数が経過し、
帳簿上は備忘価額のみが残っている資産であっても、
現に使用している場合には、
資産の現存確認と管理 を継続する必要があります。
除却の考え方
使用していない器具及び備品や、
実質的に機能していない資産については、
会計上の 除却処理 を検討します。
年度末など、
定期的に資産台帳と現物を照合し、
- 現存しているか
- 使用されているか
を確認したうえで、
必要に応じて適切な会計処理を行います。
まとめ
器具及び備品は、
- 独立して使用される資産であること
- 経理規程で定めた取得価額基準を満たすものが対象となること
- 機械及び装置とは「工程への関与」で区分すること
- 種類が多いため、継続的な管理が重要であること
これらを整理して理解しておくことで、
決算や監査の場面でも、
固定資産の説明を落ち着いて行いやすくなります。
記事の執筆者のご紹介
著者情報 この記事を書いた人
松岡 洋史
Matsuoka Hiroshi
公認会計士・税理士
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員
マツオカ会計事務所 代表 松岡 弘巳
地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

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