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理事長・業務執行理事の選任手続き②|選任理事会の注意点と招集手続きの省略

はじめに

社会福祉法人では、理事・監事の改選に合わせて、
理事長および業務執行理事を選任するための理事会(選任理事会)を適切に開催できているかが、指導監査で必ず確認されます。

特に、

  • 評議員会と同じ日に理事会を開催する場合
  • 新理事・新監事がその日に就任する場合
    には、「招集手続き(招集通知)」をどう扱うかが実務上のポイントになります。

本記事では、選任理事会における注意点、特に招集手続きの省略について、実務で押さえるべき点を解説します。


本記事は、社会福祉法人会計を専門とする公認会計士・税理士が、法令や厚生労働省の通知に沿って、実務で起こりやすい論点を解説しています。

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適正な選任手続きを記録するための書類

理事長および業務執行理事を適切に選任したことを示す書類は、次のとおりです。

区分内容
理事会の議事録

特に選任理事会の議事録は、指導監査の重点確認項目です。内容が正確かどうか、必ず確認しておきましょう。


選任理事会までの流れ(任期満了の場合)

任期満了による選任手続きの一般的な流れは次のとおりです。

  1. 理事会の開催
     評議員会の開催決議、理事候補・監事候補の選任
  2. 評議員会の開催
     理事・監事の選任
  3. 評議員会の終結
     旧役員の任期終了/新役員の任期開始
  4. 新理事・新監事の就任(開催前に就任承諾書の提出済みが望ましい)
     この時点で就任が開始
  5. 選任理事会の開催
     理事長・業務執行理事の選任

このが本記事のテーマです。


理事・監事の任期(法令)

(役員の任期)社会福祉法 第45条
任期は選任後2年以内に終了する会計年度の定時評議員会の終結時まで。

多くの法人で「評議員会の終結=任期の開始・終了のタイミング」になります。


選任理事会の開催日について

選任理事会(理事長・業務執行理事の選任)は、
評議員会の当日、評議員会終了後に開催するケースが一般的です。


理事会の招集通知はどう考える?

ここが実務で混乱しがちな点です。

● 招集手続きを通常どおり行うと矛盾が生じる

評議員会と理事会を「同日開催」する場合、

  • 新理事は評議員会が終わってはじめて就任
  • 就任前の人物に招集通知は出せない

つまり、1週間前に招集通知を出そうとすると「旧理事に通知を出す」ことになり、不適切。

● したがって同日開催の場合は「招集手続きの省略」が必要


招集手続きの省略とその要件

● 要件:全理事・全監事の同意

理事会の招集を省略する場合は、全ての理事・監事の同意が必要です。

● 同意の確認タイミング

同意は、

  • 評議員会の終了とともに新理事・新監事の任期が開始し
  • 就任承諾書を提出済みの状況で同意を得る必要があります。

● 同意書の取り扱い

実務では、次のような運用が一般的です。

  • 同意書の日付:評議員会当日(=任期開始日)
  • 全ての新理事・新監事から同意書を取得
  • 理事会議事録に「招集手続きの省略」について明記

(※厚生労働省「社会福祉法人制度改革Q&A」に基づく運用。不明なところは所轄庁へ確認を。)


【参考】厚労省「社会福祉法人制度改革Q&A」と根拠条文

問13:選任理事会は評議員会と同日に開催できるか?
→ 「招集手続きの省略」により同日開催は可能

問17:新役員の就任日は?
→ 選任+就任承諾があった日(承諾書は当日受領が望ましい)

社会福祉法人制度改革Q&Aの抜粋(厚生労働省)

問13 平成29年度の新理事による理事会の開催(理事長の選定等)について、新評議員による定時評議員会(決算、新役員等)と同日に開催しなくてもよいのか。
(答)
1.評議員会で新理事が選任された後、新理事による理事会を開催し、速やかに新たな理事長を選定することが必要である。
2.なお、理事会の招集手続きの省略等により同日開催することも可能であり、同日開催としない場合にも、速やかに理事会において理事長選定を行うことが必要である。

問17 評議員、理事、監事の就任日はいつになるのか。
(答)
1.任期の始期は選任された日であるが、就任日については、選任及び本人による就任の承諾があった日である。
2.なお、就任承諾書は事前あるいは選任された日当日に受け取ることが望ましい。

社会福祉法の理事・監事の任期の定め

(役員の任期)
第四十五条役員の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。

出典:社会福祉法より

記事の執筆者のご紹介

著者情報 この記事を書いた人

松岡 洋史

Matsuoka Hiroshi

公認会計士・税理士 
社会福祉法人理事(在任中)
スマート介護士 認定経営革新等支援機関
元地方公務員

マツオカ会計事務所 代表  松岡 弘巳

地方公務員として11年の行政事務経験
社会福祉法人会計専門の公認会計士・税理士として20年の実務経験を有する。
専門分野:社会福祉法人会計・指導監査対応、企業主導型保育事業の会計支援・専門的財務監査対応、介護、障がい福祉、保育の各制度に精通。
都道府県・政令指定都市主催の研修講師多数。

社会福祉法人会計・監査、企業主導型保育事業の専門的財務監査を専門にする公認会計士・税理士 松岡洋史の顔写真。元地方公務員(京都市・上級事務職)として行政事務経験を11年有する

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(筆者:松岡洋史 公認会計士・税理士 専門分野:社会福祉法人会計

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